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やさしい不登校  作者: ゆずさくら


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2/10

探偵登場

 無名崎高校の鈴木(すずき)万慈(まんじ)は、放課後、学校に居残っていた。

 彼は自らのクラスではない別の教室の椅子に座っていた。

 廊下を通りかかった女子生徒が、万慈の姿を見つけた。

 教室の戸口に上半身だけをのぞかせ、おさげ髪を揺らした。

「あら、万慈くん。今日面接なの?」

「ここに座っているのだから、そうだろう」

「えっ!? 万慈いるの?」

 もう一人の女子生徒が、おさげ髪の女子の上から顔だけのぞかせた。 

花村(はなむら)さん、宮藤(くどう)ちゃんと一緒だったのか」

「面接なら面接ってなんで言ってくれないのよ。万慈を待って教室でウロウロしてたら怒られちゃったわ」

「何を隠そう、俺自身も忘れていたから、言うことも出来なかった」

 二人の女子生徒は教室に入って、鈴木の近くにやってきた。

「今日が面接の最終だよね」

 始まったのは二週間前だから、半月かかって、全員分の面接が終わったことになる。

「まだこれからも面接するって言ってたぞ」

「一旦、全員分が終わるってこと」

 三人が、そんなことを話していると、教室の戸口からまた女子が中を覗き込んだ。

「?」

 ブロンドの髪を、綺麗に縦ロールし整えている、まさに『お嬢様』という風貌だった。

 彼女は白鳥(しらとり)(れい)と言う名で、三人と同じクラスの生徒だった。

「万慈くん?」

「いかにも俺は鈴木万慈だが?」

「ママ、いたわよ!」

 教室の外で、彼女が手招きすると、パタパタとスリッパの音が近づいてきた。

 その女性は、戸口から中を覗き込むと、渋い表情を浮かべた。

「あの冴えない感じの男子生徒?」

「そうよ…… けど、何回か、教室で起きた謎を解決しているの」

 万慈はスリッパの女性を見て言った。

「どこかで見たような気がするな」

 花村がメガネのツルを指で押し上げると言った。

「元超有名女子アナだから、いくら万慈くんでも見たことはあるでしょ」

「そうでなくてもPTA会長よ。様々な式典とかで顔を出してるから、そっちでも見てるかも」

 宮藤がそう付け足した。

 白鳥親子が教室に入り、万慈のところにやってきた。

 巻き髪ロングの娘とは違って、母はキリッとした印象のあるショートカットだ。

「探偵として依頼したいことがあるのだけど」

 急に万慈の表情が変わった。

「なんでしょう」

「皆さん、少し席を外してもらえるかしら」

 周囲の生徒が席を立ち、教室の外へと移動していく。

「あなたもよ」

 娘の玲も例外ではなく、出ていくよう促された。

 教室の外で、花村と宮藤が顔を見合わせた。

「……なんか今回は本格ミステリーの予感が」

「万慈に限ってそんなことはないわよ」

「そうよね。助手は静香だし」

 宮藤は花村をつついた。

「どういう意味よ。私だって本格ミステリーの雰囲気ぐらい出せるんだから」

「それより、どんな話しているか聞きたいわ」

 おさげ髪の花村が教室の扉に近づくと、扉が開いた。

「ご協力ありがとう。もういいわよ」

 白鳥の母と入れ違いに、花村と宮藤が万慈のところに駆け寄った。

「どんな依頼なの!」

 万慈はニヤリと笑って言った。

「守秘義務があるから、依頼に関しては一切答えられない」

「『守秘義務』なんてさっき知ったような状況でしょ?」

「だからどうだって言うんだ。とにかく言えないものは言えない」

 三人がわいわいと話をしていると、教室の外から呼び出された。

「おい鈴木。次面接だぞ」

 それを聞いて万慈は立ち上がった。

「じゃあ、行ってくる」

「私、ここで待ってるから、一緒に帰ろ」

 宮藤はそう言い、横に座っていた花村は万慈に手を振って別れを告げた。




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