表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やさしい不登校  作者: ゆずさくら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/14

心もよう

 学生服を着た男女が、橋の下で抱き合って口づけをしている。

 誰かに見られる、とは思っていないのだろうか。

 互いの顔しか見えない二人は、そのまま顔を寄せ合ったまま語りあっている。

 確かに死角ではあるが、流石に気づくだろう。

 鈴木(すずき)万慈(まんじ)は歩きながら、その男女が気づくまで見続けてやろうと思った。

「万慈、前見て歩かないと危な……」

 万慈の視線の先にいる二人に、宮藤(くどう)も気づいてしまった。

 顔を真っ赤にする宮藤を見て、万慈は橋の下を見続けるのを止めた。

「そう言えば、もう試験一週間前だな」

「えっ、そ、そうだったけ」

「授業が急に軽くなるから、試験前の一週間は好きなんだ」

 今度は、工藤がずっと橋の下の男女を見つめてしまっている。

「工藤ちゃん、前見て歩かないと危ないって」

「そ、そうね」

 ようやく、彼女も目を逸らした。

 万慈は考えた。

 真壁(まかべ)綿貫(わたぬき)

 二人の間にもう一人(・・・・・)いたとしたら?

 そう例えば女性だ。

 二人が、同時に同じ女性を好きになったとしたら。

 真壁と綿貫の間には、いじめを助けた側と助けられた側、と言う関係がありそうだ。

 関係のバランスを取るため、三角関係から綿貫が身を引く、と言うことはあり得る。

 もちろん、真壁には気づかれないように……

 万慈は笑った。

「これじゃ、あまりに単純すぎるか」

「なんのこと?」

「……学校を休んだからって、男女の仲が深まる訳ではないし」

 学校に来ると男女が仲良くなるイベントが盛りだくさん、そんな訳ない。

 宮藤は首を傾げながらも、言った…

「休んだら、心配になるよ」

「へっ?」

「万慈が学校を休んだら、心配になるよ」

 そうだ。男女が好き合う理由は、そんな簡単なものではない。

 そもそも好きか嫌いかは決まっていて、拗らせるか、進展するかしかない。

「俺は学校に宮藤ちゃんがいなかったら……」

 別の女子に目がいってしまうかも。

「ありがと」

「えっ?」

「な、なんでもない」

 この後、登校するまでの間、二人の距離は普段より近づいていた。

 宮藤は二人の仲が深まったと考えていたが、万慈の理由は、気まずさ故だった。

 学校に着くと、後ろから花村(はなむら)が話しかけてきた。

「いつものように幼馴染という距離感じゃないわね」

「おはよ」

「おはよう」

 花村はすぐに万慈の方を見つめてきた。

「何か?」

「万慈くん、真壁と綿貫のこと調べてるでしょ」

 鈴木がそれは『守秘義務』と言いかけたが、花村はお構いなしに話を続けた。

白鳥(しらとり)さんを二人が取り合ってる、っていう噂があってね」

「何を取り合うんだ?」

 万慈がピンときていないと、宮藤が言った。

「万慈は鈍いわね。恋愛の話に決まってるでしょ? そうなんだ、二人とも成績優秀だから白鳥さんの方は選ぶの迷っちゃうね」

「ねー」

 まさか。

 通学途中で見た男女を見て思ったことが、現実でも起きていたとは。

 万慈はさらに考えた。

 調査の途中でそのような気配はなかった。

 二人と白鳥が近しいのなら、もっと話題に上がっていても良さそうだが、何も上がってきていない。

 だが、そこが盲点だったのかもしれない。

「花村さん、それ誰が言っていた噂?」

「誰って訳じゃなく。授業、見てればわかるんじゃない」

「みんなが言ってるって感じ?」

 万慈の問いに、花村と宮藤が頷いた。

 彼も、黙って頷いた。

 教室に白鳥が入って来ると、万慈は彼女に駆け寄った。

「確認したいことがあるんだけど」

 彼は白鳥を教室の外に連れ出した。

「あのさ、白鳥」

 白鳥は廊下の先、階段近くの角を見つめて言った。

「そろそろ先生くるから、手短にして」

「じゃあ、簡単に。真壁か綿貫か、どっちかと付き合ってる?」

「……バカじゃないの」

 万慈は目を丸くした。

「噂じゃ、二人から求愛を受けているって」

「キュ? 求愛? 変な言葉使わないでよ。そんなの全くないから」

「じゃあ、一方的に好かれてるのかな? 二人と親しくもしてない?」

 白鳥は腕を組んで首を傾げる。

「確かに、二人には勉強を教わりに行くけどね。勘違いされるようなことはしてないつもり」

 男はそういうことでも勘違いする生き物だ。それは万慈の持論だった。

「白鳥からはそう思わないというんだね。じゃあ、どちらかを『ひいき』しているようなこともない?」

「……というか、綿貫が学校に来なくなる前までは、綿貫としか接してないけど。さっきも言った通り、『勉強を教えてもらう』だけだから。今は真壁に教わっているけど、綿貫がいれば、成績トップの彼に聞きにいくわよ」

「……」

 万慈は考える。

 もし真壁が一方的に白鳥のことを好きで、綿貫がそれに気づいたとしたら。

 身を引くために、学校を休むかも……

 待て待て、学校だぞ。単に男女の関係のことで、そんなことをするだろうか。

 万慈が頭を悩ませていると、階段の角に人影が見えた。

 そこを注視していた白鳥が、反応した。

「先生!? じゃない……」

「綿貫」

 万慈は自分で言って自分で驚いていた。

 えっ、登校してきた。

 なぜ、今。

「白鳥は驚くかもしれないが、鈴木くん、君がなぜそんなに驚く? 昨日顔をあわせたばかりじゃないか」

「いや、学校に来れない、と聞いていたのに」

 昨日の今日で、学校に来ることになった。万慈は一瞬、真壁の顔がチラついた。

 綿貫の意志ではなく、彼は真壁にコントロールされているのではないだろうか。

「学校に行ってもいい。そう思えたからさ」

「三人とも、教室に入って」

 その声は、担任の真岡(もうか)だった。

 万慈たちは、そのまま黙って教室に入って行った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