ざまぁですって?! 面白そうですわ!~悪役令嬢はざまぁを楽しむ
このところ巷では『ざまぁ』というものが流行っているそうだ。
何でも『真実の愛』を育んだ男女が婚約者に悪行を突き付けて愛を貫くのだとか。
真実の愛に目覚めた男女は、自身の婚約者から愛を引き裂くために数々の嫌がらせ行為を受け、それが嫌がらせに留まらず、最終的には犯罪行為に発展するため、ざまぁをして婚約者を断罪するのだそうだ。
『ざまぁ』とは平民の中で使われていた言葉なのだそうだけど、最近ではそれが貴族の間でも密かに使われるようになっている。
というわたくしは『ざまぁ』なんて言葉は初めて聞いたのだけれど、この度わたくしがその『ざまぁ』をされるとの情報を掴んだ。
わたくしはミルトワ国のラクア公爵家の長女、『カリス・ラクア』。
わたくしには三歳の時に王家から打診されて婚約者になった方がいる。
『オスカー・ミルトワ』
ミルトワ国の第一王子にして、王位継承権第一位の尊いお方だ。
王族は尊ぶものとして教育されているため尊いと言ったけれど、心の中では『残念なお方』としか思っていない。
三歳から十八歳になった現在まで十五年という年月を婚約者として過ごしてきたけれど、彼の良さというものが全く分からないまま今日まできている。
勉強が嫌いで、じっとしていることが苦手だった幼少期のオスカー様は、わたくしが五歳からそれはそれは厳しい教育を受けている中、楽しそうに王宮内を駆け回り、勉強の時間も楽しそうにお絵描きをしたり歌い出したり、お菓子を食べながら聞き流していても全く叱られることはなかった。
わたくしが同じことをすれば折檻まではいかずとも鬼の形相で教師の方々に叱られるというのに。
「あなたは将来この国の国母になるのですよ。その自覚を持って行動なさってください」
物心がついてからは、この国には王子が三人いらっしゃるのだから、オスカー様が国王になるより第二王子の『ハロル・ミルトワ』様が王位を継いだ方が余程堅実的で国のためになるのでは? と思っていたけれど口にはしなかった。
オスカー様と年子の第二王子ハロル様は、オスカー様とは違って大変勉強熱心な努力家で、わたくしが教育を受けている時に度々一緒に勉強をしては
「カリス様に負けないように僕も頑張ります」
なんて愛らしい笑顔を浮かべながら可愛らしい言葉を口にされていた。
十七歳になられた現在ではあの当時の天使のような愛らしさはなくなり、凛々しくもあり、憂いを含んだなんとも蠱惑的な魅力も存在するため、ご令嬢方から過剰なほどに秋波を送られているのを知っている。
オスカー様はというと、兄弟であるのだからハロル様と似たお顔をされているのだけれど、どこか精悍さに欠けているし、少年のような笑みを浮かべるといえば聞こえはいいだろうけれど、はっきりいっていつまでも子供であり、自分に振り当てられた政務、執務すらこなせない残念なお方に成長されている。
そして、一年前から視察と称しては市井に足繁く出向くようになり、そこで知り合った平民女性と心を通じ合わせていると聞いてはいる。
けれど、王子であるオスカー様と平民女性が結婚などできるわけがないし、わたくし達の間にそもそも愛なんてものは存在していないためどうでもいいと放置していた。
そもそもわたくしにはやることが多すぎて、そんなことに目を向けている暇もなかった。
当然わたくしはその平民女性のことは何も知らないし、会ったこともないのだけれど、なぜかわたくしが悪事を働いて断罪されるそうなのだ。
「何それ……面白そうじゃない!」
報告を受けたわたくしは思わずそう言っていた。
それもそうだろう。
