第六十一話 秘法
先程、魔女アヴローラに触れられた男が苦しそうに頭をおさえる。
「ぐっ!何だ……これは?」
男の身体が赤い光に包まれる。
「体が熱い……」
赤い光の中で男の姿が消え、身につけていた装備が床に転がった。
「どうなってんだ!消されちまったのか?」
傭兵のリーダー格の女が叫ぶ。
……魔女アヴローラは先程まで男が立っていた場所からピンク色の布を拾い上げた。
「あんまりよくない……はずれ、残念……あと三人は……」
魔女は拾い上げたピンク色のショーツを床に投げ捨てる。
「この女、人間を下着に変えたのか!?」
「光剣の疾走!」
杖を持った男の放った光術の剣が魔女に襲いかかるが魔女の展開した結界により弾かれる。
「岩津波」
魔女アヴローラが石造りの床を足で叩くと、彼女の周囲の床が泥のように溶け奇妙に波打ち、杖を持つ男とベネラに襲いかかった。
「くそっ!」
ベネラは魔女の攻撃を何とか躱すが、杖を持った術者の男は躱しきれずに波に接触してしまう。泥のように溶けた石が硬化し彼の足を拘束する。
「まずは貴方から……」
魔女が脚部を石に覆われ身動きがとれなくなった男の元に素早く移動し、彼の肩を叩いた。
「熱い……魔力が暴走し……う……あっ……」
赤い光に包まれ、杖を持った男も一枚の青いショーツに変えられてしまう。
「さっきのよりはいいわ……」
魔女アヴローラは先程まで人間であった青いショーツを左手で弄ぶ。
「あと二人……」
「くそ、冗談じゃねぇ……ベネラ!何とか切り抜けるぞ!」
リーダー格の女が魔女アヴローラに炎を纏った拳を打ちつけるも、魔女が構成した障壁によって阻まれる。魔女の反撃を警戒し炎弾を放ちつつ後退する。
「障壁が硬ぇな……火力不足か」
金髪のシェイマの傭兵ベネラも剣で切りつけるが、彼女の片足に石がこびりつき、思うように動くことができないのか、魔女はベネラの連撃を躱していく。
「……そろそろ終わりにしましょう」
魔女アヴローラがベネラの攻撃を躱しつつ両腕を振ると、脳髄を麻痺させるような甘い香りが広間に広がっていく……魔女に接近していたベネラの鼻腔と口腔の粘膜を甘い香りが刺激する。
「眩暈が……身体が動かな……」
ベネラは鼻と口をおさえるも、身体は自由を失い剣を落とし床に膝をつく。
「おいベネラ!しっかりしろ!」
「石棺」
魔女が右手を上げると、床から四枚の岩壁がせり上がりリーダー格の女を石の檻へ閉じ込める。
「貴女達二人は井戸の水を飲まなかったの?まあ……もう関係ないか……」
魔女がベネラに近づいていく……ベネラの目は焦点が定まらず泳いでいる。
「良く鍛錬された綺麗な身体……でも相手が悪かったわね……」
魔女アヴローラはベネラの防具を外し衣服を一枚一枚剥ぎ取っていく。
「やめ……」
魔女は身動きの取れないベネラに身体を密着させ、指を絡める。ベネラの顔が紅潮し、身体が痙攣する。小さな嬌声を漏らしながら、彼女の意識が溶けていく。
「さあ……わたしの一部になりなさい……」