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前編 騎士の覚悟と魔王の思い


魔王城の玉座の間

そこにだだっ広い空間に玉座に座る『魔王』とそのそばで片膝をつくまさに暗黒騎士のような禍々しい鎧を纏った男がいる。


重苦しい空気の中で目を閉じていた魔王は口を開く。

「ブレイドよ、ついに我々だけになったようだ」

陛下は努めて気丈にふるまい、その感情を気取られないようにしているが長年一緒に居る私にはわかってしまう。


「ッ!...そう...ですか...それでは―


陛下を除いて()()最強と言われたワール爺さん、ワール爺さんは私の訓練の相手になってもらい、弱かった頃でも時間を空けて相手をしてもらった仲だ。


しかし強者特有のおごりはなく、戦闘中と訓練以外は常にニコニコと優しい笑顔で全員に好かれていた。


「待てっ!!」


まさか止められるとは思っておらず驚いてしまう。

「ブレイドよ、さんざん言っているが人間の国へと逃げる気はしないのか?今ならまだ間に合う」

その言葉にほんの少しだけの怒りと私の身を案じてくれる心に嬉しさを感じる、だが私は迷いもなく答える。

「陛下、私はあなたをお守りすると誓いを立てました、それに背くことはできません」


「っ!...確実に死ぬと分かっていてもか?」

『勇者』達は突如として現れ、神の加護を受けて老いることは無く、攻撃をほぼ無効化し、恐ろしい成長速度を持っている正義のミカタだ。

「もちろんです......陛下、私が戦っている間に逃げていただけないでしょうか」


「なんだと...?この我に逃げろというのか!」

『王』は国が壊滅的な状況でも臣下が一人でもいるならば逃げることは許されない、それが『王』の務めである、陛下は常々そう言っていた。


「そうです、死んでいった者達の為にもどうかご一考いただけないでしょうか」

時間は残り少ない、その間にも私は闘志を高めていく。

「っ...我も戦うぞ...」

これが苦虫を嚙み潰した表情の手本のようにその美しい顔を歪める、しかしここで引くわけにはいかない。

「なりません、どうかお逃げください」


「嫌じゃ...我は...我は...お前の事が――

泣きそうな陛下が何かを言いかけ、下の階から扉を破壊する音が響く、時間はもうないようだ。


「時間のようですね...それではへい...いえエル・ドラード様、先立つ私をお許しください」

私は立ち上がり、玉座の間を出る。


「ブレイドッ!我は...我はここで待っておる!だから...だから生きて帰ってこい!これは命令じゃ!」


「っ...しかと、しかと承りました、必ずやご期待に添えてみせます」

闘志は充分、力は遠く及ばないが必ずや勝って見せる、それが魔王様の命令だ。


エル・ドラードはその()の背中が不倶戴天の意志を持って死地に向かっていると理解している、それでも彼の意志を曲げてでも()()はここに残ると決めた。

彼が玉座の間から出た後静かに彼女は泣く、二度と戻ってこないと分かっていながら最後まで自分の気持ちを伝えれなかったのと絶対に守れないような命令をしてしまったからだ。







―♦―♦―♦―♦―♦―♦―♦―♦―♦―♦―♦―♦―♦―♦―♦―♦―♦―♦―






「なんだぁ?だれもいねぇじゃねぇか?」

粗暴な勇者の男が声を漏らす、先程の戦いで少し消耗をしてしまったがまだまだ戦える『勇者』達、魔族最強とワール爺さんであっても神の加護を持つ勇者達ではほとんど相手にすらならない。


「最後まで気を抜くな、何が出て来るか分かったもんじゃないからな」


そして警戒する事一分、ついに扉が開く、その扉から出てきたのはやはり想像通りの者だった。

「忌々しい勇者共め、ここから先は何が何でも行かせはしない」

否、そこから出てきた者は確かに想像通りだった、だがただ一つ違うのは纏う闘力(とうりょく)の量が桁違いな事だ、この戦いに全てをかけて挑んでいると一瞬で勇者達は理解した。


「これは...ちとまずいんじゃねぇか...?」

そう言った粗暴な勇者はもちろんほかの勇者には恐怖は見えない、ただ単に警戒度数が上がっただけだ。


「あぁ...これは確実に魔王並だな...」

たとえほとんどの攻撃を無効化出来たとしても魔王クラスになればある程度力が乗った攻撃でようやく切り傷ができるぐらいだ、だが相手は死ぬ気で来ているのだ、何があるかわからない勇者達は本気で向かう。


勇者達は目配せをして全身から黄金色に輝く光の粒を出して不意打ちのように一瞬で戦闘が始まる。


常人には決してその一動作も見えない素早さで行われる戦闘は容易には絶対に壊せない床や壁を次々に壊していく。


(ちっ!一ヶ月前より大幅に強くなっているな)


