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第3話 最悪の日(中編)


「……」


 言いようのない違和感と不安感を覚えたまま4人の後に続く。

 本当は疑問を口にしたかったのだが、今口を開けば更に悪く思われるかもしれないと思い言い出せずにいた。

 気不味さからなのか、胸がズキズキと痛み出す。


(それにしても、一体どこに向かって……?)


 左胸を右手で抑えながら、不意にそう思う。

 多々受注する依頼に『ホーンラビットの討伐』というのがあり、その際に利用する狩場を先程過ぎてしまったからだ。

 それに注意深く周囲を見渡すと、魔物と争った形跡や血痕が僅かに見受けられ、まるで露払いを済ませたかのようにも見える。

 これらの疑問も口にしたかったがやはり口を開けず、結局は無言で4人に付いていくことに……




「ココだ、着いたぞ!」


 到着した場所は『仄暗い洞窟』といってEランクから入れるようになる低ランク向けの洞窟で、この洞窟内にはヒカリゴケが少しだけ自生しているのでほんのり明るく、棲処にしている魔物も『ケイヴドッグ』という脅威ランクFの弱い犬系魔獣がいる程度なのだ。

 とはいえ、群れでいることが多い魔獣のためEランクパーティでも苦戦を強いられるだろう。

 なんか、そう考えたら急に緊張してきた……



「よし、入るぞ!」


 なんの躊躇もなく洞窟に入っていく4人。初見の場所にも拘わらず。

 迷うことなく進み続ける4人の後ろ姿を見ているうちに、元々感じていた違和感が徐々に大きくなっていき、極めつけは先頭にいるドナーツが手にしているマッピングノート。

 初見のはずなのに書きながらではなく、既に書いてあるのを見ながら進んでいるのだ。しかも、いつ遭遇するかも分からない魔物への警戒すらせずに。


(もしや、他の冒険者達が前の方にいるのか……?)


 そう考えて無理矢理納得した。考えるだけ無駄だと思ったからだ。



(……ん? 広い場所だ……)


 そうこうするうちに広い空間に到着。

 前方にいる4人は突然立ち止まり、顔を見合わせては皆頷き、ドナーツが口を開く。


「おいっ、お荷物! この先を調べてこい!」


 このパーティには斥候がいないため俺が代わりをすることになっている。なので、調べるのは当然だが何かが引っかかる。

 ただ、その何かが分からずに首を傾げながら先へ進むと、奥の方から多数の足音が響いてきた。



「……!! ケイヴドッグだ!」


 俺が声を上げて間もなく、20匹はいるだろうケイヴドッグ達に俺だけ完全包囲されてしまう。


「まっ、マズい! みんな、手を貸してくれ!」


 叫びながら4人の方を振り向くと、瞳に4人の後ろ姿が映り込む。そう、彼らは一目散に逃げ出していたのだ。


「!? そ、そんな……まさか、俺を囮にして……」


 失意のなか戦闘が始まった。

 ケイヴドッグの見た目はビーグル犬に似ているが爪は硬く鉤爪のような形状で、それは洞窟を掘るのに適している。

 そして斬るよりも削り取る攻撃となるため、受けると肉が抉れてしまう。

 そのことを念頭に置きつつ、無手で四方八方からの猛襲を躱していく。


「よしっ、これならどうにか!」


 失意のなかでも不思議と身体は動き、見事に攻撃を躱し続けていた。しかし……


「しまっーーぐぁぁぁっ!!」」


 死角からの攻撃で右腕を負傷。

 一気に窮地に立たされるのであった……


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