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ある日の生徒会室にて

「会長?貴方先程言いましたよね?セレネを連れて来れば、ちゃんと仕事をする。と 」


「ああ、言ったねぇ。」


「ひとまず、膝からセレネを下ろしませんか?…セレネ、こっちへいらっしゃい。あと、お菓子は1日ひとつだけって言ったでしょう?」


「…もぐもぐ、もぐもぐ、…やだ。」


手に持っていたシフォンケーキを慌てて口に詰め込み、プイッと私から視線を外した。

セレネは最近、反抗期なのだろうか?

自分の膝から動こうとしないセレネの姿に嬉しそうに笑みを浮かべる会長に更にイライラが増す。

こんな事なら、連れて来なければ良かった…。



時は、夕暮れ。場所は生徒会。

メンバーは、生徒会長、副会長と…。

生徒会長のお膝の上に、ちょこんとセレネが乗っていた。


そのお膝の上のセレネの頭をずっと撫で撫でする会長。

撫でられてるセレネはお口にいっぱいシフォンケーキを詰め込んで、一心不乱にもぐもぐ咀嚼している。

ちょっと普通の生徒会室にはあってはいけない光景だった。



事の起こりは、生徒会長の一言からだった。


「もう、やだ。お仕事したくない。」


会長の机の上には、今にも雪崩がおきそうな位、積まれた書類。

そして、それをひたすら処理しているのは、会長と副会長の2人のみ。

本来なら、生徒会役員全員と顧問教師で処理するはずなのだが、他のメンバーは数ヶ月前に編入してきた女生徒を接待するのに忙しいらしい。

それのしわ寄せが今、2人に降りかかっている。

やってもやっても、終わらない仕事。

学生の本分は勉強ではないのだろうか?

仕事に追われ、授業も受けられなくなるなんて、本末転倒な気がするけど、気にしたら負けだ。

そんな葛藤とも戦いながら、処理をしていたら、先程の会長の発言が聞こえてきた。

ここで会長にも抜けられたら、それこそもう終わりだ。

本来なら業務が止まろうが、生徒会が崩壊しようが、どうでも良いのだが、やりかけのものを途中で放棄するのは、性分的に嫌なので何とか会長には復活していただきたい。

どうにかやる気を復活させてくれないかと、問いかけたら、条件を出された。


「君の妹、今すぐ連れてきて。」


「セレネを、ですか?何故?セレネはまだ4歳です。仕事の手伝いなんて出来ませんよ?」


「今、この場で、最も必要なのは癒しなんだ!小さくて、ふわふわして、可愛い仕草を見せてくれる、癒しこそ!必須!!今すぐに、連れてきたまえ。」


たしかに、私の妹は可愛い。

ふわふわの髪も、ツヤツヤの肌も、ぷるぷるの唇も、鈴の音のような声も、小さな手でぎゅっと抱きついてきて、全力で甘えてくる姿なんて、可愛すぎてヤバい。

なので、会長の主張もわかる。

わかるけど…何か嫌な予感がする。


…。


けれど、背に腹はかえられぬ。

私が見張っておけば、まあ、大丈夫でしょう。


「わかりました。今連れてきますので、本日のノルマ分のお仕事はしっかりと片付けてくださいね。」


※※※


「会長!約束と違うのではありませんか?お仕事してください。そして、セレネ!いい加減にお口にケーキを詰め込むのはやめなさい。水分全部持ってかれて、むせるわよ。…と、ほら、言ってるそばから!!果実水飲みなさい!」


ゲホゲホと咳き込みだした、セレネのそばに慌てて駆け寄ると、すでに会長が、セレネの背中を優しく撫でながら、口元に果実水を運んでゆっくりと飲ませてくれていた。


…それは姉である私の役割なのに…。

だから、会長は、嫌いなのよ。


「おにいさま、ありがとう。」


「どういたしまして。もっとゆっくり食べなさい。おやつは逃げないから、ね。」


「…これ以上、セレネに与えないでください。セレネが丸くなります。セレネ、もう食べるのはやめなさい。お母様に言いますよ。」


「…もう、たべない。」


やはり、母の存在は偉大だ。

ピタリと手を止めて、ご馳走さまでしたと、お祈りをして、膝の上で会長を仰ぎ見てお礼を言っている。

と、急にキョトンとしだして、会長の目元に手を添えた。

セレネ、何をしているの?近い、近い。

離れなさい!


「おにいさま、めのしたに、くまさん、いるよ?よる、ねむれてない?つかれてるときの、おとうさまと、おなじ。」


「「え?」」


思わず、会長とハモってしまった。

なんたる不覚。

でも、気付かなかった…。

会長、そこまで働いていたなんて。


「おにいさまも、おねえさまも、おしごと、たいへんそうだけど。ちゃんと、やすんでね。セレネのげんき、わけてあげるね。」


─こうすると、お父様は元気になるんだよ。

と、言いながら、首元に手を回してぎゅっと抱きついた。

ああー、それ、お父様をダメにするやつ!

確かに元気になるけど、しばらくセレネを離さなくなるやつ!

だめ!セレネ離れなさい!

会長も離して、セレネを離して!

嬉しそうに、そのままセレネを抱っこしないで。


そんなやりとりを小一時間ほど繰り広げてから、やっと会長がセレネを離してくれた。

…疲れた…。

仕事より、疲れた…。


「さて、時間も押してるし、この書類を提出して帰ろうか。」


「帰るって、まだ片付いていないでしょう?あれから一枚もやってないわ?」


「ん?そこの山なら、もう処理済みだ。あとは、これを提出するだけだよ。」


「…え?」


慌てて、会長の机の上の書類をめくる。

そこには全て会長のサインと印が押され、埋めるべき内容や数字も正しいものが入っていた。


「いつの間に…。」


「内緒。と、セレネちゃん、どうやら眠いようだね。ウトウトしてきてる。」


会長から離され、ソファに座っていたはずのセレネを見たら、確かにウトウトしながら、目をこすっていた。


「お疲れ様、君たちはもう帰って良いよ。今日はありがとう。お陰で、気分良く終わりにできた。」


「…?終わり??」


なんだか、よくわからない言葉が聞こえてきたので、思わず聞き返す。


「そう、終わり。これ、今の生徒会の解散命令と、新規生徒会の発足指示書。」


会長が持っていた書類をヒラヒラとさせ、生徒会室から出て行こうとする。


「え?会長??」


「使えない部下なんていらないよね。いつまでも、手元に置いておく価値なんてないし。ああ、明日からまた忙しくなるから、新副会長さん、どうぞよろしく。」


─じゃ、また明日。


そう言って、半分眠ってしまったセレネに気遣うように、静かに生徒会室から出て行ってしまった。


─何がなんだか、よくわからないけど、帰ろう。今日はゆっくり寝よう。

最近重くなってきたセレネを抱きかかえて、やっぱり当分の間、セレネには、お菓子禁止にしようと心に誓う。




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