事実勇者達はたったの一ヶ月でありえないほどの強さを手に入れているのだった。


剣を振るう、剣の勇者はこの場からとどまらせる動きでひたすら私を確実に殺せるように動いている、すると後ろから突然殺気を感じて横に跳ぶ、そこにはいつの間にか消えていた影の勇者がいた。


それと同時に魔法の勇者の紫電の雷が迫りくるが術式を的確に斬って無効化していく。

しかしこれで終わりではない、祈りの勇者によるバフをその剣に込めて斬撃を飛ばす剣の勇者、当然これは消すことはできないため半身を動かすことで避ける。


(分かっていたが一発でも当たれば終わりだ、しかもまともに攻撃が入っても掠り傷しか追わせられない...だからどうした!私は...俺は!必ず護り通すと決めたのだッ!!)


さらに闘力が跳ね上がる、彼にはこの力しか持っておらずそれでも今まで勇者と戦えていた、それは一重に魔王様の為だった、先王様と共に魔族...今はひとまとめに魔族と呼ばれているが大きなところで獣人、森人(エルフ)岩人(ドワーフ)、竜人を一つにまとめ、我が物顔で人以外の種族を奴隷にしている人共に反旗を翻したのだ。

当然楽な道ではなかったし絶対に不可能だと思われたことを何百回も可能にした、勇者共が現れるまでは。


突如として勇者共は現れ、戦線を次々と押し返されていく我ら、先王様はこれ以上勇者共を強くさせてはならないと魔王様と共に討ち取りに行っただが結果は敗北、命からがらなんとか逃げ帰ってきた魔王様はそれからというもの人が変わったかのようにこれまで以上に修練を励んだ、そのおかげで未だにまだ一部の魔族たちは無事だ、しかしここで倒されては意味はない。


俺は走馬灯のようにこれまでの事を思い出しながらもまだまだ上がっていく闘力を纏いながらも正確無比に攻撃をはじき、段々と押し返していく。


剣を弾きさらけ出された胴体に突きを放ち、後ろから襲い掛かる勇者の短剣を掴み魔法の勇者に投げつける。


その隙に祈りの勇者に剣を振り下ろそうとするが素早く起き上がってきた剣の勇者に阻まれる。


すでに持ち直した魔法の勇者は紫電の雷を撃ち、影の勇者は懐に隠してあるナイフを投擲する。


それを俺は後ろに跳ばなければ躱せないと判断をして後ろに跳び引く、そして訪れる一秒にも満たない空白。


(信じられん!奴はどこまで強くなるのだ!!化物がッ!)

勇者達は戦慄していた、修羅のごとく無限に強くなる目の前の化物に少なからず恐怖が湧くがすぐさま振り払う。


「あれを使うぞッ!じゃないと勝てないッ!」


剣の勇者は叫ぶ、それは魔王に挑む前に神託でどうしても勝てそうにないときにだけ使うようにと女神に言われた力だ。


他の勇者達は一瞬戸惑いながらもその力を使う。

『『真気解放ッ!』』

白金色の光が爆発してその光が晴れた場所には神々しい姿をした勇者達がいるのだった。


そこでおもむろに剣の勇者が話し出す。

「魔王の騎士よ、この状態になったからには俺達には勝てない、諦めてそこを退けッ!!」

もちろん勇者達もただの魔族ならばこのようなことは言わない、なぜならば彼は先祖返りだからだ。


「ほざけッ!借り物の力で俺に勝てるはずもない!!陛下は命に代えてでも護るッ!!」


まるで無限に出て来るように闘力が俺の身体から溢れ、それを完璧に制御をしながら勇者に突っ込む、先程は押していたがそうはいかない、剣の勇者が俺の動きをとらえているのを感じ取り急いで横に跳ぶ。


しかし横に跳んだ瞬間に悪手だと気づいた、そのまま剣の勇者は横なぎに剣を振り斬撃を飛ばす。


しゃがんで回避をしようとしたが間に合わず、左腕を斬られてしまう。

俺は斬られたのも気にさせないような動きで真っ直ぐ剣の勇者に向かいその鎧に覆われてない関節の部分を斬りつける。


(なっ!?)


浅く...いや薄皮一枚切れただけだ、流石にこれには驚きほんの一瞬だけ判断が遅れてしまう。


俺を白い雷が襲う、それを避けきることは出来ず直撃をする。


「が...ッ!」


それ以上言葉を紡げず雷が引いたかと思えば蹴りをもろに食らい、俺は吹っ飛ばされて壁に思いっきりめり込む。


「ガハッ......」


「やったか...!?」


意識がもうろうとする、体が言うこと聞かない、耳鳴りがひどい、寒い。

だからどうした、今動かなければ陛下は、エル・ドラード様は殺される、だから動け、勇者を殺した後すぐさま死んでもいいだから、だから動けッ!!!




















現実は無情である、俺はそのまま意識が沈んでいく。






















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