グレイゴル アントニオ伯
〜グレイゴル アントニオ邸〜
「旦那様。プレイセル町長の
ミラーさんがお見えです。
通してもよろしいですか?」
「あぁ〜。またあの町長か。
どうせまた税金が支払えないとか
ろくでもない相談事だろ。」
大きな背もたれのきらびやかな装飾で
飾られた椅子にふんぞりかえる
少し小太りの髭を立派に生やした男
グレイゴルは
大きなため息をついた。
「お通ししますか?」
「仕方ない。面倒くさいが通せ。
あいつは取りあわないとずっと待ち続けるからな。」
「どうぞ。お入りください。」
部屋にプレイセル町長のミラーが入ってきた。
ミラーは痩せこけ
町長というには少し貧相に見える
「グレイゴル様、どうか税金を
下げてはいただけないでしょうか。
このままでは
奴隷や娼館に売られる事を恐れて
自ら命を落とすものや
街を出ていくものが後をたちません。
どうかお願い致します。」
ミラーは部屋に入るなり
両膝をつきグレイゴルに向かってこうべを
床にあてた。
そしてグレイゴルが
さらに大きなため息をつく。
「はあぁ〜〜。町長。
何度お話しすれば
わかってもらえるのかね。
この街が王より遣わされた軍により
隣国の侵略や盗賊団からの
襲撃にそなえるために
献上金が必要だと。
命を守ってもらっているのだから
お前たちは感謝の言葉だけをたれて
働けばいいんだよ。」
グレイゴルは
面倒臭そうに話した。
「しかし、
命を守ってもらっているとはいえ
人としての生活がままなりません・・・。」
ミラーが床に頭をつけながらはなす。
「だから税が払えないのなら
男は奴隷。女は娼館。
これなら国王陛下に渡す献上金も上がるし
街から貧乏くさいゴミ屑が減るわけだ。
いい事づくしじゃないか! はっはっはっ!」
グレイゴルは高らかに笑った。
「しかし・・・グレ
「しつこいぞ貴様!
貴様も町長とはいえ私にこれ以上立てつくのであれば
どうなるかわからんぞ!」
ミラーは
頭を床につけたまま何も言えなくなってしまった。
「ミラー。貴様も家族が大事だろう。
大事なら町長としての務めをしっかり果たせ。
できぬのならわたしにも考えがあるぞ。
たしか貴様には
まだ嫁入り前の娘がいたな?」
「!!」
「貴様が私にこれ以上意見すると言うのならば
娘に責任を取ってもらう事にするか。
どんな成長を遂げたか
しっかり見てやらないとなぁ」
グレイゴルはニヤニヤと笑い、
ミラーの顔色は青ざめていた。
「去れミラー。二度と同じ事で
私の前に現れるなよ。」
「・・・はい。」
ミラーは方を落とし
少し震えながらグレイゴルの部屋を出た。