DRAGON
強いから
竜王討伐に選ばれた
勇者だと言われた
あの峰に、本当は竜王なんていやしない
何故なら私が…
DRAGON
「ここが竜王のいる山ですね」
笑顔で言うのは、私の(自称)仲間、フェイという子供だった。
「そうだな」
私は相槌をうって先を見た。草木は無く、ただ荒れた大地が剥き出しの山は、どことなく痛々しい。
この先に、竜王はいない。
だから勇者に選ばれた時、私は嘘をつこうと心に決めていた。
王、竜王はこの私が倒しました。もう安全です。
と。
だけれど、話はどうも上手くいかない。
竜王と戦うなら、魔導師が必要だな。ならばフェイを連れて行くが良い。
ああ…なんて迷惑な!
そして私は、なんの打開策も思いつかないまま、フェイと共にこの竜王の峰まで来てしまったのだ。
しかも、竜王の巣(家?)はもう目前にまで迫ってきていた。
「勇者様、もうすぐ竜王の巣です。どうしますか?」
いや、本当にどうしよう。
「…どうもなにもない。行くぞ」
さぁ、どうする。
竜王の巣に到着した。
しかし、誰も何もいなかった。…当たり前な話だが。
「…いないですねー」
「そうだな」
そう言って、私は街の方向へ足を向けた。
「そうだなって…って、勇者様?! どこに行くんですかっ!」
「帰る」
「竜王はどうするんですかっ」
「竜王は私が倒した」
フェイは黙った。
「そういうことにして、帰ろう。王にそう報告しよう」
私は半ば、投げやりに言った。
まぁ、こんなんで納得してくれるフェイではないだろうが。
「嘘をつくのですか…?」
「辺りを見てみろ。竜王どころか人影さえない。竜王なんて最初からいないんだ」
「なんでそんなことが言えるんですか」
「それは、私が竜王…」
まずい
なんて間抜けな話だ。
「私が…?」
ほら、
感づかれた。
「いや、なんでもない…」
ああもう、なんで今に限って良い言い訳が出てこない!
「…勇者様は、ここにいた竜王のことを知ってるのですね?」
これはもう、本当の事を言うしかないだろう。
なんて反応をするのだろうか…
何故、王に言わなかった!ってあたりかな…
「…二年前の話だ。私はここで、竜王と戦い…勝利した」
その言葉を聞いて、フェイは愕然とした。
そうなんだ。二年前に、私は竜王を倒したんだ。
でも、何故
竜王討伐に向かった勇者は、誰も帰ってこなかったのだろう…
「そうだったんですか…」
フェイが、ゆっくりと言った。
「そうか…貴方が私の父を…」
その時、私はなんて言われたのか
一瞬では理解できなかった
END……