密室の果てに……
「ここから出して!」
突然、密室に閉じ込められた二人の男女は、ノブもカギ穴もないねずみ色のドアを叩きながら口々に言葉を叫ぶ。そのほとんどは助けを求めるものと、理由もなく閉じ込められた理不尽さをあらん限りの大声で叫んだもので、それは狭い密室の壁に跳ね返り、不協和音のように響き渡った。
「ここから出して!」と彼女がもう一度叫んだ声も虚しく消え去った後、彼女らは密室の周囲を観察し始めた。
密室は四角い部屋であった。わずか畳六畳分ほどの狭い室内の壁は窓一つなく、すべて分厚いコンクリートで囲まれていた。明かりは、中央で燃えている松明のような火があるばかりで、その近くには火の明かりに反射して怪しく光る、アルミのバケツが置かさっていた。
「見ろ! 火だ。このままじゃ焼け死んじゃう」
「見て! バケツの中に水が……」
彼の慌てた様子を見た彼女が、その声にも負けない強い調子で叫ぶ。
「これをかければ火が消えて、もしかしたら助かるかもしれない」
「よし! オレがかける。よけて」
そのことに安堵したのか、彼は急にはりきり、彼女を手で払って、バケツを重たそうに持つ。そして、おらぁと一声気合いを入れると、少し小さくなり始めた火に、バケツごと液体を勢いよくかけた。
その瞬間、炎は一気に燃え上がり、密室の中の二人を包み込んで――
そうして私の幼い子どもたちは死んでゆきました。