表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

75/130

第75話 アウロとフラム


「なんだ……? ま、まさか、アウロ君の身に何か……!?」


 周囲の困惑する表情を目にして、そんな嫌な考えが脳裏をよぎると、背後からあの女魔導士が俺の元へ。


「!? な、なんでココに!?」


「す、すみません……居ても立っても居られなくて……あ、あの、アイツは、アウロは大丈夫でしょうか……?」


「……まだ、分からないな……」


「そ、そうですか……」


 この女魔導士は俺が上げた声を聞いていたらしく、俺の隣で共にアウロを待ちたい言い出したので、一緒にアウロが来るのを待つことに。



「そういえば、君の名前はなんて言うんだい? あっ、俺の名前はキュロスって言うんだけど、君って呼ぶのもなんか素気ないし、もし良ければ教えてもらえるかな?」


「は、はい、私の名前はフラムです……えっと、キュロスさん?」


「アウロ君にフラムさんか……2人とも良い名前だね」


「い、いえ、そんな……ありがとうございます。アイツもそれを聞いたら絶対に喜ぶと思います……」


「そう……」


「はい……」


 互いにアウロが気掛かりで無言になると、1人の大柄な男冒険者がゆっくりと近づいてくることに気づき、その男の背中には毛布に包まれてぐったりとしている若者の姿が。



「あ、アウロ! ねぇ、大丈夫!? 私よ! フラムよ! 折角会いに来たんだから起きてよ! ねぇ! ねぇってば!」


 アウロの姿を見るなり駆け寄っては声を掛けるフラム。

 すると、アウロは瞼を開き草臥れた表情でフラムへ返答し、その姿を見たフラムと俺は一先ず安堵の表情を。


「よぅ、こんなところまでご苦労さん。つーか、何しに来たんだよ。そっちも大変なんだろ?」


「こっちはもう大丈夫! キュロスさんが全部倒してくれたから! って、それよりアンタさぁ、立てなくなるほど頑張ったの? 人におぶってもらうなんてカッコ悪いよ? ほらっ、早く降りなよ!」


「……」


「ん? どうしたの? 急に黙っちゃって……?」


 無事であることに安堵したのも束の間、何やらアウロの……いや、アウロを含めた周囲にいる人達全員の様子がおかしい。

 先程の2人の会話には特におかしなところは無かったハズ。

 だが、誰の表情を見ても暗く気不味そうにしており、中には憐みの表情を見せる人もチラホラと。

 一体、アウロに何があったのだろうか……? 

 嫌な予感を感じつつもそう考えていると、突然アウロをおぶっている男が口を開く。


「と、突然すまん……俺はCランカーのガイというのだが、彼をおぶっているのには理由があるんだ……」


「り、理由……ですか……? も、もしかして、アウロの身体に何か異変が!?」


「あ、あぁ……実は戦闘中にーー」



 ガイの口からその理由を語られた直後、フラムはその場にへたり込み、両手で顔を覆いながら泣き出した。


「そ、そんな……なんでアウロが……うぅぅ……」


「フラムさん……」


 2人はまだ15歳と若く、きっと夢見て冒険者となったに違いない。

 しかし今、その夢が完全に絶たれたと知って未来に絶望しているのであろう。

 そしてそれを理解した周囲の人達もまた、なす術がなく、心を痛めて憐れむことしかできずにいる。


「なんでアウロが、か……」


 へたり込んで涙するフラムを見つめながら、ただただ悲しむことしかできずにいた……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