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第42話 架空の依頼


「ぎ、ギルマス、一体何が……?」


 不安感漂うなか、その雰囲気に耐えきれず声を掛けると、シャカからまさかの返答が。


「はぁ……超言いづらいんだが、そんな依頼は来ていないんだよ……」


「えっ!? ……いや、なんとなくそんな気がしてました……」


「……すまんな。俺様が目を光らせておけばこんな事にはならなかったんだが……」


「いえ、そんなことは……」


 暗い雰囲気になりながらも詳細を聞き、事の全貌が見えた。

 それは、エリザと他3人のギルド職員達が企てた悪意ある悪戯であり、元から依頼主など存在しない架空の依頼であるということ。

 恐らくは俺の不様な姿を見て楽しむつもりだったのだろうが、残念ながらそうはならず現在に至るというわけだ。



「本当にすまんな……ん? そういえば、あの依頼がまだ……」


「??」


 何かを思い出したシャカは急に立ち上がり、卓上にある書類の山を漁り始めた。

 すると無作為に積み重なる書類が少しずつ床に落ちて行き、その落ちた書類を俺はせっせと拾い元の場所へと戻す。


「……これじゃない。これは……違うな。ならこれは……おっ、あった! これだ、これっ!」


 書類の山を漁り始めてから5分ほど経つと、シャカは1枚の依頼書を手に取って喜び出す。


「ほれっ、これを超見てみろ! これなら超無駄にならんで済むぞ!」


 シャカが見せてきた書類はなんと、別件だが浄化草採取依頼の依頼書であった。

 しかもその依頼を受注し、架空依頼分の代わりとしてもらえることに。



「……でも、これで良いんですかね……?」


「はんっ、構いやしねぇよ。あいつらが先に仕掛けてきたんだからな……だがもし、いちゃもん付けて来るようなら超ブッ飛ばしてやる!」


「は、はは……そ、そうですね……」


 こうして、本来の依頼と異なる結果にはなったが、別件の依頼で相殺できるようなので良しとした。


「あとは下へ行って依頼報告してこいや」


「は、はい!」


 シャカに促され、一階の受付へ行こうと立ち上がり出した瞬間、左手首をエリザに掴まれて思わず動きを止める。

 そして、咄嗟にエリザの方へ振り向くと……



「お、お願い……待って……」


 俺を呼び止めるエリザの顔は、瞳を潤ませ縋る様な表情を浮かべており、その表情は儚くも魅力的に感じた。


「え、エリザさん……?」


「ち、違うの! これは……その……」


 恐らく咄嗟に出た行動だったのだろう、エリザ自身も理解できていないように見える。

 ここは俺が一肌脱ぐしかないと考え、適当に口を開く。


「も、もしかして、何か用があるのでは……?」


「えっ!? ……え、えぇ、そうよ? 私が受付をしてあげようと思って?」


「!? あ、ありがとうございます! それじゃあ、お願いします!」


「……え、えぇ……」


 思わぬ展開になりはしたが、エリザも強がる程度には元気になれたので、これで良かったと一人で納得する俺。


 そして、そのエリザと共に受付場所へ向け歩き始めた……が未だに分からないことがあり、悩みながら歩いて行くのであった……


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