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第98話 天界の一端


「あぁいいぜ! その代わり、もし解けなかったら……分かってるよなぁ?」


「……」


 ザルマの言わんとすることを理解し、喜びを悟らせぬよう無表情で頷く。

 そして、早速呪縛を解くために魔法を唱えようと口を開いた時、後方から魔獣の唸り声が聞こえてきた。



「ガルルルルッ!!」


(!? なんだ!?)


 懸念を抱き振り返ると、身体中から血を滴らせながらギンがアヌビシオを威嚇しているのが目に映る。

 どうやら互いに動きを止めて牽制し合っているようで、アヌビシオもギンに向けて無言のまま殺気を放っている様子。

 しかし、2匹の状態は歴然としており、ダメージと疲弊が目に見えるギンに対し、アヌビシオにはダメージは疎か疲弊の色すら見えない。


(このままじゃ長くは保ちそうにないな……早く解呪して助けに行かないと……!)


 素早く振り返り、地面に両手を突いてスキルを発動。


「神理スキル、天界領域てんかいりょういき!」


 俺を中心に周囲を覆うように半球状の別空間が展開される。

 それは翡翠色の映える草原に雲一つない瑠璃色の空、そして黄金色に輝く太陽からは薄虹色の陽光が差すというなんとも色鮮やかな空間であった。


「ななっ、なんだこれは!?」


 初めてみる光景にザルマは驚いているが、実を言うと俺も驚いている。顔にこそ出してはいないが物凄く驚いているのだ。


(本当になんだこれは!? そもそも天界領域ってことは神様がいる所と同じ領域を創り出してるってことだよな!? なら神様がいる所には、こんなに綺麗な場所があるってことなのか!?)


 平然を装いながらも心の中は激しく波立っていおり、それは天界の一端に触れたからで相違ない。

 つまり、それほどまでに色鮮やかで美しい光景であったのだ。


(……て、見惚れてる場合じゃない! 早く解呪してギンを助けに行かなければ!)


 天界の光景に見惚れている最中、不意にやるべきことを思い出し、早急に天界領域へ向けて魔法を唱えた。


「全ての呪縛を解け! 禊祓!」


 天界領域内にある擬似太陽へ魔法を掛けた直後、陽光と共に魔法が9人を照らす。

 すると9人の冒険者達は一斉に虹色の光に包まれ、体内から黒い靄を排出して呪縛から解放された。


「ううっ、動く! 動くぞ身体が! しかも、さっきまでの恐怖が嘘のように消えている!」


「あぁ……嬉しい、まだ生きられるのね……あの恐怖を感じたまま死ぬのかと思ってたから、本当に嬉しい……」


「あー、あー、よかった! 喋れるぞ! 喋れなくなった時はどうなることかと思ったけど、また喋れるようになって感謝しかない!」


「ありがとう……ありがとう……あなたのおかげで娘を残して死なずに済みました……本当に、本当にありがとう……」


「怖かった……でも生きてる……でも凄く怖かった……うぅ……」


 嬉し泣きをする者、感謝の念を抱き泣く者、中には恐慌時を思い出して泣く者までいる。

 だが誰一人として戦意を失ってはいない。それは守るべきものがあるからだ。瞳の奥にある小さな光がそれを物語っている。

 その姿を見て安心すると、次はギンを助けに行くために再度振り返った。するとその時……



「まっ、待て!」


 振り返って間もなくあの男に呼び止められた俺は、思わず「はぁ……」とため息を吐いた……


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