第九十一話 誘
鉈を持った女と魔獣使いの女の身体が青い光に包まれ、太股と脇腹に翡翠色に光る刻印が浮かびあがる。
「力が湧いてくる!」
魔獣使いの魔力で硬化させた拳がレダの槍とぶつかり合う。
「ハイディさん、治療を!」
「ああ!」
ハイディは吹き飛ばされたヴィルジニーに駆け寄り手を当てる。
「呼吸は……しているな、骨は折れては……ない……か?」
ハイディは手をかざし光術で治療を行うがヴィルジニーの意識は戻らない。
「魔剣の疾走!」
鉈を持ったオークの女が放った淵術をアンリは減速術式で形成した氷盾で防御する。ルーネがアンリに加勢し、オークの女にダートを投擲する。攻撃を受けたオークの女の腕から赤い血が流れる。
「ルーネそっちは片付いたのか?」
「ええ」
アンリが広間の隅に目をやるとオークの重戦士が横たわっていた。
「ねえ、アンリ融合する?」
「いや、二対一で押し込もう」
「了解」
「あいつがやられたのか?……ちっ!黒の衝撃!」
鉈を持った女が放った淵術の波動をアンリとルーネが回避する。
「バカめ!狙いは向こうだ!」
女の放った淵術の波動がレダの背に命中する。
「うっ!しまっ!」
攻撃を喰らったレダがよろける。その隙に魔獣使いの女は腕から伸ばした蔓草でレダの身体を絡めとる。
「……フフフ……もう貴女は逃げられないわ」
魔獣使いの女はレダに抱きつき胸を押し当てる。
「綺麗な身体……わたしのものにしたい……これに耐えられるかしら?」
女はレダの耳元で常人には聞き取れぬ魔獣支配の呪文を囁く。
「うっ……!」
レダの口から僅かな嬌声が零れ、全身が痙攣する。
「……この状態のわたしに支配されずに耐えるなんて凄いわね……じゃあ融合魔法でゆっくりと吸収しましょうか?」
魔獣使いの女はレダのスカートの中に手を入れ、レダのショーツを撫で下腹部を指で優しく叩く。
「あ……あっ!……ぐっ!」
レダは嬌声を嚙み殺す。
「身体の底に魔力がいっぱい……察するに人間だった頃エリートだったんでしょ?……貴女を吸収すればわたしは完全覚醒体に……フフフ……」
「うっぐっ!……貴様ごときに!」
レダが魔獣使いの女を渾身の力で振りほどく。
「まだ、これだけの力が!油断した……痛っ!」
魔獣使いの女の足が震え血が流れ落ちる。レダの槍先が赤く濡れている。
「ルークスジャベリン!」
ハイディが魔獣使いの女に光術を放つ。女は魔力で腕を硬化させ急所への直撃を防ぐ。
「ハイディさん、ヴィルジニーさんは?」
「命に別条はない」
「それは良かった」
……鉈を持ったオークの女をアンリの氷の短刀とルーネのポールアックスが激しく攻め立てる。オークの女は二人の攻撃をなんとか防ぎながら必死に防戦する。
「そろそろ潮時ね……壊れてしまう前にことを済ませましょうか……」
緑の魔女エシャールが闇の中で呟いた。




