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東京 その4

さて、今日はもうこんな時間だから、山手通りも空いているだろう。

音羽通りを通って帰ろうかと思ったが、山手通りに向かった。


もう時間も3時半近くである、山手通りは予想通り空いていて、空車のタクシーがビュンビュンスピードを上げて走っている。そこに大型トラックも混じっているがこちらもスピードが速い。


こんな所で事故でも起こしたら、最悪だから、僕は逆にスピードを落としゆっくり走った。

相変わらず、山手通りは道路工事がいたる所でやっており、路面がデコボコの箇所が多い。


このきようだと、僕の住む目黒の碑文谷まで、40分ぐらいで着くだろう。




菅原さんには言わなかったが去年の秋、小中学生の頃からの親友 安藤康弘あんどうやすひろが44歳を超えて結婚するというので、その結婚式に出席する為に大阪に帰ったのである。


約8年ぶりに、少しだけ帰省した僕の顔を見た両親の顔はとても嬉しそうだった。


「アンタが帰って来ると、家がにぎやかになってエエわ」

オカンは本当に嬉しそうにいった。

「そうやなぁ」

オトンもニコニコしていた。


確かに、僕は子供の頃はおしゃべりな子だった、でももう40歳を超えているオッサンである。

そんなに、いっぱい話しもしない。


今思うと、子供達ぼくたちが育ったそんなに広くもない家が、この両親にはとても広く感じ、年老いた夫婦には日常会話もそんなにある訳でもない。

末っ子の僕の少しの会話でもとても賑やかに感じたのであろう。


ただ、少し太ったオカンが、少々痩せているのが気になった。


「おかぁーちゃん、ちょっと痩せたんちゃうん?」


「前に会った時、アンタに太りすぎちゃうか?って言うてたから、これ飲んでんねん」

オカンはヘルシア緑茶を嬉しそうに見せた。


「へぇー これ結構、利くんやなぁー」

僕が言うと、オカンは照れた様に笑った。


その後、久しぶりにオカンの手料理を食べ、安藤の結婚式に行った。





そんな事を思い出しながら、山手通りを南下して国道246を超えて、2つ目の信号を右折した。

思ったより早く家に着いた。


この家はまだ、僕の景気が良かった時に購入した、35年ローンだから68歳まで返済しなければならない。

今となっては どうするんだこの先!? という不安だけである。


外観はモダンなレンガ造り風であり、小さい土地に3階建ての家である。

家の真横に駐車場はあり、大きな自動車では停める事のできない狭いスペース・・・

1階は洗面所とお風呂と6畳の洋室 2階は15畳のLDK 3階は6畳2間の洋室で、小さな土地を上手く考えた家である。


玄関を鍵で開け、2階のLDKに上がると間接照明を一番小さく絞った薄明かりの中で、テレビをつけたまま、ソファーで淳ちゃん(ウチの奥さん)が寝ている、別に僕を待っていた訳ではなく、こうしないと精神病の彼女は眠れないのだ。


低いテーブルの横に座り、タバコに火を点けた。


そこにフェレットの アシュリ が膝元までやって来てお帰りの挨拶をしてくれる、僕たち夫婦には子供がいないので、このアシュリが子供のような感じになってる。

ウチのフェレット歴は結構長く、この子で3代目でフェレットの癖や育て方は十分熟知してるのだ。


アシュリという名前は、人の何倍ものスピードで歳を取る難病と戦う少女をテレビのニュース番組を見た淳ちゃんが感動して、その少女の名前をそのままこの子の名前にしたのである。


フェレットをゲージで飼う人が多いのだが、ウチでは放し飼いで、部屋の隅に糞などされている時がある、一応トイレの場所は仕付けてのだが、頭が悪いのか気分屋なのか、たまに他の場所で糞をたれる・・・


でもこの子はもう自分では好きな所に行けない身体になっていた、インスリノーマという病気にかかっていて、つまりはフェレットのすい臓ガンである。


人間と同じで、すい臓までガンに侵されるともう完治は望めない、できるのは寿命を延ばす方法だけなのだが、フェレットの場合、この病気は異常に糖分を消費するらしく糖分の薬を摂取すのだが、その分脂肪がお腹まわりに溜まってしまい心臓に負担をかける、いかに糖分摂取と心臓の負担のバランスをとるかが、寿命を延ばすカギなのである。


フェレットの寿命は6歳ぐらいだがアシュリはもう6歳を超えている、若い頃の様にスリムではなく、病気の治療の為、薬を飲み今はお腹が横に出っぱり後ろ足もろくに地面に着かない感じでズリズリとはう様に前足だけで移動している。


僕はアシュリを抱き上げ2,3回 頭をで、ネグラである小さなテントにそっと置いた。

アシュリはゆっくと目を閉じた。


1代目のフェレットも2代目のフェレットもこの病気で亡くしているのだ・・・

小さな命の終演がもうすぐ来ているのを実感する。


今日はもう遅い、もう寝よう  明日は休みだ。

と言うより、暇なのだ・・・


淳ちゃんの寝ているソファーの近くにマットレスを引き毛布に包まって僕は眠りについた、こうしないと、朝起きた時 淳ちゃんが不安になるのでここ10年ほどはこんな感じが我が家の就寝スタイルになっている。


3階の6畳には、ちゃんとベットルームがあるのだが・・・








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