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第72話 植え付けられたもの


「悪いな、これ以上は行かせられないんだ……」


 そう謝ってすぐに、目にも止まらぬ速さで3匹のグラスウルフ達を全て掌底で吹き飛ばして倒す。

 威力としては1割にも満たない力加減で優しく当てたのだが、それでも打撃箇所がめり込んでしまい、もう少しで破裂するところであった。


「あっぶなぁ……やっぱり魔法で倒した方がいいのか……? でも、魔力は温存しておきたいしなぁ……って、今はそんなこと言ってる場合じゃなかった! 早く支援に向かわないと!」


 早く支援に行かねばと思い、早急に駆け出そうとしたその時、完全に若者達の布陣は崩され、魔物の群れが一斉にこちらへ向かい出す。

 およそ60匹の魔物の群れは脇目も振らずに駆けており、進路を遮る俺のことは眼中にないようで速度を落とす気配もしない。


「西門の時もそうだけど、あんまり無視されると傷つくな……まぁ、見下されたり蔑まれるよりかは全然マシだけど……ゔっ!? 思い出したら寒気と震えが……」


 今までの仕打ちを思い出してしまい、急に寒気と震えが身体を蝕む。

 既に克服したと思っていたがそんなことは全くなく、一度植え付けられた恐怖心はそう簡単には消えてくれず「ま、まさか、思い出す度に苦しめられるのか……?」そう弱音を吐く。しかし……



「それでも! トサックさんから引き継いだ想いを蔑ろにはできない!」


 そう強く思い改めては目を見開き、再び魔物の群れを見据えながら弱い心を発散するように魔法を唱えた。


「弱い心ごと飛んでいけぇぇぇーっ!! 氷牙ひょうが!」


 魔法を唱えた直後にスッと気持ちが晴れて、それと同時に鋭利な氷の棘が俺の周囲に次々と出現し、その氷の棘が100個に達すると魔物の群れへ向けて即座に放たれた。

 そして数多の氷牙は勢い良く魔物達に刺さっていき、魔物達は断末魔を上げる間もなく倒れていく。


「今のは……気持ちが、晴れた……? もしかして……ありがとう、ニカナ……」


 衣服の上からニカナがあるだろう場所に右手を置いて感謝の念を送っていると、前方から20人ほどの冒険者達がこちらへ向かってくることに気づく。

 だがこちらとの距離はまだあるようなので、俺からも向かい出した途端、不意に考え事を。


「そういえば、何故若者達だけで布陣を組んでいたんだ? とてもDランカー以上がいるとは思えないし、もしいても経験不足に決まってる……これはムツコさんの考えたものじゃ無さそうだけど、そうなるとこんな無謀な布陣を一体誰が……?」


 幾ら劣勢に立たされていたとしても流石にこれはないなと呆れている最中、突如左方から1匹のステルスリカオンが牙を剥いて奇襲を仕掛けくる。

 何やら「迷彩」のスキルで身を隠して誰にも気づかれずにここまで接近してきたようで、そのまま俺の首を目掛けて飛び跳ねるが、襲う際の殺気に即気づいた俺は反射的に左手を振り裏拳を繰り出していた。


「グシャッ! ボンッ!」


 潰れる音がした直後、ステルスリカオンの顔は破裂して、辺りに血飛沫と中身を撒き散らしながら力無く倒れることに。


「あぁ、まただ……しかも、今度は時間差無しで破裂か……うぅ……」


 そう呟くと、前回同様に気味悪さと罪悪感で胸を痛めては再び気落ちするのであった……


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