こちょうのゆめ
ふと思いついたネタを、メモ帳に残す感覚で書きます、とりあえず。
私が蝶になった夢を見ているのか、蝶が私になった夢を見ているのか。
どこかで聞いたことのあるフレーズを、ふと思い出すことがある。
平成から令和へと変わった昨今、自宅でのんびりとデスクトップパソコンを起動させ、長く楽しんできたMMORPGの世界で3Dのファーストキャラを動かして『競売所』システムのオークションにアイテムを出品すると、先ほどから動いていた血盟チャットに目を走らせた。
卵スロット:PTお疲れー。そこそこ稼げたかねー。
百草井草:そこそこですね。しかしこの時期になってLVキャップ開放アプデとは……社会人になって時間がつらたん。
宇治金球:俺学生だからすぐ抜いてあげますね!
百草井草:月のない夜にデスペナ食らわんといいな( *´艸`)
宇治金球:闇討ちPKキター!お巡りさんここです!
エルフィル:あ、私もそれ参加します。
宇治金球:ちょっ!? なしてエルフィちゃん!
エルフィル:PT中にセクハラ茶やめてって言いましたよね?でもやめませんでしたよね?そういう事です。
百草井草:あ、これマジだ。おい宇治さん、はよ謝れ、マジであかん。
卵スロット:あー、あれは流石にひどかったからなー、俺も画面の向こうで若干引いてたわー。
宇治金球:うぇ、ちょ、皆マジで? ちょっとした賑やか死の心算だったんやって、ほんとよ!? ああ、ごめんてエルちゃん、次からは気を付けるから!
エルフィル:ふん。今日は落ちますね。宇治さん以外はお疲れさまでした。
卵スロット:おつー。
百草井草:おやー。
宇治金球:あああ、マジごめんてエルちゃん、かむばーーーっく!
何してるんだろうなぁ、こいつらは。
まあ、いつものノリで変わらない様子に微笑ましくなりながらも、俺は宇治金球いじりが始まったチャットへと参加し、一緒になって賑やかすのだった。
なお、翌日に高額の素材アイテムを献上する事で、彼が彼女の機嫌を取る羽目になったのは余談である。そして同じ時期に、俺が競売所に出しておいたとあるアイテムが高額落札されていたのはきっと関係ない筈である(笑)。
ゲームを終え、PCの電源を落としてからトイレを済ませ、寝室のベッドへと入る。明日も仕事、遅刻は厳禁だからな。
すやぁ。
◇
―――――。
――――……。
「………んぅ」
ちらちらと閉じた瞼の裏に感じる明かりに、昨夜は室内灯を消した筈なのにと疑問が浮かぶ。
それから無意識に手を突きながら体を起こすと、掌に感じるがさがさとした感触。まるで草むらにいるような?
体にまとわりつく感覚を覚える着衣も、寝る前は肌着とトランクス姿になっていた筈だと違和感を加速させる。
目元をこすりながら開き、同時に漏れ出したあくびと共に背伸びをしてから周囲を見回して、一言。
「なんじゃこりゃ……?」
目の前に圧倒的に広がる、広大な草原の景色に暫く思考が停止するのだった。