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やさしい不登校  作者: ゆずさくら


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4/8

あるクラスのトラブル

 放課後、宮藤(くどう)はいつものように万慈(まんじ)と一緒に帰ろうと声をかけた。

「万慈、支度できた?」

「ごめん、今日は先に帰ってて」

「帰ってて? って、何か同棲しているみたい」

 宮藤はからかったつもりだった。

 いつもなら、これに乗ってきて、妙な反論をするのだが……

「守秘義務があって、これ以上言えないんだ」

「万慈……」

 相当、まいっているようだった。

「先帰ってるけど、困り事があったら連絡してきてね」

「イヤ、だから守秘義務が……」

 宮藤はそっとしておこう、という気持ちになった。

 彼女はそのまま万慈を置いて、教室を出て行った。

 万慈は彼女がいなくなると、行動を開始した。

 廊下に出ると、教室を一つ一つ覗き込んでいく。

 二年の教室はまだ授業があるようだ。

 一年を見ると、教室の掃除をやっていた。

 万慈は、一年の教室に入っていくと聞き込みを始めた。

 掃除の進捗がそれぞれ違っていて、万慈は慌てた。

 全てのクラスから聞き込みを終えた。

「誰だ。誰が一年生に注意したんだろう」

 後日話を聞けるように、聞き込みをした生徒には名前を聞いておいた。

 万慈は一度、自分の教室に戻ると二年生の授業が終わるまでまった。

 そして、時間になると、二年生の教室を回り、聞き込みを始めた。

 二年の教室からは、有用な情報は得られなかった。

「第一段階としては、二年は対象外ってことになるな」

 万慈はメモに書き込むと、それをポケットにしまった。


 翌日の昼休み。

 万慈は花村と宮藤から、クラスメイトの顔写真というか画像を入手した。

「ねぇ、そんなのどうするの?」

 宮藤の問いに、万慈は最近多用する返事を繰り返した。

「守秘義務が……」

「もう、それしか言わない万慈なんて大キライ」

 宮藤は泣き真似をして、横目で万慈を確認するが、気にも留めていないようだった。

 そして集めた顔の画像を持って、教室出ていってしまった。

 姿が見えなくなると、花村と宮藤は徐に立ち上がって、教室を出ていった。

「よしこちゃん、どこに行ったのか、わかるの?」

 宮藤の問いに花村は答える。

「私の情報網を侮ってはいけない。万慈くんが昨日の放課後何をやっていたか、今日はどこにいくか、それくらいはわかちゃうんだから」

 花村につれられて校舎を歩いていると、万慈を見つけた。

「あっ、いた!」

 花村にすぐに口を押えられ、廊下の角に引き下がる。

「な、なによ」

「こっちが見つけたってわかったら、万慈くんの邪魔になるでしょ」

 二人は、万慈の行動をこっそりと監視することにした。

 彼は一年生の教室の戸口で、生徒を呼んではスマホの画像を見せていた。

「さっき渡した、うちらの顔写真だよね」

「それしか考えられない」

 問われた一年生が首を横に振ったり、縦に振ったり、何か話したりしている。

「聞きたい」

「がまんして」

 万慈は時折、メモを取ったりしている。

 時間が経って、昼休みも終わろうとしていた。

 遠めから耳をすましていると、万慈の声が聞こえてきた。

「……そう、この生徒だったんだね」

「けど、何かトラブルという訳では… 一緒に掃除をしていました」

「掃除ねぇ……」

 宮藤は、たまたま聞こえたその単語を、花村と一緒に考えた。

「掃除!?」

 首をひねる二人。

 花村と宮藤が一瞬、万慈から目を離した。

 視線を戻すと、そこに万慈の姿はなかった。

「!」

 驚いて周囲を見回すと、急に肩を叩かれた。

「何をしていた?」

「万慈!」

「守秘義務があるって何度も言ったでしょ」

 珍しく彼は怒っていた。

 宮藤はすまなそうに頭を下げた。

「ごめん。でも何も聞こえなかったし」

「……まあいいいや。もう昼休みも終わりだし、教室に戻ろう」

 三人は気まずい雰囲気のまま廊下を歩き始めた。

 教室につく直前、万慈が言った。

「先々週の月曜日って、何があったっけ?」

「……なんだろう?」

「どんなことが知りたいの?」

 万慈は何かを言いかけて、やめた。




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