リムグレッドのギルドにて
目を開けると誰かが俺の顔を覗き込んでる顔が見えた。
「あっ、起きた」
―――――視界がぼやけて誰が覗いてるかわからなかった。
瞬きを繰り返して光に目が慣れると視界に映った顔の正体がセフィーだと気づいた。
ギアーヌ「お!起きたか!坊主!」
???「よく生きてたね〜君が戦った魔者。めちゃ強大な魔霧の匂いがしたんだよ〜」
ジェラル「あのレベル差で生きて帰ってこれたのが奇跡だよ」
あぁ、そうか・・・俺、生きてるんだ――――
目の前で子供が魔物が住んでるであろう森に入ろうとしてるもんだから止めたら森から魔物が現れ、しかもただの魔物じゃなくて魔王派幹部の【魔者】だったんだから。
もう本気で「俺、ここで殺されるんだ」って思ったよ・・・!
はぁ・・・やっぱ無茶はするもんじゃないなっ!次同じことあったら絶対みてみぬふりしよーーーっと・・・。
辺りを見ると俺が今居るのは冒険者ギルド内だとわかった。そして再び目の前を見て俺は気づいた、俺は今セフィーの膝の上で寝ていたということに…!!
セフィー「ねえ、目覚めたなら起きて欲しいんだけど?」
照れ隠しとかではなく割とガチトーンの雰囲気に怯えた俺はすぐさま飛び起きた。
「あっ……あっ……いやーーーそのっ気絶してたもんで!!き、気づいたら膝の上だった感じで……!!」
「それはわかってる、はやくどいて欲しかっただけ。立つのに邪魔だから」
そっ、それはそれでなんか傷つくよ?セフィーさん・・・。
「起きたようだね、リク」
ギルド長のシーラが受付の裏手から現れた。
「これを飲むといい落ち着くよ。」
シーラは俺が今座っている席の机に手に持って来たマグカップを置いた。マグカップの中を覗くとホットココアが入っていた。
「いただきます」
俺は会釈してからホットココアを飲んだ。
シーラ「セフィーも」は
セフィー「あ、ありがとうございます」
セフィーもホットココアを飲んだ。
セフィー「・・・!?美味しっ!!」
「・・・・・うまっ」
あまりの美味さにセフィーより先に飲んだはずなのに反応が数秒遅れた。
ギアーヌ「負傷した後のシーラさんお手製のホットココアは身に染みるだろ?」
???「そうそう!ほんとに生き返るんだよね~シーラお手製のココア!傷ついた心と身体に染みるんだよねーー」
ギアーヌ「コロックう?お前は対して負傷してなくてケロッとしてる時でも貰ってたろー?」
コロック「えへへ…だって美味しいんだもんシーラー私の分もなーいー?」
シーラ「前みたいに代金貰うけどいい?」
コロック「ちぇ、あいたたたっこの前の傷が…あいたたたた・・・・・」
ジェラル「シーラさんにそうゆうのは通用しないでしょう」
コロック「はーい……」
コロックと呼ばれているギアーヌの仲間の少女は腰ポケットから何かを取り出してシーラに渡した。
「毎度~」
どうやらそれはコインだった様でシーラは受け取るとシャツの胸ポケットにそれを入れると俺に「調子はどう?」と聞いて来た。
「シーラさんが治してくれたんですか?緊急用のポーションを使いましたが外傷用だから身体の中はボロボロだった気がするんだけど・・・」
「セフィーが治したんだよ」
「そうか、セフィーが・・・ありがとう」
「それは良いから、リク私から話したいことがあります!」
「はっ・・・はい!?」
な、なんだ・・・?また怒られるのか?
でも・・・今回は俺結構頑張った方だと思うんだけど・・・。
「プッ・・・ククッ・・・」
傍で見ていたギルド長が急に吹き出すと笑いを堪える仕草が見えた。
俺は不意に吹き出されたから怪訝味の視線をギルド長に向けるとギルド長は俺の視線に気づいたようで。
「あぁ、すまない・・・物凄く分かりやすく顔に出るものだと思って・・・ツイね・・・セフィーって怒るとそんなに怖いのか?」
「そりゃもうめっちゃ――――あっ」
しまった!つ・・・つい口が滑ってしまった・・・!
「もしかして、アンタ・・・私が今怒ってると思ってたの?」
「えっ?違うんですか?」
「違うよ、あと私が怒ると怖いって言うけど、そもそもズルと偽装行為をしなければ良かっただけの話よね?」
「おぉ・・・私もセフィーを怒らせないようにしよっと・・・・・・」
「シーラさん多分それセフィーに聞こえてます・・・」
「まぁ、今はそんなのどうでも良いから・・・良い?私、貴方が私達とレベルが近くなるまで、この街に滞在する事にしたの」
「レベルが近づくまでって・・・俺を待つより他の強そうな冒険者を俺の代わりにパーティーに入れた方が速く魔王倒しに行けると思うよ?俺はD任務を受注しながら細々と暮らすから・・・あと、正直もう強い奴と戦いたくないし・・・・・・・・・」
「あのなリク俺はお前と魔王を倒しに行きたいんだ。他の奴仲間にしても、それじゃあ納得出来ないんだよ」
「そんな事言われてもなぁ・・・」
「そう言うが、少しは強敵と戦う悦びも感じてるんじゃねえのか?リク」
言葉を発しながらアニーは俺に歩み寄ると俺の顔を指差す。
「アントローと戦った時とさっきの”でぃえいでん”とかいうヤツと戦った時、お前の顔からは確かに”恐れ”が見えてたぜ?俺にもわかるくらいにな、でもそれ以上にお前の眼には”勇ましさ”が光り続けていたんだ、戦ってる間ずっとな 」
・・・目? と言う様に俺は自身の眼を指差した。
「リク、お前本当はまだ【勇者】を続けたいんじゃないのか?」
「そんなわけあるかよ…特訓も嫌々受けたしあの魔者と戦ったのも渋々つーか・・・・・」
そうだ、俺は魔王討伐に行く冒険者じゃなくて、ゆるゆると世界を廻る冒険者になるんだ……
ここで勇者を続けたら命が幾つあっても足りないってアントローとリバーマンと魔王の幹部の一人と戦って思い知った思い知ったんだ……!だから……俺は………!