わたくしの毎日は平坦で、何一つとして楽しいことも刺激的な出来事も存在していない。
一日のスケジュールは分刻みで勝手に組まれていて、お花摘みに行く時間すら訝しがられるのだから。
不平不満を口にしようものなら
「国母となられるお方がそのようなことでは」
などと苦言を呈されてしまうため、黙々とスケジュールをこなすだけの日々をもう三年以上続けている。
そんな中で飛び込んできた何とも刺激的な情報に心躍るのは仕方がないと思う。
「それはいつ? どこでわたくしは『ざまぁ』されるのかしら?」
報告してきた我が家の諜報部員のマルロにそう訊ねると、マルロは呆れた顔でわたくしを見て、大きなため息を吐いた。
「お嬢様、なぜそのように嬉々としていられるのですか?」
感情を露わにするなと教育されてきたのに、思い切り感情が出てしまっていたようで、慌てて表情を正した。
「今更表情を改めても意味ないと思うんですけどね」
「それもそうね」
「はぁ……」
マルロには呆れられたけれど、これほど楽しそうな催しが起きるなんて、考えるだけで気分が高揚してしまう。
婚約破棄をされてしまうかもしれないことは……ちっとも残念でも悲しくも悔しくもない。
だって十年前から我が家はこの婚約を白紙にできないものかと何度も王家にお願いしてきているのだし、わたくしの自由が奪われている原因自体がオスカー様なのだから、婚約破棄されれば今よりもっとのんびり過ごせるのだから。
「ですけどね、断罪されてしまうと、あの王子のことですから、お嬢様は何もしていないのに国外追放やら処刑やらされてしまう可能性があるんですよ? お嬢様には危機感というものがないんですか?」
確か耳にした『ざまぁ』では、爵位が高ければ高いほど断罪の内容は厳しいものになると聞いたけれど、わたくしは実際には何もしていないのだから、何をどう言われても全て覆すことができる。
わたくしのスケジュールはすべて王家できちんと管理されていて、いつどこで何をしていたのかも全て記録に残っている。
王家に存在している『影』と呼ばれる者達が常にわたくしに張り付いているため、わたくしにプライベートなんて皆無なのだ。
「いるのでしょう? わたくしのこの一年の行動記録を持ってきてちょうだい」
影が潜んでいるであろう天井に向かって声をかけると、小さな返事が聞こえた。
「さぁ、来るなら来なさい!」
そう言うとマルロはまた大きなため息を吐いた。
◇◆◇◆◇
本日は隣国の王子『アッシャー・ステバリー』様を招いた立食形式の昼食会が開かれる。
情報によると今日のこの場でわたくしはオスカー様に『ざまぁ』されるようだ。
普段より手をかけて美しくしてもらったわたくしは、逸る気持ちを抑えながら、本来ならばエスコートしてくださるオスカー様の来訪もないまま昼食会に参加した。
昼食会とは名ばかりの歓迎パーティーであり、隣国『ステバリー王国』は我が国よりも大国であるため、アッシャー様とお近付きになろうとたくさんの家門の当主や、彼との婚約を狙うご令嬢方がたくさん集まっている。
『こんな中で「ざまぁ」なさるのかしら?』
真実の愛とは聞こえがいいけれど、結局は不貞であり、決して褒められた行為ではないのだし、それをこんなところで大々的に公表し、罪もないわたくしを断罪するという愚かさに気付いて……いるわけがないわよね、あの残念なオスカー様は。
行おうとしていることも残念だけれど、今はそんなことより、どうやってここで『ざまぁ』が展開されるのか、それにワクワクしている自分がいる。
アッシャー様にはご迷惑をかけてしまうかもしれないけれど、一種の楽しい余興だと思っていただけたらいいのではないだろうか?
