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無駄な意地、地獄の赤壁
「無駄な意地」を張り続ける、懲りない男二人の物語です。
古びた中華屋のカウンター。
剛田と神宮寺が向き合っている。
目の前には地獄麻婆豆腐が二つ。
顔は赤鬼のように火照っていた。
滝のような汗が額から流れ落ちる。
「お前、最近丸くなったな」
神宮寺の一言が火種となった。
激辛の鬼と呼ばれた剛田の誇り。
一口ごとに喉が焼け、胃が叫ぶ。
だが、どちらもレンゲを置かない。
「……余裕だな。山椒を足せ」
「ふん、俺は白飯すら不要だ」
相手が折れるのを待つ沈黙が続く。
三十年の腐れ縁が邪魔をしていた。
ここで音を上げれば一生の恥だ。
結局二人は、揃って胃薬を買った。
「……何やってんだろうな、俺」
「全くだ。無駄な意地だってのに」
ひりつく唇で、二人は笑い合った。