「私はアンタが強くなるまで待てる。だって、ズルしてたとはいえ、リクがパーティーメンバーであり、リーダーだって事に変わりないもの、これはきっとアニーも同じ」
アニーは首を縦に振った。
セフィー「すぐに答えを出さなくて良いから、また表世界の時みたいに勇者にならない?」
「あれは……」
もう埒が明かないキッパリと勇者を止めると言ってしまおう……言ってしまえば良い…言ってしまえば良いだけなのに、俺の口から何故かその言葉が出ない………!
「コロック、持ってきたよ~」
「ありがとー」
「あ、それと、リクこれ」
「えっ…は…はい…」
スッとシーラから渡された手紙を俺はすんなりに受け取ってしまった。
「い、今渡します?と、取り込み中なんですけど……」
「いや、すまん。ハーフエルフは空気を読むのが苦手でね。それ君への手紙なんだ」
「俺へ?」
「読んでみるといい」
別にあとで読めば良いのに、俺は何故か無意識的に手紙の開いていた。ーーー手紙には、あたかも小さい子供が書きました。という文字列でこう書かれていた。
「「ゆうしゃさん たすけてくれて ありがとう !! こわいやつと たたかってるとき ちょ~~かっこよかった!ぼくも ゆうしゃさんみたいな かっこいいおとこになります!」」
咄嗟に一時の気の迷いで助けたあの子供からの手紙は
極普通の歳相応の文が書いてあった。だが、俺の顔はみるみる内に綻んで行き、俺の中の確固たる思いも緩んで行ってる事に気づいた俺は段々と可笑しくなり急に笑いが込み上げてきた。
「くくっくふっ…ふふっ……」
「リク?」
「感動的な手紙だったんだねー」
「いや、でもこれって・・・・・」
「ぶふっ!はははははははは!!!!」
「笑ってる・・・・」
「笑ってるな・・・」
「・・・・」
「り、リク・・・?」
俺は堪えきれずに爆笑した あまりにも俺自身が単純な生き物だって再認識した瞬間めちゃめちゃ可笑しく思えてしまった。
「見せてよー」
「こら!コロック人様宛の手紙を勝手にみるんじゃ…!」
コロックは腹を抑えながら爆笑している俺の手から手紙を奪うとパッと男の子から俺へのを目視した。
「え?これ笑う要素ある? 」
「いやーーーーー俺ってほんとにバカだなって……このまま魔王倒す為にレベリングするってなったら痛い目に会うに決まってるし、いつ殺されてもおかしくない、だから2人とは別れて魔王討伐には関わらない緩い冒険者になるべきだって絶対そうするべきだって思ってた……でも、あんな小さい子の「かっこいい」の一言で一瞬でその思いが俺の心の中で崩れて行ったんだよ…くくっほんとバカじゃねーの!!俺……!!は…はははははははは!!」
冷静になったらきっと後悔するんだろう。絶対やめとくべきだったと、勇者なんてやめるべきだったと………
でも、良いんだ。この選択に後悔しても構わない
だってそれ以上にもう俺に好意を向けてくれる人を裏切りたく無いからーーーー。
「俺、この世界でも魔王倒すよ。だって俺は”かっこいい”勇者だからさ……!くくっ………はははっ!」
俺の口から出た答えが自分の耳で聞いた時あまりにも単純思考すぎてバカらしくなり、ふたたび笑いが込み上げた。
「じゃあ、俺達とは……」
「パーティー続けるってこと?」
「ああ、絶対抜けてやろうって思ってたけど、手紙みたら一瞬で気が変わっちった…ガチで抜ける選択以外無いと思ってたんだからな?それがたった一言の「かっこいい」だけで・・・俺ってこんな単純な人間だったけ?びっくりだよ…ひひっ、ま、まじで…」
「え?今更?」
「お前が単純なのはあっちの時からずっと知ってるぞ?」
「マジかよ」
「あぁ」
「うん」
「ぷっ・・・・・!」
「ふふっ」
「くくっ・・・」
「ははははははははは!!」
「ど。どうやら…解決したみたいだな・・・」
「よ、よかった・・・」
急に笑いだした俺と釣られ笑いしている2人に若干引き気味のギアーヌとジェラル。その横でコロックがシーラに目配せするとそれに対してシーラが首を傾げるとコロックはさり気なくグッドサインをシーラさんに送った