『何より断罪されるわたくしが楽しみにしているのだから、周りの方々も楽しんでくださるのではなくて?』
そんなことを考えながら、いつ来るのだろうと待っていると、会場の中心で大声が轟いた。
「カリス・ラクア!」
わたくしの名が呼ばれ、声の主からわたくしまでの人の壁が綺麗に割れた。
『まぁ! 見事に人垣が割れましたわ!』
そんなことにもわたくしの心は踊ってしまう。
娯楽に飢えていたのだなぁとつくづく思う。
「カリス! お前との婚約は破棄する! そして俺は、この『リリ・ペペロ』と新たに婚約を結ぶことをここに宣言する!」
『ついに始まりましたのね!』
いつもは淑女教育の賜物としての作った笑みを浮かべているけれど、今日は心からの笑みが浮かんでいるのが自分でも分かる。
『ここはどうお答えするべきかしら? 「謹んでお受けいたします」が妥当なのかしら? それともオスカー様は泣いて縋り付くことをご希望かしら? でも、泣いて縋り付く情など持っていないのよね』
わたくしの言葉を待たずしてオスカー様はわたくしの罪を並べ始めた。
・リリ様の生家に圧力をかけた。
・リリ様の職場に圧力をかけた。
・リリ様を暴漢に襲わせ純血を散らそうとした。
大まかなところでこの三点。
全く身に覚えはないけれど、オスカー様がリリ様のことを全くご存知ないのだということは分かった。
「少々よろしいですか?」
『せっかくの楽しい催しなのだから、わたくしもめいいっぱい楽しませていただきますわよ』
「今更言い訳しても遅い! だが、反論があるというのなら聞いてやる!」
「言い逃れはできないぞ!」と言わんばかりの顔でオスカー様が発言の許可をくださったので、わたくしは遠慮なく口を開いた。
「リリ様の生家ということですけれど、それは『娼館』ということで間違いございませんか?」
「は? なっ?! 娼館?!」
やはりご存知なかったようである。
わたくしはこの日までにリリ様に関しての情報を集めている。
別に隠しているわけではないようなのですぐにその生い立ちや生活環境は把握できた。
「リリ様は幼い頃にご両親と死別され、孤児院で過ごし、成人してからは『愛の巣』という娼館で働いておられます。もちろんオスカー様もご存知ですわよね?」
真実の愛で結ばれたお二人にぴったりな名前の娼館である。そこで愛を育まれたのだろうか?
「現在お住まいの場所もその『愛の巣』ですので、わたくしがその娼館に圧力をかけ、お仕事を妨害した、ということで間違いございませんか?」
周囲のざわめきが大変なことになっている。
きっと皆様、この催しを楽しんでくださっているのだろうと思うと、もっと立派にやらねばという使命感すら生まれてくる。
「リ、リリ……どういうことだ?」
オスカー様は何やらショックを受けたお顔をされているけれど、リリ様はわたくしを怖い顔で睨んでいる。
愛の巣の一番人気の娼婦というだけあって、顔はもちろん妖艶な色気を感じるけれど、その肉体は官能的といえばいいのか、とてもよく発育されている。
上から二番目までのボタンを開けた木綿のシャツからはたわわなお胸の谷間が、シャツの隙間からこぼれ落ちそうなほど見えているし、体に沿うようなピッタリした短いスカートを穿いているため、お尻の形まで丸分かりだ。
淑女は無闇に肌を晒してはならないと教育されてきたけれど、あれを見るとそんな教育が馬鹿らしく感じてしまう。
「わたくしがリリ様のお仕事を妨害すれば、当然リリ様は客が取れなくなる。つまりはオスカー様以外の殿方のお相手ができなくなる、ということになりますから、別にリリ様もオスカー様もお困りにならないのでは?」
むしろオスカー様にとってみてはその方が都合がいいのではないのだろうか?
それとも、リリ様が他の殿方のお相手をすること自体、お二人の愛のスパイスになっていたのかしら?
