Vsリザーマン〜初めての実戦〜
俺が朝起きてすぐに眠気眼を開く為に水場で顔を洗っていると、ノックが聞こえた。
「はーい?」
「リク!おはよう!朝食済ませたら冒険者ギルドの裏に来て」
「え?あ、あぁ…も・・・もしかして?」
「実戦始めるよ!」
宿から近いパン屋で朝食を済ませた後言われた通りに冒険者ギルドの裏へと向かうと、アニーとセフィーが待っていた。
「来たね、リク」
「ヨッ!おはよう!リク!」
「アニーおはよう。で、実戦って何と戦うんだ?セフィー」
「あれを見て」
「ん?」
セフィーが指差すとその先にリザーマンが歩いていた。
※リザーマン………てんとう虫型の魔物
「このリザーマンを5体倒す事が今日の実戦ね」
「これって、あっちのリザーマンと同じ強さなんですよね?」
「さあ?」
「俺食い殺されないかな…?」
「大丈夫、今のリクなら躱しきれるよ」
「そ、そうかな〜?」
リザーマンは表世界では弱い部類の魔物だった。どれくらい弱いかと言うとレベル10の人間でも一人で討伐出来る程の巨大なだけの虫だったが・・・。果たしてこの世界では?
「はい、これ」
「おっと!」
セフィーが投げた物をキャッチする。それはバスタードソードだった。
「普通のバスタードソードだよ。持ってきた特大剣今のリクじゃ使えないでしょ?それなら筋力値100から扱えるから」
「ありがとう」
「それを使って、リザーマンを倒して」
俺はリザーマンにソロリソロリと近づきリザーマンは俺の気配に気づかず。狩ったネズミをムシャムシャ食べている。リザーマンの弱点は頭部だ。俺は剣を振り上げ食事を堪能しているリザーマンの頭に向かって勢い良く剣を振り下ろした。
瞬間、リザーマンは俺に振り向くと口を開けて俺に向かって火を吹く攻撃を繰り出した!
「え!?あっ!熱ッ!!!!」
驚きながら俺は咄嗟に数メートル後ろに後退した。
「あ、そう言えば言い忘れてたけど、こっちのリザーマンは火吹くから」
「それは早く言いなさいよ!!丸焦げになる所だったじゃない!!
「別に受けなきゃ良いだけだし良いかなって!」
「なんて楽観的…」
「ほら、油断しない」
背後からブォォォォンという羽音が鳴っている振り向くと俺に敵意を向けたリザーマンが噛み付き攻撃を喰らわそうとしていた。ガシィィイ!俺は下にしゃがむ事でその攻撃を躱すとリザーマンは再び横顎を大きく開き炎をしゃがんでいる俺に向かって発射した!
「うわちちち!!!!」
俺はしゃがんでいる体勢をバネにすることで後方宙返りすることでリザーマンの口から飛び出た火炎放射をギリギリ躱した。
「火!服についた!あちぃふーふー!!」
ギリギリ服に引火していたから慌てて叩いて息を吹き掛け鎮火させる。だが、そんな動作をしてる途中で飛んできたリザーマンが俺の顔に向かって前足の爪で斬り裂こうと向かってきている。
「うわわわっ!!」
俺はリザーマンの前足で斬り裂く攻撃を間一髪で躱すと前足の矛先が地面へと向かいそのままザクッッと地に刺さった。地に刺さった自らの前足を引っこ抜こうとするリザーマン。その隙を見て俺はバスタードソードを振り下ろした。
「ギュイー!!」
振り下ろされたバスタードソードによりリザーマンは頭部と胴体で真っ二つになり、
青い血を吹き出しながら倒れた。
モワモワと魔霧が死んだばかりのリザーマンから漏出される。
俺は魔瓶の蓋をきゅポンっと開いてリザーマンの魔霧を中に吸い込み蓋を閉める。
「ね?意外とやれそうでしょ」
「ま、まぁ………」
くそぅ!!仮想戦闘の経験がさっそく活きたのかもしれないが何だか俺がセフィーの手の上の様で悔しい…!
