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天使の脱け殻

作者:



クリスマスの前日、大学も休みに入り恋人もいない僕はバイトに精を出していた。

居酒屋の調理場をあらかた締め、店を出る頃に時刻は午前2時をまわっていた。


イルミネーションが消えることのない駅前通りはタクシーが忙しく出入りをしている。


ふと広場を横切ると何やらよからぬ現場に鉢合わせてしまった。

同じ大学らしき若者が無理やり女性をナンパしていた。女性のほうは泥酔しており、抵抗のしようがなさそうであった。


体が動いて止めにはいる。

相手は四人いて到底勝てない。押されてよろめくと拳が2、3発入り倒れ、蹴られ踏まれて意識が遠退いた。


気がつくと白髪混じりのおじさんに起こされ、ふらつく体で自転車に乗り家路に帰った。

おじさんの言うには泥酔した女性はよく分からないままタクシーで帰ったようだった。


その夜妙な夢を見た。


白い何処までも続いてそうな空間のなか、カラフルなボールが転がっている。大きさはまちまちで、大きいものは膝丈ほどで小さなものは手のひらに収まるほどであった。

近寄ると、どれも綺麗にラベルが貼ってあるが、文字化けしているようで無茶苦茶であり、どれも読み取ることができない。


一つ一つ吟味した。色には波長があるというが、自分もそれには賛成である。視覚からはいる情報は、時に口ほどにものを語っていた。


僕はスカイブルーの、バスケットボール大のボールをとると、意味も分からず遠くに投げた。


強く投げたつもりは無かったがボールは奥へ、奥へと飛んでいき、やがて点になるとそこから透き通った青いスカイブルーが広がっていき、辺りを包み込んだ。


朝起きると昨日の痛みは消えていた。窓の外には澄んだ空模様が広がっている。


あれは僕が描いた空だろうか。


本当に昨日はあれでよかったのか、自分には分からない。


しかし、損はしてないような気がした。


いいことをしていれば報われるとは限らないし、見返りを求めたくはない。


だが、今日の空模様が広がる限り、ただひたすらに生きようと思った。

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