勇者リク、逃げる②
セフィー「あ!!!いた!リクーーー!!!」
「セフィー?なんで・・・?」
セフィー「だって、急にリクが飛び出しちゃうんだから!アニーと急いで探しに行って、そしたら森の方からリクの叫び声が聞こえたから」
アニー「声を頼りに森の中まで掛けて来たっつーワケだ。つーか、神様と話ってなんだ?急に...」
2人は真っ二つになった獣の死体と剣を持った青年の存在に気づいた。
セフィー「この魔獣もの凄く濃い魔霧を持ってる。もしかして、リクが倒したの?」
アニー「いや、斬り跡的に彼が倒したんじゃねえか?」
「お前、リクと言ったな」
二人を無視して青年は俺に目を向け問い掛ける
「まだ、お前は続けるのか?それを」
「あぁ、わかってるよ・・・!」
「すぅぅぅぅぅぅ………………はああああ…………………」
アニー「?」
セフィー「?」
「しょ…正直に言うわ…。まず、この魔物を倒したのは俺じゃなくて彼、だって・・・」
セフィー「だって?」
「俺、ギャラクシーウェポン使って強くなってただけで本当の実力は並以下の勇者見習いなんだもん!!!!」
俺の懺悔が森中に木霊した。
セフィー「え・・・?何を...言ってるの・・・?」
「いや...だから 俺 ギャラクシーウェポン使って強くなってただけで、本当は並の勇者以下の強さなんだ!!!」
セフィーとアニーは顔を見合わせる。
アニー「おい、なぁリク?お前、疲れてるんじゃないか?だから、そんな突拍子もねえ事口走ってるんだよな?そ、そうだよな?」
心配そうな顔で俺を見るアニーに対して俺は首を横に振った。
「ごめん、アニー。本当の事なんだ」
セフィー「じゃ、じゃあ、今までのも全部リクの実力じゃないってこと?魔王を倒した一撃も四天王を打ち倒した剣撃も、全部?」
「うん、俺の実力だけじゃセフィーの魔法支援があっても魔王というか配下の魔物すら倒せなかったと思う。」
セフィー「・・・ッ!?」
アニー「マジかよ...」
アニーとセフィーは唐突な俺のカミングアウトに絶句してしまった。
「だ…騙そうとしてたワケじゃないんだ…本当は魔王を倒せばそこで終わりって思ってたから…その後にカミングアウトをと・・・そしたら裏世界に飛ばされちゃって言うタイミングを逃してしまったと言うか・・・」
セフィー「じゃあ、なんで私達の前から飛び出したんだ?隠すつもりがないのなら、どうして逃げようとした?」
「そ…それはー…ですね…」
セフィーの顔から表情が消え、無表情のまま俺に話続ける。
セフィー「そもそも、騙すつもりは無かったと言うが…前に言ってたな?自分の力は激しい鍛錬により修得した力だと…あれは、つまり…私とアニーに嘘を言っていたという事になるが?」
あ〜…そういえば、そんな事言って誤魔化したんだっけ?ブラックデーモンの群れを一撃で一掃した時に…「そこまでの力一体どうやって?」…なんて聞かれた時にそう言って押し切ったんだっけ・・・。
つーか、よく押し切れたな?あの時・・・。
納得する方も納得する方だぞ…鍛錬だけじゃあ、大剣の一振りだけで300体の魔物の群れを跡形もなく消し飛ばす程の威力の光破、普通出せません。だせ…ないよね・・・?
なんて思いながらセフィーの顔を見ると、無表情で話していたセフィーの顔に表情が戻ったかと思えば・・・
セフィー「ねぇ、どうなの…?リークー?」
そう俺に重ねて聞くセフィーの声色は優しげだけど、裏には怒りを感じ、顔には穏やかな微笑を浮かべているけど、裏には修羅が見える。そう、俺にはわかる、ここで失敗択を引いたら、俺の人生は正真正銘、ここで終わると…!!それぐらいセフィーさんはマジギレ状態だと…!!!
「い、いやあ…えーと…そのー…ほんっっっとうにごめん!!!!!!」
怒ったセフィーに気圧されて俺は思いっきり地面に額をぶち当てて土下座で謝った。
下げたまま恐る恐るでアニーの方を見ると。
アニー「そりゃ・・・ないぜ?リク・・・」
悲しそうな瞳で俺を見ていた。
グアッ!?そんな目で見ないでくれ!アニー!!心が!心が、痛いーー!!!