でも、不思議と思ってたより恐怖は感じない。
こっちの魔物はあっちの魔物より数段強いって話だったけど。
・・・たまたま弱個体を引いたのだろうか?残りの4体も弱個体だと良いのになぁ・・・。
「てな、訳で次はもっと強い個体討伐してみよっか」
セフィーは言うと魔杖を取り出して木の上に光線を放つと木に張り付いてるリザーマンに当たった。
「おぃぃぃい!!!何刺激してんのぉおお!!??」
「私じゃなくてこっちの人〜」
「俺に矛先を向けるなあああ!!」
リザーマンは俺らの方に顔を向けるとセフィーが俺を指す。
指に釣られて敵意を明確に俺へと向けたリザーマンは一直線に飛び掛って来た。
「で、何で俺に向かって突っ込んで来るんだよおおおお!!!攻撃したのはあっちでしょおおお!!!」
絶叫しながら俺は怒るリザーマンから全速力で逃げた。
走りながら振り返ってリザーマンの姿を見るとさっき倒したリザーマンの三倍くらいの大きさだと分かった。しかも目が青く光っている。
そのままグルグルと逃げ続けていると、音を感じ取ったのか他のリバーマンも飛んできた。
「キューイ!!!」
青目のリザーマンが鳴くとやってきた二体のリザーマンが俺の目の前に飛んで来て逃げ道を塞いだ。
「マジ…?」
背後が熱くなった。迫っていた青目のリザーマンが炎攻撃を放とうとしているのだろう。
「このぉ!!!」
俺は逃げ道を作る為噛み付こうと飛び掛るリザーマンに向かって剣で思いっきり薙いだ。
俺はそのまま切断されたリザーマンの鮮血を浴びながら前方に飛んで背後で放たれた炎攻撃をギリギリ回避する
片手を地に着いてから背中で受け身を取って膝で勢いを止めて体勢を整える。
ブォォォォン!だが、横から向かってきた5匹目のリザーマンが俺の左腕を噛んだ
「いだぁ!!!!」
鋭い横顎の牙が右腕を貫き牙を引っこ抜くと腕から大量に流血し出した。
「これ以上は、ダメ!!」
再度噛み付こうと口を開くリザーマン目掛けて俺は右手に持った剣を振り下ろした。斬られたというよりも叩き潰されたと言うのが正しい形で5匹目のリザーマンも倒れた。息を着く間も無く青目のリザーマンが襲いかかってくる、俺は目の前で炎を発射させようとしている青目リザーマンの口に目掛けて大剣で力いっぱい突いた。
「ふんす!!!!」
炎の発射と突き攻撃の速度はほぼ同時だったが口に刃が突っ込まれた事により発射寸前の炎が消えた。というより体内に強制的に戻されたようだ。
「ギュガガガ!!」
口に剣を刺された青目のリザーマンは激しく羽根を震わせながらジタバタと足掻いている。
「これまず…っ!?」
…パアアアアンッッ!!!!
強制的に体内に戻された炎に耐えきれ無かったのだろう
青目のリザーマンは爆発した。俺は後方に吹っ飛ばされると大木に身体をそのまま打ち着けズルズルと地面に倒れた。
「リク!!!」
セフィーが俺に向かって駆け寄ってくる。
「ハァ・・・ハァ・・・もっと早く駆けつけても良かったんじゃない?」
「それじゃリクの為にならないでしょ」
「相変わらずのスパルタ……」
「何よ、噛まれた所、治す為に来てあげたのに。治さなくて良いの?」
「ごめんなさい、治してください」
俺はスッと負傷した片腕を差し出すと同時に大事なことを思い出す。
「あ、まずい・・・。ポッケ開けてくれない?」
左腕を負傷していて魔瓶の蓋を開けないから代わりにやってくれという俺の訴えを察したセフィーがポッケから魔瓶を取り出し蓋を開くと周りに散らばったリザーマンの死体から漏出していた魔霧が瓶の中へと吸い込まれた。
「これで良しと」
セフィーは魔霧が全て吸い込まれた事を確認すると、きゅキュッと瓶の蓋を閉じた。
「ありがとう。もし瓶に入れ損ねたらと思うとゾッとするよ……」
魔霧は空気中の滞留期間が短くすぐに溶け込み消えてしまう。
溶け込んだ魔霧はもう魔瓶の蓋を開いても吸い込めない為回収不可能になってしまう
だから
溶け込む前に速く魔瓶に吸収しなければならないんだ。
「さ、治すから傷口見せて」
俺はリザーマンに噛まれた左腕を再び差し出す。
「ちょっと痛いよ〜”イシェルテ”」
「い”っっ!!」
セフィーが傷口を触ると傷口が刺激され激痛が走った。傷口に向けて魔杖を指すと治癒魔法を唱えた。すると、魔杖の先から出た白い光が傷口を覆い最初は痛みが走ったままだが少しずつ楽になって行ってる気がしていると、見る見ると傷口が塞がって行き15秒程で完治した。
「ほっ………しっ・・・死ぬかと思った…」
「御三方ー!リザーマンの羽音が聞こえたノコだけど大丈夫ノコかー?」
冒険者ギルドの裏口からルドが現れた。
「あぁ、ルド!リクが実践のためリザーマンを狩ってたの」
「なんだ〜だから昨日この付近で最弱の魔物をボクに聞きに来たノコね〜」
「おっす!」
俺は大木に持たれ掛かりながら近寄って来たルドに声を掛けた。
だが、ルドは俺の血塗れの姿を見ると
「り、リクさあああん!!!ど、どどどっどーーーーしたノコかあああああ!!!???」
尋常じゃない程の勢いで動揺してしまっかと思えば、
「あ、もう傷は塞がってるから大丈…」
「あ。」
ルドには「血」は刺激が強すぎたのだろう
「きゅーーー」と口から漏らすと白目を向いて倒れてしまった。
いや、「血」に弱くてよく冒険者ギルドの受付人勤めてるなこの人・・・いや……動物か?