白鳥
休み時間の度に、綿貫は友人に囲まれ、ちょっとした騒ぎになっていた。
一方で、万慈はずっと黙って考えていた。
白鳥と真壁、綿貫が本当に三角関係になっていたのだとしたら、身を引くことがすなわち学校に来ないことにつながるものだろうか。
昼休みまでの授業中、万慈は考え続けた。
恋愛という不確定なものに対して、学校を休む、ということでコントロール出来る事柄は非常に小さい。ただ、学校を休むという行為なら、それと気づかれにくい利点はある。
だが、学校に出てきて、自らの言動で他者二人の関係を恋愛関係に持っていく方が『コントロールしやすい』ように思えた。
白鳥の発言からも、彼女がどちらかに好意を寄せている感覚はない。
真意を読み取られたくない、ということかもしれないが、どちらにせよ、『綿貫』が欠席した結果とは考えにくい。
ではどんな理由で学校を休んでいたのか。
本当にイジメだとしたら……
万慈は一年生クラスを調べた時のことを思い出した。
学校を休み始める前日、綿貫は真壁と一緒に一年生のクラスで掃除をしていた。
それは一年生のある生徒がいじめられているかもしれない、と真壁が感じたから、綿貫を巻き込んでしたことだ。
その時、なぜ二人は一緒にいたのだろうか。
放課後であり、二人とも部活やクラブには所属していない。
出身中学は一緒だが、普段から二人が一緒に帰っていた様子もなく、その日の放課後、学校で一緒にいた理由にはならない。
「!?」
万慈は『あること』を思いついて立ち上がった。
机が揺れて、弁当をこぼす寸前だった。
宮藤が万慈の弁当をてで抑えながら、言った。
「どうしたの万慈?」
「いや……」
万慈は考えた。
ある内容がわかれば良いのだが、だが、それを誰に確認すればいい?
果たして生徒である俺に教えてくれるだろうか。
「し、白鳥」
万慈は教室を見回した。
白鳥を見つけると、万慈は彼女の元に行き、土下座をした。
「お願いだ」
「ちょ、ちょっと!?」
「俺の頼みを聞いてくれ」
教室で昼食をとっていたクラスメイトが、一斉に注目した。
「待って、こんなところでやめて!」
白鳥の声は、妙に色っぽく聞こえた。
「わかった外に出よう」
不安気に見つめる宮藤。
二人は廊下を歩いてひとけのない場所まで歩いていく。
「PTA会長の力が必要なんだ」
「……やっぱり」
彼女はスマホを操作して、通話状態になると万慈に渡した。
万慈はスマホを借りた白鳥から、距離をとって彼女の母と話している内容が聞こえないようにした。
話がつくと、彼は白鳥にスマホを返した。
「ちょっとだけ待ってくれ。PTA会長から折り返し連絡が来るんだ」
しばらくすると白鳥のスマホが振動する。
再び通話状態にすると、彼に渡した。
内容を聞くと、万慈は頭を下げた。
「ありがとうございました」
彼は通話を切ると、スマホを拭いて返した。
白鳥に頭を下げると、万慈はそのまま急いで職員室へと向かった。
職員室で、彼は担任の真岡に質問をした。
いくつかの質問に答えを得ると、真岡がパソコンを操作して内容を見せた。
彼は無言で頷くと、言った。
「急な申し出に対応いただき、ありがとうございます」
「お前からそんなセリフを聞くとはな」
先生は手際良くパソコンのウィンドウを閉じると、そう言って笑った。
万慈は職員室を出て、自分の教室に戻るまでの間で考えを整理した。
PTA会長にお願いをした時点で、彼はこの結果を予想していた。
だが、実際に結果が彼の思った通りとなった時、あまりに自身が冷静なことに驚いていた。
もっと予想が当たったことに対して高揚感があると思っていたからだ。
彼は教室に入る直前、深呼吸をした。
「万慈!」
教室に入ろうとしたところを、宮藤に呼び掛けられた。
「何してたのよ!」
「悪いがこれも守秘義務があってだな」
「白鳥さんと、何してたのかも言えないの?」
彼女は完全に怒っていた。
「彼女と何かした訳じゃない。ただ、スマホを借りただけだよ。信じて」
「……そ、それなら良いんだケド」
万慈は態度には出さなかったが、ほっと胸を撫で下ろした。




