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第8話 一流冒険者の証


「うわっ、ドキドキしてきた!」


 俺は今、西門の目の前に立っている。

 Fランクの依頼では西門を通過することは先ずあり得ない。

 せめてBランクにならなければ、西へ向かうような依頼は無いからである。

 西門通過は謂わば、一流冒険者の証なのだ。

 まさか、これからその西門を通過しようとしているなんて……


(あぁ、心臓の鼓動がうるさい……)


 胸が高鳴るなか、西門へ足を踏み入れることに。


「……」


 門兵がこちらを見ている。

 それに気づいたので門兵に軽く会釈をして西門を通過。

 てっきり何か言われるかと思ったが、そのようなことは一切無かった。


「ぷはぁ〜、緊張したぁ〜」


 緊張の糸がプツリと切れ、一気に気が抜けた。

 でも「大変なのはこれからだ! しっかりしろ、俺!」と両頬を叩いて気を引き締め直し、先へ進むために足を動かす。




「……ん? 魔物か?」


 暫く進むと、およそ500m先に魔物がいるのを目視した。

 この異常な視力もきっとニカナの影響だろう。


「よく見ると姿が……」


 凝視することで魔物の特定に至る。

 これもニカナによる影響なのか? 人が持つ視力を完全に超えているような気もするが、冒険者である俺には有難い能力だ。



「あれは確か……グラスウルフ……」


 目視した魔物は「グラスウルフ」という脅威ランクEの狼系魔獣であった。

 頭のてっぺんに双葉の草がピョコンと生えてはいるが、それ以外はごく普通の狼と同様の見た目をしている魔狼の一種である。


「そういえば、Eランクの依頼で討伐対象になってたよな?」


 いつランクが上がっても良いよう、色々と調査をしてあるのだ。

 最早、歩く大辞典と言っても過言では無いだろう。


「……おっ! コレを使おう!」


 俺は歩きながら近くに落ちている小石を拾い、そのまま直進した。



 グラスウルフとの距離が縮まっていく。

 400、300、200、100、そして50mまで近づくと、グラスウルフはこちらに気づいたらしく、唸りながら警戒を始める。



「当たれっ!」


 警戒されていても構うことなく、グラスウルフへ向けて小石を投擲する。



「ギャウンッ!?」


 まるでレーザービームのように小石は飛び、そのままグラスウルフの眉間を貫通。

 グラスウルフはその場に倒れ、ピクピクと痙攣し、そしてすぐに動かなくなった。



「……」


 俺に達成感は無かった。

 本来ならFランク冒険者が脅威ランクEの魔物を倒せば燥ぎたくもなるのだが、俺にはその感情が一切湧かなかったのだ。

 何故なら、この程度のことならできて当たり前だと思っていたからである。

 それは間違いなく、ニカナの影響だろう。


 以前の俺だったら泣くほど嬉しがると思うが、今は違う。

 これからもっと強大な魔物達を相手にしなければならないのだ。

 しかも、それは近々に起こると何故か分かる。


(なんとなくだけど、ニカナもそう感じている気がする……)



 考え事は済んだが、今度は別件で頭を抱え込む。


「うーん、このグラスウルフをどうするか……」


 そのままにしておくのは勿体無いと、頭を悩ませる俺であった……


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