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戦いが始まったものの

 三日後、西の町の中央広場は俺が見たことの無いような人数が集まっていた。しかし、賑やかというよりは少し、重い空気を感じる。その人だかりを避けながら、俺とロイは中央に進んでいく。

 ロイの服装は、この前町長のところに行った時と同じ銀の鎧にマント。俺もほとんど同様の服装。違っているのは抱えるようにして兜を持っているところだろう。この兜にも飾りはついているが、この前のように笑いを誘うようなものではなかった。確かに耳のようにも見えるが、自然な感じで装飾が施されていて、むしろかっこいい。そうそう、いいんだよこういうので。ちなみに灰猫の騎士団の鎧は防御力よりも機動力に重点を置いているようで、意外と軽い。

 広場の中央部には緑蛇の騎士団が集合していたようだった。決闘を申し込んだ後、酒場のオヤジさんの情報によると、町に来た時に申請された人数はちょうど三〇名とのことだ。数えてみると確かに三〇人いる。全員が、緑色の鎧を装備している。兜も蛇の顔を模したもののようだった。正直、趣味が悪い。

 騎士団が揃ったところで、町長が中央に立ち両騎士団長を呼んだ。気が付けば、中央広場にいた町の人々は邪魔にならない様に数か所に固まっている。見知った顔も知らない顔もいる。

「ふむ、このような決闘がまさか行われるとは。驚きと同時に名誉だと思おう。……灰猫の騎士団、ロイ団長。緑蛇の騎士団、スネイル団長。決闘はこの町全域でおこなわれる。戦闘によって町民たちとその財産に危害を加えること以外は全てを認める。私の選出した職員が町のいたるところにいて君たちを監視させてもらう。違反があればその騎士団の敗北とさせてもらう。形式は全団員同士の戦争形式。双方異論がなければ、騎士の誓いを」

 ロイが木剣を胸に宣誓する。

「灰猫の騎士団。ロイ=シュナイドの名において、誇りと名誉にかけ誓おう。我が剣が必ずや町に平和をもたらさん」

 スネイルも応える。

「緑蛇の騎士団。スネイル=ネイルの名において、我が信念にかけて誓いましょう。我が剣はこの町に利益を与えるものとなることを」

 町長は頷くと大きな声で宣誓する。

「では、一定の距離を取り、正午の鐘を始まりの合図とする!!」

 ロイと、スネイルが踵を返し戻っていく。

 俺は、武器と兜を確認し、周囲を確認する。地形は戦闘において何より重要だ。ふと、見知った顔を見つけた。豚のしっぽのアリカを中心にした面々、俺は親指を立てて見せる。

 大丈夫、今度は手放さない。


 数分後、緊張した空気を破るように正午の鐘が鳴り響く。

「「うおぉぉぉ」」

 ロイと俺は緑蛇の騎士団めがけて、突進する。緑蛇の面々も走り出した。そして、俺たちが広場の中央に到着すると、急停止し互いに声をかける。

「じゃあ」

「予定通りに」

 次の瞬間、方向を転換しお互いに左右に分かれた。広場をでて、細い路地などが入り組んだ町の地形を利用するためだ。しかし、それを予想していたのか広場の出口に緑蛇の騎士が立ちふさがる。

「邪魔だぁ!」

 それを、俺は相手の振りかざした木剣をさばきながら突破した。あくまで、こちらの有利な場所に出るのが目的、走りながら敵の攻撃を避けて走り去る練習をロイと俺は決闘を申し込んだ直後から重ねていた。三日坊主でも案外役立つものだ。

 俺は後ろを振り向かずに、まっすぐ走りだした。ロイの心配はしていなかった。なぜなら、背後からロイのものでない悲鳴が聞こえたからだ。俺は避けるのがやっとだったが、ロイは返り討ちにしたらしい。

まずは広場を出て坂に差し掛かった。走りながら、俺はロイと話したことを思い返していた。


「騎士団と騎士団の総力戦、戦争形式などとも呼ぶが勝利の条件は相手を全滅させることじゃない」

 ロイが言うので俺は質問した。

「どういうことだ?こういっちゃ悪いけど過去に全滅して負けたんだろ?」

「勝利条件は全滅ではなく、将を取ることにある。つまり、団長を倒せばよいことになる。しかし、団長を全団員が守る様に戦うから、必然的にそういった形になるんだ」

「なるほど、つまりスネイルをどっちかがぶっ倒せばいいわけだな」

「あぁ、だが今回は戦力差がありすぎる……」

「ロイ、いい考えがある。俺たちは猫だけど、虫みたいに行こうぜ。蝶のように舞って、蜂のように刺すってやつだ」


 そうして、計画されたのがこの作戦だ。こちらは、ロイに叩きこまれたこの町の地形の知識と、シンプルな力仕事で鍛えられた脚力とスタミナで勝負。ちなみに、日が暮れても勝負がつかない場合は引き分けとなって決闘は最初から無かったことになるそうだ。スネイルたちは引き分けにするわけにはいかない。

後ろを振り向くと少し離れたところに緑蛇の騎士が十名、俺を追っている。ロイのところに何人行っているのかは分からないが、スネイルも自分が倒されたら終わりなのは知っているだろうから、俺に十人、ロイに十人、自分の警護に九名といったところか、シンプルな振り分けだが確かに理にかなっている。

 ―――だからこそ、予想通りである。


 俺に向かってくる十人は走って息が上がっている。さらに脚力には個人差があるから多少ばらけている。さらに、今まで逃げていた人間が急に向かってくれば混乱が生じる。


 俺は、木剣を片手に握り両手を地に着けた。クラウチングスタート。

「第一レーン。蛭崎迅人。種目は、短距離!」

 足に力を入れる。鎧を着たままでもできるように、練習をして鎧は少し改造した。

 急な方向転換。先頭の騎士が驚く顔が見える。

 そして、素早く俺は木剣で相手の脇を突いた。防具で守られていない場所は把握している。痛みで相手の話した木剣を素早く掴むと、再び距離を取った。


 まず、一人。


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