わたくしには理解できないけれど、嫉妬で燃え上がる愛というものもあるようだし、愛の形は千差万別、人それぞれあるのだろう。
「オスカー様はリリ様を養うだけの甲斐性を持ち合わせておらず、娼婦の仕事をさせなければならなかった、というわけではございませんわよね?」
悪役令嬢らしく嫌味を言うことも忘れない。
『どうかしら? わたくし、悪役令嬢という役柄を立派に演じられているかしら? 観客の皆様は楽しんでいただけているかしら?』
周囲の反応が気になるところだけれど、あまり周りをキョロキョロ見渡すこともできない場面だから我慢する。
『オスカー様の追撃が欲しいところだけれど』
肝心のオスカー様はリリ様を見つめているばかりでいまいち盛り上がりに欠けている気がする。
愛し合う二人なのだからどんな場面でも二人だけの世界に浸りたいのかもしれないけれど、そういうことはこの催しが終わってから存分にすればいいのに。
「それから」
「ま、まだあるのか?!」
わたくしが口を開くと、オスカー様は戸惑った様子でこちらを見てきた。
まだも何も、これ程度で終わってしまったら消化不良で胃もたれを起こしてしまうのでは?
「わたくしがリリ様の純潔を奪うために暴漢に襲わせた、ですか? その件についてですが、リリ様は娼館で働き始めた翌日、つまり十五歳の時には純潔を散らされております。お相手は、某男爵家のご当主で、現在も月に数度通われていらっしゃるとか」
そのご当主もこの昼食会に来ておられるので、もしも可能であれば挙手でもなさってくださればこの場面が更に盛り上がるだろうが、残念ながらそこまでの勇気はなかったようだ。
「お二人が知り合いになり、愛を深められたこの一年間のわたくしの行動は、全て王家により管理され、分刻みのスケジュールを組まれ、記録されておりますので、それをご覧いただければわたくしが潔白であることは簡単に証明されますわ」
一年間の記録ともなるとかなりな量になってしまったけれど、抜かりなく用意してきている。
スッと現れたマルロに分厚い紙の束を渡され、それをオスカー様の元へと届ける。
「こちらがその記録にございます。あぁ、わたくしが人を雇って、などと言われてしまえばそのようなものは意味をなさなくなってしまうでしょうけれど、わたくし、愛し合う二人を引き裂くような趣味はございませんし、嫉妬に狂うほどオスカー様をお慕いしておりませんし、婚約の白紙は前々から王家の方にお願いしておりましたから、言っていただければ喜んで白紙に戻しましたのに」
手渡しながらそう告げて今までにないと自分で思えるほどの笑みを浮かべると、オスカー様が口をパクパクとさせた。
その様はステバリー王国で一度だけ見た『鯉』という魚が餌を乞う時の姿に似ている。
『さすがオスカー様! そのようなひょうきんな顔をして笑いを取ろうとされるとは!』
オスカー様がそこまでしているのだから、わたくしも悪役令嬢としてもうひと踏ん張りしなければならないだろう。
「わたくしは日々、本来であればオスカー様が行うべき執務を行いながら、まだしなくてもいいはずの王太子妃としての執務も割り当てられているためそちらもこなし、王太子妃としての教育も受け続けている身でございます。睡眠時間は一日三時間、移動の時間でも仕事をし、お花摘みに行くことすら訝しがられ、食事中も書類に目を通し、馬車馬のように働かされております。オスカー様の恋路の邪魔をする時間があるのならばその時間を使って眠りたい、たまにはのんびり読書を楽しみたい、そう思うのですけれど」
『さぁ、ここでオスカー様からの反撃が来ますわよ』
と思ったのだけれど、オスカー様はリリ様を見つめるばかり。
「な、何をしている!」
そこへバタバタと複数の足音がして、血相を変えた国王陛下と王妃様が登場した。
「馬鹿者が! お前は何てことをしているんだ!」
わたくしが叱られるかと思ったら、陛下はオスカー様を叱っている。
いつもは何かあるとわたくしを叱る王妃様もオロオロとするばかりで何も言ってこない。
