表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やさしい不登校  作者: ゆずさくら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/8

プロローグ

 ここは無名崎(むめいさき)高等学校という名前の学校だった。無名崎という地名がついたものだが、そういう岬があるわけではなく、海が近いわけでもなかった。

 梅雨ということになっていたが、近づく夏を感じさせる暑苦しい日々が続いていた。

 二人の学生が、先生を呼びに行くため並んで歩いていた。

 いくつかの教室の横を通り過ぎた時、一人が立ち止まった。

惟月(いづき)どうした?」

 呼ばれた男は、通りかかった教室に入っていく。

「おい、君ら掃除当番なんだろ? 一人だけに掃除をさせておくなよ」

「……」

 彼の言葉に従い、掃除をしていなかった三人が動き出す。

 惟月が教室を出てくると、廊下を少し進んだ先で立ち止まった。

「えっ? まだなんかあるのか」

 彼は、さっき入った教室を覗き込む。

 一緒に中を見てみると、やっぱり一人に掃除を押し付け、他の三人は窓の方に体を預けているのが見えた。

 惟月は教室の戸口に立つと、言った。

「これから職員室にいくところだったんだ。この教室の担任に『いじめ』ってことで報告しておこうか?」

 窓際にいる三人は何も答えずに、惟月を睨んでいるだけだった。

 惟月は、俺に向かって言った。

「先生を呼んできて」

 教室の三人が声を揃える。

『ごめんなさい』

 一人がいう。

「先生に言うのはやめてください」

 惟月が言った。

「これは何がきっかけなんだ」

 三人が話し始める。

 かったるいから、適当に時間だけ待ってやったことにしよう、とした時に、掃除をしている子だけが反対したのだそうだ。だから、彼だけに掃除を押し付けて、残りの三人はサボっていたということだ。

「手伝うから掃除をしてしまおう。これはコツがあるんだ」

 そう言うと惟月と俺を含めた六人で、教室の掃除を始めた。

 手際よくやるコツなどを説明しながら、効率よく掃除を進めると思ったより早く掃除は終わってしまった。

「もともと彼をいじめていた訳じゃなくてよかったよ。掃除は、ウダウダしているよやったほうが早いから覚えておいてね。じゃ」

 惟月と俺は教室を離れ、再び職員室に向かった。

「ありがとう」

「おい、それは逆だろ? 勝手にあの教室掃除を始めたのはこっちなんだから、付き合ってくれたお前に『ありがとう』を言うべき……」

 違うんだ。

「お前、泣いてるのか? 変なやつだな」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