「そんなつもりはなかったけど結果的に2人を騙しちゃったワケだし、俺はこのままここで魔獣の餌にな...」
謝っている途中で俺の額にパチンコ玉で打たれたような鈍い衝撃が走る。
「いでっっっ!?」
下げてた顔を上げると目の前には俺の額に人差し指を触れるセフィーの姿があった。
セフィー「バカね、そんなの、もっと最低よ」
アニー「ああ、勝手に野たれ死ぬなんてぜってえゆるさねえからな」
「え...、でも...」
セフィー「黙ってた事を許すわけじゃないわ。でも、リクが私達と冒険していたのはGXウェポンのおかげであったろうと私達がリクと冒険した事実は変わらない」
アニー「そうだな、ガラクシー?がなんだがわかんねえけど、実際お前がいなけりゃヤバかった時、何度もあったしな」
セフィー「私の元いた隊を半壊した大魔獸に殺されそうな時に救ってくれた時もあった。それがウェポンによる偽りの力だったとしても私を救ってくれた事は真実。そんな仲間を今さら見捨てれるワケないじゃない」
2人は、やれやれしょうがない奴だな。という表情で正座しながら申し訳なさそうにしている俺を見下ろす。
それにしても今までGXモードで強くなってた事を黙ってた俺を仲間だから救ってくれたという理由だけで、見捨てないと言ってくれるコイツら心が清すぎないか?涙がちょちょ切れてしまうわ(涙)
とはいえ。とは言えだ。
「そ、そう言ってくれるのは嬉しいんだけど...俺、絶対に魔獸と戦ったら殺されると思うんだけど…?」
セフィー「じゃあ、どうするの?私とアニーと同行するなら、戦いは避けられないとおもうのだけど」
「なら、俺等ここで別れないか?ほら、俺がいても足手まといってことだろ?よーするに、俺ここで宿借りて何かしらの職見つけてのんびり暮らすよ」
このまま冒険を続けても育成校時代の
強さに戻ってしまった俺は確実に何処かで野垂死ぬ。
それは…ゴメンだ。・・・かと言って育成所時代の地獄の特訓をしてまで強化するのはもっとごめんだ。
ほら、一応根本というか本体は倒せてないにしても、表世界の魔王は倒したんだし…勇者としての努めは果たしたって事で俺は戦線離脱しようと思う。
生活費も今の所は表世界で稼いだコインが大量にあるし・・・。
「本当にそれで良いの?」
「良いよ」
「待て、宿を借りると言ったか?コインだけではこの街で宿は借りれないぞ」
職業が無いと宿を借りれないタイプの街か、確かに表世界ではそうゆう決まりの街はあったけど、それなら商人職にでも就職すりゃいいだろ。コインで売れそうな商品でも買えば…。
「職業が必要なら商人職になって物を売るよ」
「商人職はこの街では宿を取れないぞ。
この街で宿を取れるのは原住民か冒険者ギルドで冒険者登録している者だけだ」
「えー!?てことは転移した人間は冒険者ギルドに登録しなきゃ生活出来ないのか…」
「当然だ。そもそもお前たちは表世界から魔王を倒して転移して来たのだろう?」
「それなら、もうお前たちが取る行動は決まってるんじゃないか?」
「まずはルドちゃんの所に行って事情を説明するしかないよ」
セフィーと剣の青年が俺を見る。
「あ、アニー?」
アニーはお前が決めろと首を横に振る。このままじゃ俺はホームレスになるか冒険者として職持って生きるしかないのか…でも、俺はもう勇者になれる実力じゃないし、そしたらまた訓練生の時のように修行しなきゃいけないんだよな・・・。
「俺、修行は嫌だよぉ…」
俺は半ベソになってセフィーの足にしがみつく。
「なんとかしてくれよー!お前の魔法でなんとか出来るだろ!」
「嫌よ。アンタが勇者としての道をやり直すならいくらでも力を貸すけど
このまま勇者をやめるって言うんなら。何も力を貸さないっから!」
俺はセフィーに両腕で足元から引き剥がされ地面に投げ飛ばされた。俺は仰向けの状態のまま今度はアニーの方を見る。アニーは変わらず首を横に降る。
今まで何の加護か知らないけど特殊強化装備で楽をしていたツケが回ってきてるんだろう………
「どうすれば…」
「ここで生きたいんなら強くなれ」
「それしか、無い?」
「無いだろ」
「お前が今すべき事は、修行して強くなる事、それだけだ。ホームレスとなって野垂れ死ぬのはお前の勝手だ、」
修行は嫌だけどホームレスになって野宿を続けるのも嫌だ。
「わかったよ。冒険者ギルドに戻って白状すれば良いんだろ?」
セフィー「そういえばこの街について詳しいみたいね。アナタ、何者なの?」
剣の青年「俺は君達と同じ魔王を倒して神様にこの裏世界に送られた勇者だよ。先を急ぐから ここで失礼するよ。」
「あの...!」
去る剣の勇者を呼び止める。
「さっきは助かった、ありがとう」
剣の青年はピタリと止まると振り向き
剣の青年「今度、出会う時があれば。もう少しマシな実力になっててくれよ」
と言い放つと地面を力強く蹴ったと思うとそのまま空高く飛躍し、空中をキックで飛んでそのままどこかへ去っていった。