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第九話 鳥かごの中に羽はあるか

レオン「各自!!着陸態勢!!」


そう叫ぶと生徒たちはきれいに着地

私はウェルに抱えられ、着地できた。


戦場の中心、そこまで吹き飛ばされたのだ

誰に?


???「

――

祈りが足りん

――


戦場に、その言葉が流れる


マリア「教皇?」


教皇「グリーフェス神への祈りが足りん」


教皇は、空中に浮かんでいる

鋭い目つきでこちらを見ていた


そして、片手には


"開花の種"があった


空が、歪んでいた。


教皇は宙に浮かび、

まるで祭壇の上に立つ神像のように、こちらを見下ろしている。


教皇「魔王を倒した程度で、祈りが終わったと思ったか」


低く、響く声。

怒号ではない。

裁定を下す者の声だった。


教皇は、手の中の"開花の種"を掲げる。


教皇「ここを天国とする。――なんと甘美な言葉だろう」


マリアが、息を吸う音が聞こえた。


マリア「......あなたは、祈りを履き違えています」


教皇の眉が、わずかに動く。


教皇「祈りを、否定すると?」


マリア「いいえ」

マリア「私は――支配を否定しているんです」


その瞬間。


地面が、割れた。


黒い裂け目から、魔人が這い出てくる。

魔王が呼び出したものは、魔族、明らかに戦力差が明らかに違う。


教皇によって歪められた魔人たちが、敵意をむき出し、近づいてくる。


リグレッド「......数が、さっきより多いぞ!」


警備隊は、うろたえていた。

それでも、剣を構え、前に出る者がいた。


警備隊長「退きません」

警備隊長「これは......私たち自身の祈りの責任だ」


教皇が、薄く笑う。


教皇「よかろう。ならば――祈れ」


教皇の背後で、巨大な魔法陣が展開される。

教会、町、戦場。

すべてを繋ぐ、祈り――いや、支配の回路。


空気が、重くなる。


どれだけたっても、数は減らない

戦える者は、確実に減っていく。


もしここで、希望があれば...

そう思った。


ウェル「……お、おい、あれ……」


メロディア「う、うそ……」


レオン「……最悪だ」


目の前にいたのは、


魔族に豹変した、エミリーがいた


意識はない。

ただ、暴力のためだけに、そこに立っている。


周囲からも、悲鳴が上がる。


警備隊の一人「……あ、あれ……俺の、友人……?」


警備隊の一人「待ってくれ! 私だ! 目を覚ましてくれ!」


教皇は――

町の人間を、魔人に変えていた。


数十分後には、壊滅していた


攻撃できない警備隊

剣を捨て、祈り始める者さえいた。


生徒たちも、次第に動けなくなっていく。


ここは、


庭師「地獄だ」


教皇は、笑っていた。


マリアは、下を向いている。


マリア「……もう、いや、」


庭師「マリア……」


マリア「私、勘違いしてた」

マリア「私は、鳥かごの中にいるだけ。飛ぶための羽も、ちぎられていた」

マリア「……私は、飛べない」


私は、無意識に立ち上がる。


庭師「……今は、そうかもしれない」


庭師「飛べないかもしれない。ただ――君には、足がある」

庭師「たとえ醜くとも、這いずってでも、前に進むことはできる」


庭師「私は庭師だ」

庭師「土地も、根も、葉も、茎も、すべて整えた」

庭師「君のつぼみは、もうここにある」


庭師「“意思”という水をあげるのは――君自身だ」


彼女は、まだ。

羽を、持っていない。


それでも。


飛ぶための、土台はある。


マリア「私は、」


マリアの願いが、伝わってくる。


抵抗。

否――解放。


マリア「みんな、聞いて!」


戦場のざわめきが、わずかに静まる。


マリア「祈りは、もうない!!」


教皇の魔法が、放たれる。


眩い光。

破壊の奔流。


その前に、生徒たちが立つ。


レアンス「防御陣、展開!」


ルーティル「魔法、重ねるよ!」


リグレッド「来いよ……!」


光は、止まらない。

完全ではない。


レアンスの体を、貫く。

それでも――止めた。


マリアは、

神に祈らなかった。


ただ、手を伸ばした。


マリア「「信者たちよ――今、私に祈れ!!」」


その声は、戦場全体に届いた。


その瞬間。


マリアの背から、翼が生える。


黒く、

光を吸い込むほどの、漆黒の翼。


染められていたはずの髪も、

本来の色へと、戻っていく。


濁っていた空が、光が差し込む。


誰かが呟く。


「...神だ」


警備隊の盾が、光を帯びる。

生徒たちの魔法が、強くなる。

誰かの一撃が、魔人を貫く。


教皇の顔が、初めて歪んだ。


教皇「……何をした」


マリア「解放だ」


教皇は、開花の種を握りしめる。

脈打つ。

だが――応えない。


庭師「願いは聞き入れた。今はただ、マリアの願いのために」


教皇が、怒りに顔を歪める。


教皇「愚民どもが!!」


最後の魔力が、教皇を包む。

巨大な魔人が、形を成す。


――その隙を、逃さない。


リグレッドの斧が、

セオンの一撃が、

ルーティルの炎が、

カイの魔法が。


そして――

マリアの羽が。


教皇を、貫く。


魔人は、砂になって、消えていく


地に落ちた教皇は、仰向けに倒れ、空を見ていた。


教皇「……私は……神のために……」


マリアが、そばに立つ。


マリア「――お前に祈ってほしい神はいないさ」


教皇は、力なく笑い――

そのまま、動かなくなった。


静寂。


風が、戦場を抜ける。


ただ、

生き残ったことを、確かめ合っていた。


マリアは、漆黒の翼を広げながら空を見上げる。


私は、その背中を見つめながら、

日記帳を開く。


そこに、初めて――

**「開花」**という文字を書き記した。


開花の種を拾い、学校職員から渡されたボタンを押す。


周りを見ると、黒い羽が辺りを舞っている。

それは、けが人へ集まり、負傷部位を治している。


マリアの羽には、治癒効果もあった。

それでも、



徐々に砂になっていくエミリーを止めることはできなかった。



ルーティル「エミリー...」


ルーティルが一番仲良くしていたのだ、悲しむのも無理はない。

遠くからバスの音が聞こえる。


私たちは、次に乗らなければならない。

ずっと居たい。

そんな思いが通用するほど、世界は甘くない。

分かっている、だがこの力を込めたこぶしを発散する方法を知らない。


だから、私たちは


エミリーのため、このグリーフェスのため

――ほんの少しだけ、祈った。


そうして、バスに乗せられていく。


次の開花の種のために。

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