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第37話 黒髪


「そういえばさぁ、極秘任務の件はもう報告しないの?」


「……はっ!? そうだ! すっかり忘れてた!」


 セリーヌからの問い掛けにハッと思い出し、俺は急いでギルドへ駆けて……は行かず、ミカゲの足元で片膝を突き、魔法を唱える準備に入る。


「行く前にやれることをならないとな……」


 俺との勝負時にミカゲは右足を負傷しており、その負傷箇所を治癒するべく魔法を唱えた。


「ハイヒール!」


 喚虎戦でも使用したこの治癒魔法によってミカゲの右足は瞬く間に治癒され、その光景にセリーヌとミカゲは驚き、そしてあることに気づく。


「そういやさぁ、確かお前って魔法使えなかったよな? なのに、なんで今は使えんの?」


「そうなのよねぇ、実は私も気になってたの……」


「……」


 俺は無言のままニカナのことは話さなかった。

 それは物凄く心苦しいことではあるが、たとえセリーヌ達であっても話すわけにはいかない。

 もし話してしまったら、ニカナを奪おうとする輩が間違いなく現れるからである。

 

『……』


 俺の気持ちを察したのか、セリーヌとミカゲは黙って詮索せずにいてくれた。


「2人ともありがとう……それじゃあ、行ってきます!」


 2人の気遣う気持ちを嬉しく思いながらも、振り返ることなくギルドへ向かうことに。



「全く、本当に世話が焼けるんだから……」


 俺の背中を見つめながらセリーヌはそう呟く。


「セリーヌ……ゔっ!?」


 呟いた時のセリーヌはとても愛おしそうな表情をしており、その表情を見たミカゲはズキンと胸を痛め切ない気持ちに。

 そんな出来事があったことを露知らず、そのまま俺はギルドへ向かっていた……




「す、すみません! 改めて報告に来ました!」


 勢い良くギルドの扉を開き、声を上げて報告宣言を。

 すると、少人数の冒険者達と3人のギルド職員達、そしてエリザがギルド内にはおり、その全員が俺を見ながらキョトンとしている様子。

 ギルド職員達はともかく、この場に残っている冒険者達は俺のことを知らないか無関心かのどちらかだろう。

 そう推察していると、ある若い男女2人の冒険者達が俺についての会話を小声で始める。


「なぁ、あいつ誰だ?」


「さぁ? でも、なんか頼り無さそうね」


「ははっ、そう言うなよ、可哀想だろ?」


「ふふっ、そうね」


「……なぁ、それよりあの頭見ろよ、黒髪だぞ? 俺、初めて見たよ」


「!? 馬鹿っ! その話に触れちゃダメってギルド職員の人に言われたでしょ!?」


「!? やべっ! そうだった!」


「もー! しっかりしてよね!」


 男女の会話をうっかり聞いてしまい、その時に初めて自分の髪がとても珍しいことに気づいた。


(そういえば、俺以外の黒髪の人って見たことが無いかも……)


 そう考えながら何気無くエリザの方を見ると、冷や汗を掻きながら動揺する姿が。


(もしかして、エリザさんもさっきの会話を聞いたから動揺を……?)


 根拠は皆無だが何故かそんな気がしてならず、しかもそのことが無性に気掛かりで仕方がない。


(うーん……少し怖いけど、聞いてみるか……)


 そしてそのことを確認するため、エリザの元へ静かに歩み寄るのであった……


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