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醜いアヒルの子

作者: 帝国城摂政

 僕、山田太郎(一応、本名である)は昔から背が低かった。他の同年代の子供と比べても低かった。けれども僕の場合は他の同年代と比べたら小さいってくらいだった。



 けれども僕の幼馴染である守里真昼(もりさとまひる)はそう言う物では無かった。

 同年代の子供と言うか、そう言う物を通り過ぎた小ささだった。

 発育不良と言うかそう言うのではなく、異常発育不良と言っても可笑しくは無かった。矮躯とか極小と言うのが言葉として合っている気がした。



 小さい女子と言うのは男性の中では可愛い物として扱われる事が多いけれども、彼女の場合はそう言うのを度外視するくらい小さかった。

 本当に小さかった。小さいと自称するだけでなく他人からも評価される僕と比べても。



 そして子供と言う大抵の低年齢期の人はいじめる人間を求める物だ。

 少し顔が不細工な子。

 どんくさい子。

 ――――そして、小さい子。



 僕の地区の子供達は極端に自分達から小さい子である、衛宮守里をターゲットにして執拗に、かつ巧みに親にばれないように。

 親はこの地区ではかなり有名な長身モデルだったから。軽く見積もっても190を超えるあの母親に、それよりもデカい父親。彼女の2人の姉(当時、高校2年生と中学3年生)も父親や母親に並ぶ劣らずの背丈を持っていたから。



 皆は毎日虐めを繰り返していたけど、僕は虐めなんかはしなかった。

 馬鹿らしかったから。

 いや、そうと言うよりは単純に同族愛護の精神か。

 何せ彼女が居なかったら虐められていたのは僕だったからかも知れなかったから。



 僕は何度も彼らに止めるように言った。だがしかし、大きいと言うのはそれだけで強いと言う事だ。その提案は却下されて時にはうるさいと僕を攻撃もされた。で、彼女を助けるのはいつも彼女を虐めるのを彼らが飽きた頃だった。

 彼女はそんな情けない僕を攻める事も無く、ただいつも、感謝の言葉を言ってニコリと微笑んでいた。



 彼女を助けた日は、彼女の家でご飯をごちそうになっていた。僕の両親が共働きで遅いと言う事もあるけど。

 彼女の家に来て彼女の家族を見ると、まるで自身がとても小さな小人のように思える。彼女にしてみれば彼らが巨人のように思えるのかもしれないが。



 いつも彼女を助ける僕の事を彼女の家族はいたく気に入っており、



「将来はまっちゃん(守里の愛称)のお嫁さんかしら? ウフフ……」←母親



「あぁ……。そうだな――――」←父親



「いや―――――! 太郎が居れば安全だな!」←運動系女子高生、泉姉



「コクコク……」←文科系女子中学生、瑠璃姉



 と勝手に将来の結婚相手にされていた。

 まだ僕と真昼は小学生低学年だったし、僕は全然大丈夫だったんだが、彼女はそう言われるたびに顔を赤らめていた。



 この頃が彼女が醜く小さい、『アヒル』と言われていた頃の出来事。


















 小学校高学年、所謂第二次成長期。僕も人並みに成長していた。そう、伸びだけで言えば。ただし、元の身長が低いために僕はまだまだ低かった。問題は、真昼だった。

 彼女はもはや異常と呼べる速度で成長していき、中学2年の頃には約5mと言う巨体に成長していた。もしも彼女がそれまでも普通に成長していたら、もっと大きくなっていただろう。しかもまだまだ成長は止まらなかった。



 昔、彼女を虐めていた者達は彼女にビビッていた。何せ、明らかに化け物を越えた大きさの彼女や、彼女の姉(5mは無いが3mくらいはあった)達にひとしきり虐められてしまっていたから。虐めと言うよりは脅迫だったが、傍目にはただの虐めだろう。

 その怒りは僕に向けられそうな物だが、彼女達の制裁を恐れた彼らは何も出来なかった。それに……



「~~~♪」



 今、僕の遥か頭上では真昼が鼻歌を歌っている。焼けに上機嫌だ。

 ちなみに僕は彼女の手の上に載っている。フィクションのように手の平の上で身体全体が載るほど大きくは無く、けれども手の上に載せてもまるで重さを感じないように動いてる。



 腰まで伸びる黒髪。

 青い瞳に端正なフランス人形のような顔立ち。

 身体全体が黄金比のように育ったその身体は、100人中100人が振り返る美貌。

 まぁ、主に真昼が振り返る理由の多くはその巨体なのだが。



「焼けにご機嫌だな、真昼」



「う、うん! だって、また身長が伸びていたんだから! 本当にうれしいよ!」



「そうか、それは良かったな」



 昔は自身の超低身長にコンプレックスを持っていた彼女は自身がちゃんと成長したのが嬉しいのだろう。彼女の家族も心の底から彼女の成長に喜んでる。

 まぁ、娘の成長を喜ばない親が居ないように、妹の成長を嬉しがらない姉が居るように。

 かく言う僕も結構、嬉しかったりする。彼女の家族ほどでは無いにしても、嬉しいのは嬉しい物だ。



「と、ところでたっくん(僕の愛称)。た、たっくんは……好きな人っている?」



「えっ……? ま、まぁ、居るかな」



 何となく愛していると言う程でもないけれども、彼女、真昼の事は好きだ。

 少なくとも恋人として付き合うくらいならばと言う意味で。



「そ、それって……! もしかして3組の佐藤さん!? それとも2組の石川さん!? はたまた6組の小鳥遊さん!?」



「え、えっと……」



「否定しないって言う事はやっぱりそうなんだ……」



 そう言いながら、彼女は自身の胸元に視線を移す。僕も視線を移動させる。

 そこには全く育ってないまな板のような胸があった。身長の成長とは違って、彼女の胸は全くと言っていいほど成長していなかったのだ。

 ちなみに先程あげた3人の女子生徒は、学校の中でも胸が大きい女子生徒として有名な3人。



 ただいまの彼女のコンプレックスは、背では無く胸に移動している。



「あぅ……。やっぱりたっくんもおっきいのが良いんだね。

……こっちも成長してくれないかな? ボク、もう少しで大きくなってくれると嬉しいんだけどね」



 彼女はそう小さく言っていた。





 この頃は彼女が胸も背も莫大的に成長する少し前の、『天使の白鳥』と言われる少し前の頃の出来事。

 そして――――僕と彼女が付き合い始める少し前の出来事である。

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