『思っていたようには進みませんわね。この催しの脚本を書いた方は三流の作家と言わざるを得ませんわね』
オスカー様が考えて書かせたのだろうが、あまりにもお粗末すぎる。
「大丈夫?」
いつの間にか右隣にはハロル様が、左隣にはアッシャー様がいて、わたくしを労わるように見つめていた。
「楽しんでいただけました?」
思わずそう訊ねると、二人は「え?」と目を丸くしてわたくしを見た。
◇◆◇◆◇
わたくしは今、王宮内の庭園にある四阿でお茶を楽しんでいる。
なぜか、国王と隣国の王子に挟まれて。
「しかし、カリスがあれを劇として悪役令嬢を演じようとしていたとはね」
あの日のことを思い出したのか、アッシャー様が声を上げて笑い始めた。
わたくし、『ざまぁ』されるのだと知ってから、自分がいかにその状況を楽しむかを考えすぎた結果、いつの間にかわたくしの中であの『ざまぁ』がぶっつけ本番の劇であるという考えにすり変わってしまっていて、演技に夢中になり、本当に断罪されようとしているのだということを忘れてしまっていたのだ。
「も、もう言わないでくださいまし。思い出すだけで恥ずかしいのですから」
もっと盛り上げなければというなぞの使命感で動いていた自分が恥ずかしくてたまらない。
「毅然とした姿に、さすがだと関心さえしたんだけどね」
ハロル陛下が笑みを浮かべながらこちらを見ている。
あの後、様々なことが動いた。
わたくしがやらされていた執務はオスカー様のものだけに留まらず、国王陛下が本来行うべきものや、王妃様が行うべきものも存分に含まれていることが判明したのだ。
そうして空いた時間で陛下も王妃様も好き勝手に遊び呆けていたそうで、国庫にも手を出していたことまで判明した。
それを告発したのはハロル様で、あの昼食会には国内のほぼ全てといっていいほどの貴族が集まっている上に、ステバリー王国の王子であるアッシャー様もいらしたため、国王といえどももみ消すこともできず、陛下は王位を退くこととなり、現在は辺境の地にある王家管轄の別荘で王妃様と二人でお過ごしになっておられる。
王家の堕落し腐敗した実態を晒したハロル様がまだお若いながらも王位を継ぎ、王家の膿だけではなく、国中の膿を出し切ると、若い勢力を率いて奮闘なされている。
アッシャー様は我が国に留学と称して留まっておられ、現在は王宮の一室を借りてお過ごしになっている。
わたくしは無事にオスカー様との婚約もなくなり、これから自由に過ごそうと思っていたのに、連日王宮に呼ばれ、こうやって、現国王であるハロル様と、隣国の王子であるアッシャー様と三人でお茶をしたり、散歩をしたりしている。
オスカー様はというと、ハロル様の計らいでリリ様と添い遂げることが許され、現在は平民となり市井で暮らしている。
「俺は騙されたんだ!」
そんなことを仰っていたけれど、少し調べれば分かることなのに、それで「騙された」なんて言い訳にもならない。
王家の血筋を市井でばらまかないようにと種無しになってしまわれたけれど、真実の愛で結ばれた二人ならばそんなことは些細なことだろう。
「ところで、一体いつになったら僕達の気持ちに気付いてくれるのかな?」
アッシャー様がわたくしを見つめながらそう仰った。
「どちらが選ばれても恨みっこなしだと協定を結んだんだよ」
ハロル陛下がわたくしの髪を一房のすくいながら妖艶な笑みを浮かべている。
「ちょ、ちょっと待ってくださいまし! これは、その、あの……お二人はわたくしのことを、その……」
その先が言えずに言い淀んでいると、二人が真っ直ぐわたくしを見つめて「そういうことだよ」と頷いた。
「早く僕を好きになってよ、カリス」
「君を誰にも譲る気はないよ」
熱のこもった瞳で見つめられ、わたくしの頭は爆発しそうになっているし、心臓が耳に移動してきたのではないかと思うほどうるさく音を立てている。
「わ、わ、わ、わたくしには、選べませんわぁぁ」
そう言ったわたくしを、お二人はとても幸せそうに見つめている。
わたくし、これからどうすればよろしいの?!
誰か教えてくださいまし!