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ホーボー・ホーボー魔導具を巡る冒険  作者: アトアン・グリューゼン
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第二十五話 先行き


「アンリ、出かけるのか?……私も……行こうか?」


 ガラテアがアンリに問いかける。


「ガラテア、良くなったとはいえ、まだ、本調子じゃないんだろ?」


「……ん……ああ……そうだな……」


 修道服を着たガラテアがベッドから立ち上がった。


「なんだか服を着てると……身体が熱くて、妙にムズムズして気持ち悪いんだ

服を着ていると落ち着かない……裸でいる方が楽だ」


「……ガラテア、少し背が伸びたんじゃないか?」


「そうかもしれない……少しアンリと顔が近づいた気がする……」


 ガラテアはアンリの顔を見つめる。


 ……二人のいる部屋にハイディが独り言を呟きながら戻ってきた。


「……今度、マリエスブールに行ったときに、ルカさんの奥さんの様子をしっかりと見ておきたいが……

……ああ、席を外して悪かったな、そういえば、ラディナの大公がカストルに来るらしいぞ、どうやら公式訪問らしい、政治のことはよくわからんが、公式訪問なら王都でパレードでもやるのかな?」


「オレもロザーナの姫もカストルに来るっていう噂をディアスから聞いた」


「そうなのか?それは初耳だ」


 ハイディは耳をぴくぴく動かした。


「……じゃあ、ハイディ先生、アンリ、私はもう行く……少し街を歩いてくるよ」


「ガラテア君、私の術式を刻んだ黒霊布の下着と薬があれば、魔力が暴走することはないと思うが気をつけてな」


・・・・・・


 ルーベルカイムの酒場のテーブルにアンリは座っていた……彼と同じテーブルに長身の黒髪の女と褐色の肌の女が座っている。

 テーブルの中央の皿には焼いて毛を落としたヤギの頭を煮込んだものが置かれており、アンリはそのヤギの頬肉をナイフで切りとり、皿に取り分ける。


「なあ、オクタヴィア、最近、稼いでるのか?忙しそうじゃないか」


 アンリは黒髪のシェイマ、オクタヴィアに問いかける。


「……ん、それなりには……色々と仕事が多くて」


 オクタヴィアはヤギの口を開き、舌をナイフで切り取る。


「おい、オクタヴィア、ヤギの舌を一人で全部食おうとするなよ、こいつが一番旨いんだからな」


 ……白い胸甲を着た褐色の肌の女、アルラウネのレダは二人のやり取りを黙って見つめている。


「レダ、アンタは食べないのか?」


「……アタシはいいわ」


「……あれから一週間、例の大猿の目撃情報はないらしい」


「カストル国内の何処かに隠れてるかもしれないけど、移動したんじゃない?

山伝いに帝国領内に行ったとか?」


 そう言いながら、オクタヴィアは黒パンをかじる。


「カストルの北東から帝国南部にかけての山岳地帯は広いから、だとすれば、なかなか見つからんだろ、あとはルースからだと南東に行ってロザーナ北部って線もあるか……まあ、今日はこの話はいいや……さて、今日の仕事の話なんだが……レダ、ルーベルカイムの北の山にあるドラゴンの住処を知ってるか」


「ええ、知ってるわよ、あの辺の山は何度も行ったことがあるから」


・・・・・・


 食事を終えた三人がルーベルカイムの街を歩いている。


「……この街に来るのも久しぶりね」


 レダは街の風景を見渡しながら呟いた。


「レダ、ルーベルカイムの街に思い出があるの?」


 オクタヴィアがレダに尋ねる。


「人間だった頃、この街に住んでたことがあったから……」


 ……街の各所で黒い軍装を纏った王国憲兵が街ゆく者達に睨みを利かせている。


「……街に警備の兵が多くないか」

アンリは声を潜める。


「最近、きな臭いし、皇帝派と教皇派の関係がだいぶ悪いからね」

オクタヴィアが応える。


 荒くれ者の傭兵達が街角にたむろしていた。


「ロザーナの姫とラディナの大公がカストルに来るらしいから警備を強化してるのか?」


 ……三人が町の様子を窺いながらルーベルカイムの街を歩いていると、黒い鎧を着た女がアンリに話しかけてきた。


「アンリ、ご機嫌よう、綺麗な女を二人も連れてどこ行くの?羨ましいわ」


「ルーネか、北の山に用があるんだ」


「北の山?……わたしもついて行きたいんだけど……仕事終わりで凄く眠いのよ」


 バフォメットの頭蓋骨から作られた兜を被った女……ルーネはそう言うと小さく欠伸をする。


「オクタヴィアさん、ご機嫌よう、いつも綺麗で羨ましいわ

……ねえ、アンリ、そちらの綺麗な方は?」


 ルーネはレダに目をやる。


「彼女はレダだ、この前、ルースに魔獣討伐に行ったときに会ったんだ、かなり腕が立つよ」


 ……ルーネは灰色の瞳でレダをじっと見つめる。


「レダさん、よろしく」


「ええ、よろしく、ルーネさん」


「彼女はルーネ、暗黒騎士だ、淵術の使い手で美人で出来る女だよ」


「……わたしなんて大したことないわよ、美人でもないしね……ねえねえ、今日はガラテアさんと一緒じゃないの?」


「ん、ああ」


「ちょっと前に街で歩いてるの見かけたんだけど……色っぽくなったっていうか、最近、雰囲気が少し変わったんじゃない?何かあったの?」


「さあ?よくわからないな」


「ふーん……そういえば、お姉さんは元気?最近会ってる?」


「最近は……会ってないな、姉貴が貴族の屋敷で使用人として働きだしてからはあんまり……」


「へえ、そうなんだ」


「姉貴に何か、用があったのか?」


「……いや別にそういうわけじゃないんだけどね」


 女暗黒騎士ルーネは兜から眠そうな目を覗かせながら、再び欠伸をした。


「……じゃあ、わたしは帰って寝るから

儲かりそうな仕事の話があったら、教えてね」


「じゃあな、ルーネ」


「ええ、さよなら、アンリ、オクタヴィアさん、レダさん、また会いましょう」


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