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無駄な意地、わんこ蕎麦の乱
十五分経過。お椀の山が築かれた。
剛田の九十八杯。喉が閉じる。
神宮寺は九十九杯で固まった。
目は虚空を見つめ、静止画だ。
「はい、じゃんじゃん!」
給仕の掛け声が死神の宣告。
「……神宮寺。お前、顔が蕎麦色」
「……剛田こそ、鼻から一本出てる」
胃袋ははち切れ、一歩で大惨事。
蓋を閉めれば、この地獄は終わる。
「ここで……辞めたら、負けだ」
「意味が……不明だが、……同感」
二人は震え、最後の一杯を飲んだ。
鐘が鳴る。完食の合図が響いた。
だが景品の天ぷらが運ばれた瞬間。
油の匂いが、二人のトドメ。
猛ダッシュでトイレへと走った。
「……もう、引退だな、俺たち」
「……ああ、次からは、茶を飲む」
誓う声が、個室越しに重なった。




