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第66話 存在しない魔法


「神聖魔法……試してみるか……」


 思案して見えた、たった1つの小さな光明とは神聖魔法のことであり、ほんの一部の聖職者にのみ唱えることが許されている特別な魔法なのだ。

 その特別な魔法を今の俺に唱えられるか不明ないうえに、そもそも効くのかも怪しいところではあるが、それでも試す価値アリと判断して、朧げだが以前にある人物が見せてくれた神聖魔法を試してみることに。


「頼む、効いてくれ! ホーリーライト!」


 天に向けた左手から青白色の包み込むような優しい閃光が発せられると、辺りは祝福を得たように輝き始め、その輝きがアヌビシオにも届くと急に苦しみ出して全身に纏う漆黒の何かが霧散していく。


「上手くいった……のか? あれがアイツの本当の姿……さっきと全く違う……」


 漆黒の何かが霧散したあとの姿はグラスウルフと同等の大きさにまで縮んでおり、毛色も黝いので黒色系ではあるが漆黒と言えるほどではなく、ヘルハウンドと大差無い見た目となっていた。

 そして、その姿に憐れみを感じながらもアヌビシオという大きな脅威を取り除くため、終となる魔法を唱え出す。


「アヌビシオよ、天に還ってくれ……聖炎せいえん!」


 青白色の柔らかな火炎を掌に発生させ、その火炎をアヌビシオへ向けてそっと優しく放つと、苦しむアヌビシオは抵抗もできずに聖炎を浴びた。

 この魔法は神聖魔法と火属性魔法の複合となっており、既存魔法には存在しない魔法である。

 先程、ホーリーライトを唱えたあとに幾つかの神聖魔法のイメージが瞬時に頭の中に流れ込み、そのうちの1つがこの聖炎なのだ。

 もしこの魔法を聖職者が目にしたら、きっと「ひっ、ひぇ〜っ! アババババッ!」と言って腰を抜かすに違いない。

 そのことを想像したらアヌビシオに対する憐れむ気持ちが少しだけ軽くなり、そのまま聖炎に焼かれるアヌビシオの姿を見つめながら独り言を。



「このアヌビシオは以前に調べた情報と違う……あんな漆黒の何かを纏うなんて情報には無かったし、そもそも魔物は赤色系統の瞳しか持たないハズ……もしかして、突然変異か? それとも、別の何かが……?」


 これ以上は恐ろしくなってきたのでやめた。

 すると、アヌビシオを覆っていた青白色の炎は消えて、そこにはガリガリに窶れた奴の亡骸が。

 恐らくは聖炎により浄化されたためであろうが、本来ならこんな悲惨な姿にはなるはずもなく、やはりこのアヌビシオは何かがおかしい。

 だが、今あれこれ考えても答えは出ないので、取り敢えずはアヌビシオを黒箱へ収納して邪魔の入らない環境でモモを回復させてあげなければ。それに、あの2人のところにも……



「まだやることは多いんだ! しっかりしろ、俺!」


 両頬を平手打ちして気合いを入れ直し、早速アヌビシオを黒箱へ収納してからモモの元へ向かうと、スレッグは慌てた様子で右往左往と動き続けていた。

 何事かと思いスレッグに声を掛けると、抱いていたモモを見せてくるので疑問に思いながらもモモの方に目を向けると、なんとモモの全身から桃色の光が放たれているではないか。


「な、何が起きているんだ……モモは、モモは大丈夫なのか……!?」


 そう呟いたあと、スレッグと顔を合わせながら2人で唖然とするのであった……


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