いきなりS級任務
「あのーーーーー・・・・セフィーさん?」
「何?」
「”ああ”は言ったけどよ?さすがに言った翌日にS級任務はどう考えても…飛ばしすぎだってえええええええ!!!!」
緑一面の自然の中、俺の叫び声が木霊した。
俺は勇者として生きる道をこの裏世界に来る直前にチートアイテムを失い、勇者見習いの頃の総種力値に戻ってしまった俺は
重症を負えばめちゃめちゃ痛いし
ハードな戦闘訓練は疲れるしで
冒険者ギルドに登録してこの世界の職を得る目的を達成出来たし。
これからは魔王に挑む勇者をやめて、ゆるくスローライフを楽しむ平凡な冒険者として生きていこうと割と本気で思っていたのだけれど
ディエイデンと名乗る強い魔者から助けた子供が言っていた言葉が心に響き過ぎて、もう一度その言葉を、魔王を倒して町に帰ってきた時に子供から言われたらめちゃめちゃ気分が良いだろうな〜・・・・・
・・・・・・・・・なんて、
至極単純で私欲的な動機が生まれた事により
俺は勇者の道を再び進むと決意した。
いや、決意はした。したはしたんだけど―――
―――その翌日の任務がレベル90推奨のSクラス特殊任務とか踏むべき段階を飛ばしすぎだろおおお!?
なっ何段階すっ飛ばすんだあ!?ちなみに魔王討伐のような【特殊任務】はランク外となっているっぽい、これはギルドでルドから聞いた話だ。
俺はまだレベル60未満だ。確かに”魔王討伐”を受ける為にはレベル上げをやらなくてはならない。
でも、流石にさ?
「じゅ・・・順序というか・・・なんと言うか・・・いきなりSクラス任務は飛ばし過ぎてない?」
「何甘いこと言ってんの?そんな油断している間に先に任務を受けた誰かが魔王を倒してしまうかもしれないじゃない」
「セフィーさん昨日は俺が強くなるまで待ってくれるって言ってましたよね・・・・・・・・・?」
「待つけど、速い方法が良いに超したことはないでしょう?それに――― 」
「それに?」
「リク、放っておいたら低ランク帯の簡単な任務ばっか受けそうだから」
・・・ギクッ・・・!
俺が低ランクの任務だけ受け続けて安全にレベルを上げようとしてるのがバレてる!
だって、格上ランクの任務って辛そうじゃん・・・
勇者を続ける覚悟は決まったけど
いきなり、辛い任務は受けたくない。
"それ"はそれ、"これ"はこれだ。
「Sランクは速いって・・・万が一があるかもだし・・・」
「大丈夫、いざと言う時は援護するし、ヤバくなったら私が治癒魔法をかけるから」
「や、やばくなったらって、致命傷を負うリスクがあるって事では・・・?いや!いやだ!せめてAランク任務に変えてくれよ〜頼むよセフィーさ〜〜ん」
俺は両手を頭上で合わせながら、このとーり!と、セフィーに頭を下げた。
「そこまで言うなら、仕方ない」
セフィーから返ってきた反応は俺にとって意外な物だった。
「え?変えてくれるんです?」
「良いけど勿体無いな〜せっかく、一気にレベルを上げられるチャンスなのに・・・Sランク任務は報酬で得られる魔霧の量が多いから、募集中の任務はすぐ取られてしまうそうよ」
「う、うん・・・」
まずい、これは・・・嫌な流れになる予感・・・。
「この任務を返したら、他の冒険者の手に渡って、得られたかもしれない経験値が・・・」
「いや、それぐらいあげて良いから」
―――頼むッ!セフィーさん!"それ"を言わないでくれ!!
俺は心中で切実に願う。そして、俺は気づいている。
"それ"を明示されてしまったら
今の俺はこの任務を嫌でも受けてしまう事に・・・!!
「本当に良いの?もしも、この任務を受けた冒険者PTが魔王討伐達成を目標としている、ギアーヌさん達のような勇者一行だったら・・・」
しかし、気づいた時には遅かった・・・。
「"この任務"で得た経験値で更に強くなった勇者一行が目標の魔王討伐任務を受け、リクより先に達成出来てしまったら・・・あの子が貴方に向けていた憧れの瞳は魔王を倒した勇者一行のリーダーに移ってしまうと思うけど?"憧れの勇者"さんから"憧れだった勇者"さんに早くもなっちゃうかもよ?」
「ぐっ・・・!それは嫌だ・・あの子のキラキラとした眼差しが他の奴に向けられるのは!!」
「でしょ〜?だったら段階飛ばしてでも強くなって逸早く魔王討伐に行かなくっちゃ!」
アニー「お前ら、そのくだり(ギルド)出る前にもやったよな?」
「でもさ〜。いざ目的地に近づくにつれて、もうちょっとランク低い任務でも良かったんじゃないかな〜〜なんて・・・」
「それじゃあ中途半端でしょ?大丈夫よ私とアニーがいる限り死にはしないから」
「てか、約40レベルも推奨Lvが上なんだぜ?お前らは逆に推奨レベル遥か上の任務をあっちで受けたことないだろ?」
「いや、戦士に就職した時に推奨レベル50上の任務に同行したことあるぞ?」
「私は騎士見習いの頃レベルが60上の暴龍の討伐に参加したことある」
「スンマセン!聞く相手間違えましたァァ!!さーせーーん!!!」
「・・・っと言ってる間に着いたぞ。デモトロンの住処」
俺達はギルドから北の森に入り歩き続けデモトロンの住処に辿り着いた。
デモトロン族は表世界にも生息している魔モノで俺達も冒険中にデモトロンの住処を見たことは何回かある。
