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第七話 人間の最後

夜気が、肌に刺さる。


祭司が剣を構えた瞬間、

それまでの穏やかな空気は、完全に死んだ。


エミリー「……お父さん?」


その声に、祭司――オルージは、振り向かない。


オルージ「どきなさい、エミリー」


低い声。

だが、そこに迷いはなかった。


リグレッド「ははは、様じゃねぇか」


リグレッドが一歩前に出る。


リグレッド「さっきまでの優しい爺さんはどこ行ったんだよ」


オルージは、ゆっくりと剣先を下げた。


空気が、重く沈む。


カイ「……来ます!」


次の瞬間。


オルージの姿が、消えた。


金属音。

剣が、リグレッドの斧とぶつかる。


火花が散った。


リグレッド「っ……!?」


セオン「速い……!」


リグレッドはうまく受け流す、だがオルージの力が強かったのか、体勢を崩してしまう。


オルージは、人間離れした動きで距離を詰め、

連続して剣を振るう。


レアンス「庭師様、下がってください!」


その言葉にはっとする。


次の瞬間には、オルージは私の前にいた。

鋭い銀色の刃に、月明かりがきらめく。

避けようとした、だが、躓いてしまった。

避けれない、体が硬直し、変な汗がでる。

目をつぶる。


だが、剣は一枚の盾で止められた。


レアンス「くっそ、腕がしびれるな。」


庭師「レ、アンス」


レアンス「考えてくれ!!あんたが管理役だろ!!」


そうだ、臆してはいけない。

これは命のやりとり、油断したら死ぬ。


ルーティル「ちょっとー。にわっちに何してるの!!」


ルーティルががら空きになったオルージに炎をとばす。


オルージは、避けなかった。


確かに当たっていたし、それなりに威力もあったと思う。

だが、オルージには効いていない。

そんな様子だ。

ルーティルの方を見ずに、私だけを見ている。


セオンが後ろから切りかかる。

だが、当たり所が悪く、かすり傷だ。


魔法組も応戦するが避けるそぶりを見せない。


固い、それに魔法に対して何かしらの耐性があるようだ。


庭師「みんな待て。多分、オルージに魔法は効かない。」


ルーティル「えっ!?」


祭司「...やはり、庭師さん。あなたは危険因子だ」


祭司は離れて、何かを高速で話している。

多分、魔法だ。


庭師「みんな、止めろ!!」


エミリーの方を見るが、動けていない。


リグレッドは先ほどの借りを返すかのように、斧を振り上げる。


祭司は周りの動きを見ながら、リグレッドの腹部に蹴りを入れる。

リグレッドは倒れ、辛そうに立つが、致命傷ではないようだ。


レオンとエマは同時に攻撃を仕掛ける。


レオンの刀は相手の致命傷に

エマのレイピアは腕に


エマのレイピアはかろうじて避けたが、レオンの刀はそうはいかないようだ。


しっかりと、祭司の肺に突き刺していた。


結論は見えていた。

十人の生徒と一人の祭司

先に限界がきるのは、祭司の方だ。


リグレッド「なんだ、もう終わりか?」


汗を垂らしながら、リグレッドは挑発的な態度を見せる


エミリー「やめて!!」


エミリーが前に出ようとする。


マリア「エミリー、止まって!」


マリアの声は鋭かった。


マリア「今の彼は、あなたのお父さんじゃない」


祭司がピクリと動く、


祭司「こんなところで、終われないですね。積み重ねた信用と、つかの間の平穏。私は、人間に、浸かりすぎたようですね。」


リグレッド「あ?なにをいって――」


オルージに近づいたリグレッドは私の後ろにいた

見えない速度で吹き飛ばされていた。


エミリー「お、父さん?」


祭司の体が変化する、紫色の皮膚、とがった角、そして、巨大化した刃先のような右手


レアンス「魔人...」


祭司「もういい、ここですべてを終わらせればいいだけなんだ。魔王様の右腕のこの私が、なぜこんなやつらに手間取っている。目を閉じればいいではないか。」


祭司は自問自答する。

カイが青い顔でこちらを見ている

逃げろという合図だろう


だが、体が動かない


オルージが、こちらを向いた。

気づいたときには手を振りかざし、間近に来ていた。


すかさず、レアンスが盾を構えるが、盾は先ほどの攻撃もあったからだろうか。

ボロボロに砕ける。

同時にレアンスは吹き飛ばされる。

オルージは、もう一度、手を振りかざした。


――歯を食いしばる。


剣がまじりあう音がした


エミリー「やめて!!」


エミリーが叫ぶ


その瞬間にも、生徒たちはオルージに攻撃する


だが、硬すぎる。

魔法は効かない。

物理もはじかれる。


私は、指示しかできなかった。

ただ、オルージと、必死に止めるエミリーだけが、目に焼きついていた。


夜明けの時、最後までたってられたのは、オルージとエミリーだけだった。


お互い満身創痍、肩で息をしている。


辺りが照らされるその刹那、オルージはエミリーに刃を向ける

エミリーは能力を使う、オルージはもう遅くならない。

エミリーはただ、まっすぐ見ていた。


剣を振り下ろす


オルージは、かわさなかった

極度の疲労でかわせなかったのだろうか。

日の光とともに血の飛び散る。


オルージは、近くにある木に、もたれかかる。


オルージ「...いやはや、強く、なりましたね」


エミリー「なんで、なんでこんなことしたの...?」


オルージ「...さぁ、魔人なので、わかりませ――」


エミリーはオルージに抱き着く


エミリー「いやだよ...魔人でも、私のお父さんだ...」


オルージは、静かにほほ笑む


オルージ「庭師、さん」


庭師「なんだ...」


オルージ「私は、魔人に見えますか?」


私は...


庭師「あぁ、」


肯定した。


オルージ「そう、ですか。やはり、そうですか...」


エミリー「まって、魔力を使わないで!!」


レアンス「魔人は、魔力が生命です。あの状態だと、じきに...」


オルージは、人間の姿になっていった。

下半身は砕け散り、砂になる。


庭師「...最後に聞きたい、なぜここで戦いを?」


オルージ「...娘を、戦いに行かせたい親など、いるでしょうか。」


エミリー「いやだよ、お願いだから...」


願い、その言葉に強く反応する


オルージ「あぁ、エミリー。来世が...人間なら...どれほど...しあわせ..か.」


オルージは全てが砂になり、空へはばたく。


エミリーは泣き崩れた。


そこには、ツバキの花が開いていた。


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