きっかけ
「おそらくは──ね」
橘川の口ぶりは、ようやくそこに辿り着いたか──と、言わんばかりだった。
「魔力が大きい子に、相性の良い魔族石を寄生させれば、ある程度の魔法を使っても魔族化する危険は少なくなるだろうし。
とはいえ、寄生箇所を確認したわけではないので断定はできないけどね。
それに、見ての通り、あまり気持ちの良いモノではないだろう?」
橘川は自嘲気味に問いかけ、続ける。
「アイドルなら肌を露出させる場面もあるだろうし、もし寄生させるなら、きわどい衣装や水着でも隠せる場所を選ぶだろうからね。
そういう場所はさすがに調べるわけにもいかなくてね。下手をすれば警察のお世話にだってなりかねない」
最後の方は、冗談とも本気ともつかない口調で苦笑し、肩をすくめて見せた。
「寄生──させているんですか、WAPは……。スカウトした女の子に魔族石を……」
表情を曇らせた少年が思わず「ひどい……」と漏らす。
ウィッチアイドルの華やかな部分しか見ていない少年たちには、少々厳しい現実だったかなと、橘川が話したことを後悔しかけていると、
「でも、ウィッチアイドルがいなかったら、魔族にみんな殺されちゃうんだよ……」
少女の言葉は静かだけれど重かった。
そんな彼女を見て、橘川は「ほぅ」と目を細める。
「そ、それは、そうだけど、寄生されたらもう取れないんでしょう? 下手したら自分だって魔族になっちゃうわけだし──」
「それでも、誰かがやらないといけないんだよ」
少年の言葉を遮るように少女は言うと、
「──って、魔力がない上に寄生すらされないあたしが言っても、説得力ないんだけどね」
さみしく笑った。
「キミはウィッチアイドルになる危険性を知ってもまだ、なりたいと思うのかい?」
橘川が問いかけた。
「あたし、むかしウィッチアイドルに助けてもらったことがあるんです」
そう話した少女の顔を、驚きの表情でのぞき込む少年。
どうやら彼も、初めて聞く話のようだ。
「もし、ウィッチアイドルが来てくれなかったら、あたしはたぶん……」
そこまで言って視線を落とした少女は、小さく息を吐いて気持ちを切り替えると、
「だから、今度はあたしが誰かを助けられたらって思って」
「なるほどね」
橘川が口元に笑みを浮かべた。
「そういえば、さっき橘川さん、『WAPでないなら、ウィッチアイドルになれる』って言ってましたよね?」
少年の言葉に、少女が反応する。
「寄生されないのに、なれるんですか?」
「寄生されないからこそ、できる方法もある」
そう言った橘川は、
「朝霧──君だっけ? キミの協力が必要不可欠となるけどね」
「僕? ですか?」
少年が不思議そうな顔をするのを見越して、橘川は話を続けた。