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第25話 無能


「俺は知っているんですよ!? あなたがーー」


 俺が知り得た情報を門兵Aに暴露。


「なっ、なんでそのことを知っているんだ!? いっ、一体どこでその情報を……!?」


 突然俺からの反撃を受けた門兵Aは、動揺を見せたうえに慌て出したので、透かさず追い討ちを掛ける。


「そんなことよりも、誰に金を貰ってこんな下らないことを依頼されたんですか!?」


「うがっ!? そ、そそ、それは……」


 的確な追い討ちを受けた門兵Aは、更に動揺して目も泳ぎ出す始末。

 それを好機と捉えて更に問い詰める……はずが、その時ある人物が姿を現した。

 そのある人物を見た直後、全身が凍るように冷たくなり、同時に両足が震え出す。



「あら? 奇遇ね、こんな所で会うなんて。ふふっ、残念だけど門限はとうに過ぎてるわ。また明日いらっしゃい」


 そのある人物とは第1級ギルド職員であるエリザのことであり、エリザの高慢で高飛車な態度を目にした瞬間に黒幕だと悟り、そして疑問を抱く。

 きっとエリザが根回しをしたに違いない、でも一体何故? その疑問も含めて抗議しようとしたが恐怖から声が出ず、逆にエリザから痛恨の一言を浴びる。


「あなたのような無能は、私達を楽しませるだけに生きていれば良いのよ?」


 思いもよらぬ言葉に動揺させられて震えが強まるが、それでもなけなしの勇気を振り絞り口を開く。


「な、何故……何故、そんな酷い言葉を……?」


「あら? だって事実でしょ? あなたが無能で落ちこぼれのFランク冒険者だということ」


「い、いえ……はい……」


「ふんっ、漸く理解したの? 本当に物分かりが悪いんだから。これだから無能は困るわ」


「……す、すみません……」


「はぁ……情けない男、本当に無能ね」


「……」


『無能』その言葉を連呼されて、怒りよりも惨めさを覚え、そして、心が折れた。

 それは、今までの人生で充分身に染みていたから……



 俺の状態を把握したのか、エリザと門兵Aは高笑いをしながら闇に消え、門兵BとCは無言で持ち場へ戻り、一方の俺は俯き無言のまま西門から立ち去った。


『ニカナでも心の傷は癒せない』その証明が成された瞬間である。




「……」


 結局、心が折れてしまった俺は野宿をすることになり、街の外壁に身を寄せた。

 そのあとは外壁にもたれ掛かりながら座り、特にすることもないのでそのまま寝ることにした……が、寝る前に様々なことを悩み出す。


(何故、俺にあんな姑息な意地悪を? 何故、俺にあんな凍える視線を? 何故、俺にあんな酷い言葉を? 何故……何故、俺ばかりがこんな目に……)



 悩みに悩んだ挙句、声を殺しながら泣いた。

 俺の惨めな姿を目の当たりにしたモモは、心配そうに俺の懐まで来て抱きついてくる。

 その健気な行動に、自然とモモをギュッと抱き締めていた。


「……モモ、そろそろ寝ようか……」


「キィ……」


「おやすみ……」


「……」


 モモを抱き締めてからどれほどの刻が経ったのだろうか。

 既にモモは寝てしまったようで、俺からの言葉に返答はなく、辺りで鳴く虫達の音だけが耳に響いていた。

 そして寝る直前、アイテムポーチから毛布を取り出しながら呟く。


「モモ……ごめんな……」


 そう呟くとモモを抱いたまま、寒空の下で夜を明かすのであった……


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