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第4回なろうラジオ大賞投稿作品

だから私はえんぴつを使う

作者: 衣谷強
掲載日:2022/12/03

『なろうラジオ大賞4』参加作品です。

キーワードは『えんぴつ』。

少し切ない恋物語をお楽しみください。

 私は絵を描くのが好きだ。

 子どもの頃からよく絵を描いていた。

 親や友達から「うまいね」と褒められるのが嬉しかった。

 歳を重ねるにつれて、色々な画材に触れていった。

 でも君に描く絵はえんぴつと決めている。


「何でえんぴつなんだ?」

「柔らかいタッチが好きだから」


 嘘だ。

 下書きのような手軽さ。

 消しゴムで擦れば消えてしまう儚さ。

 その分納得いくまで書き直せる特性。

 そしてコピーでは写らない唯一無二。

 重荷になりたくないけど特別でいたい。

 そんな誰にも言えない私のこだわり。




 それなのに……。




「ごめん!」

「何いきなり!? 土下座やめて!」


 家に来るなり土下座謝罪をされて私は困惑する。

 何を謝っているんだろう?

 昨日描いた絵を無くしたとか汚したとか……? 


「描いてもらった絵、写真撮る前にラミネートしちゃって、本当にごめん!」

「はぁ!? 何してるの!?」


 私の願う儚さと切なさと心細さが!


「ごめん……! 俺は何て愚かなんだ……!」 

「……い、今から撮ればいいじゃない! 何に絶望してるのよ!」


 ……本当は画像に残してほしくはないけど、あまりの落ち込みように私は声をかける。

 でも君は首を横に振った。何で?


「ラミネートのテカリのない状態の画像を残しておくべきだったのに……!」

「知らないよそんなこだわり!」

「あまりに絵が儚げで綺麗で、いつものルーティンを崩してしまった……!」

「は、儚げ……、ってルーティン!? 今までに描いた絵も写真に撮ったりラミネート加工したりしてるって事!?」


 何してるの!?

 それじゃあ唯一無二も儚さも何もないじゃない!


「だってお前に描いてもらった絵をいつまでも保存しておきたいし、いつでも眺めていたいから……」

「ぅ」

「えんぴつの線って、手で擦っただけで掠れちゃうじゃんか。お前が折角描いてくれた絵がそんな風になるのに耐えられなくて……」

「……」


 えんぴつの線のように、淡い想いだと思っていた。

 えんぴつの絵のように、いずれ消えると思っていた。

 でも君はそれを、少しでも長く留めようとしてくれていたんだね。


「……じゃあ今度は、ペンとか使ってちゃんとした絵を描いてあげるから」

「本当!? やった!」

「でも君にも協力してもらうからね」

「え? まぁできる事なら何でもするけど……」


 鏡の前に並んで二人の絵を描きたいと言ったら、どんな顔をするだろう。

 紙の下に硬貨を置いて、えんぴつで擦る石刷りのように浮かび上がらされたこの気持ち。

 もう消したりはできないね。

読了ありがとうございます。


どこが切ないんだ、ですって?

また甘々じゃないか、ですって?

ちゃんと前書きに『少し切ない』と書いたじゃないですか。

残りの大半は甘々です。

何もおかしくはありません。

『僕は悪くない』


次回のキーワードは『ランドセル』の予定です。

よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] コピーでは上手く再現出来ない特性を生かした「えんぴつでしか成立しない」お話でした。 私はラミネートとかの絵画用語を全く知らない門外漢ですが、それでもえんぴつにこだわる理由がちゃんと伝わって…
[一言] 何処かで聴いたような刹那さと儚さと心強さと〜♪
[一言] 淡くてすぐ消えてしまう存在。 だからこそ、大切にしていきたいと思う。 そんな気持になりました(*´∀`)
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