人語を話せる【鬼類】という魔物に分類される魔族でその中でも比較的に人族に近しい生息形態で暮らしており、人語を話せる為意思疎通が取れる。
瞼の上に角が生えて平均身長が3mと言う
いかにも魔物らしい見た目をしているが
人族の肉はデモトロン族にとっては猛毒で人間(ヒューマ族)を襲う事は絶対無い。
・・・ただし、デモトロン族には”例外”がいるようで・・・。
「本当に表世界のデモトロン族の所と変わんないんだなー」
俺達の目の前にはデモトロン族が衣食住に使っている人間で言う”民家”と大差変わりない建物が数件ほど並んでいた。
変わっている所といえば、言うまでもないと思うけどヒトの民家より建物が縦に高い所だろう。冒険者ギルドの上にもう1部屋作りましたー。くらいの高さである。
「で、まずは族長から話を聞くんだっけか?」
「族長の家は・・・確か・・・」
セフィーがギルドで借りた地図を取り出して立体図を目の前に表示し、地図上の目的地のマーカー部分を指さし立体図と見比べて行先を探している。
「あそこね!」
目的地を見つけたセフィーは数100メートル先のデモトロン族の民家を指差した。
「さあ、リーダーが先に行きなさいよっと!」
俺の背中をセフィーがぐいっと押した。押されながら俺はセフィーに向かって
「い、いやいや!地図持ってるのはセフィーなんだからセフィーが先に行きなよ・・・」
「リーダーなんだからリクが先に挨拶すべきでしょ?」
「そ・・・そりゃそうだけど・・・」
正直いきなりデモトロン族と会話するのは勇気がいる。
裏世界のデモトロンならまだしも、裏世界のデモトロン族が持つ特性”をギルドで聞いたばかりの俺には余計に・・・。
「ただ、話聞くだけなら誰でも良いだろ。先行ってるぞー」
「あ・・・」 「あ・・・」
俺とセフィーのやり取りを他所にアニーが先に行ってしまった。俺達は先に進むアニーを後から追いかけた。
「ここが族長の家?」
「ええ、間違いないわ」
俺達は地図にマーカーが着いていた目的地の家の前に来た。歩きながら向けられたセフィーの先にノックしろよ?後ろに下がるなよ?という視線の圧に負けて結局俺が先頭に立つ事に。
「ノックするよ?」
「どうぞ」
「やっぱり俺・・・」
「ごめんくださーーーい!!」
俺が躊躇していると構わずアニーがドでかい声量で族長を呼びやがった
ちょっと・・・!だから俺はまだ心の準備が・・・!
「ごめんくださーーい!!」
「せ、セフィーまでぇ!?」
続いてセフィーも大きな声で族長の家に向かって呼び掛けた。
セフィーは呼びかけた後、俺に顔を向けると手で前に出ろという合図を送った。
その数秒後、大きなドアがガチャりと音を立てて扉開くと中から中年くらいの身長4mはありそうなデモトロンが現れた。
うわ・・・めっちゃ強面じゃん・・・
デモトロン族の人相は人族と同じく種類が様々だけど、角が生えてる為に人と比べると強面にみえる。
表世界がデモトロンそうだった。
このデモトロンは俺が表世界で見たデモトロンと比べ、遥かに強面で俺はさっそく怖気づき額から変な汗が吹き出した。
でも、こうなったら仕方ない。もう腹を括るしか無いか!
「えっと・・・は、初めまして冒険者ギルドから来た”リク一行”です」
俺は部屋から出てきたデモトロン族に挨拶した。
「あなた方が!ギルドから来てくださった!あ、ありがとうございます!」
強面のデモトロンはその人相とは逆でびっくりするぐらい低姿勢だ。
「あ、あなたが族長の?」
「えぇ、族長のゴウドュです。どうぞ、まずはお入りください」
「さっさ、どうぞ!」
ゴウドュと名乗ったデモトロン族の長は出てきたドアを開けながら俺達を中に招き入れた。
家の中は天井が人族の民家の倍高く、家具も人族にとっては一回り大きい点を除けば普通の1階建ての民家と大差無い構造である。
「ケランカお客さんだ、何かおもてなしのお菓子かお茶を出してくれないか?”人のサイズ”で」
「あら、シーラさんの所からいらした冒険者の方々ですね?ごめんなさい…こんなに早くいらっしゃるとは思ってなくて…コーヒーか紅茶とクッキーしかお出し出来ないのだけれど・・・」
部屋の椅子に座っていた。族長の妻らしき赤髪を後ろに束ねた女性のデモトロンが族長に言われて俺達に気づくと立ち上がり俺達をもてなそうとしてくれた。
俺が「じゃあお言葉に甘えてコーヒーで」と注文しようと口を開こうとした瞬間・・・
「クッキーィィイ!?全ッッッ然!!!構いません!!!!!クッキー大好きです!!!コーヒーはお砂糖多めでお願いします!!!!」
いきなりセフィーがオーバーリアクションと前のめり気味に注文を伝えた。
「ちょちょい、セフィーさん甘党お化けが出てますよ・・・」
俺は小さくお菓子の名前を耳にした影響で急に目を輝かせ、様子がおかしくなっているセフィーへ呟いた。
「あっ・・・ごめんなさい・・・」
我に帰った甘党女のセフィーさんは顔を赤くし両手を口に当て恥ずかしがりながら1歩後ろに下がった。
「ふふっ全然構わないですよ?お2人はどうされます?」
「俺はブラックで」
「じゃあ、俺もコーヒーの砂糖ありで」
俺は紅茶とコーヒー両方用意するのは手間だろうなと思い、アニーに合わせてコーヒーを注文した。




