ある日の風景
目の前には愛らしい、ちょっとふっくらとしたほっぺをぷくーっと、更に膨らませているセレネがいる。
そして一言。
「セレネ、わるくないもん。」
いつもキラキラと輝かせている瞳にうっすらと涙を浮かべながらも、ちょっと唇を尖らせて、ツンと横を向いた。
そのくせ、ギューっと自分のスカートを握っている手はぷるぷると震えている。
いつも素直で慕ってくる妹のちょっとした、反抗。
破壊力は抜群だ。
これをわかってやっていたら、末恐ろしい。
その辺の免疫のない人たちなんてコロリと落ちるだろう。
まさに、今目の前でお父様が…。
「そうだよねっ!セレネちゃんは悪くないよね!!あぁぁぁ可愛い!セレネちゃん可愛いよ!!」
「お父様は黙ってて!!そしてセレネを離して!」
未だほっぺを膨らませて、ツンとしているセレネを、後ろからギューっと抱きしめて庇う父を黙らせる。
そんな風にセレネを甘やかすからダメなのですわ。
「セレネ、黙って外に行ったら危ないの!もう私の姿でも1人で外に出たらダメよ。」
「…。」
「セレネ、お返事は?」
「…だって、またおにいさまと、おかしたべたい…。」
「セレネちゃん、お菓子食べたいの?お父様が幾らでもあげるよ。お父様がねっ!」
「あーもう、話がややこしくなるから、お父様は黙って!」
「…セレネ、おにいさまとが、いい。」
あぁ、今のセレネの一言でお父様が膝から崩れ落ちた…。
そして、セレネ!!バ会長のこと、お兄様と言うのはやめなさい!
ぷくーっと拗ねてる4歳児を中心に、泣き崩れる父親、厳しく躾けたいけど、やっぱりどこか甘い姉、少し離れたところから、ソファに優雅に座りお茶を飲みながら、見守る母親。
そんなやりとりが繰り広げられてる仲良し家族でした。