裏世界の魔王幹部03
「ソランディ」
死への黒き光はアニーの額に命中する寸前で何者かが放った蒼き光線により軌道がずれ、顔の真横を通り過ぎて行った。
「今のは……」
「ふぅ〜間に合ったみたいね!」
「次は女か」
蒼き光線を発射した者はセフィーであった。
セフィーはアニーの様態を目視で確認してから周りを見渡し地面に倒れているリクに気づき直ぐ様リクの生死を確認しに行きリクの首に手を触れた。
「(俊敏さはあの勇者以上か…だが俺にはまだ遥かに劣るな)」
「うん、まだ息がある…ちょっと待ってなさいねアレを片づけたら治癒してあげるから」
ディエイデンが攻撃を発射しようと片手をセフィーに向けて構えた刹那、ディエイデンの腕は地面に落下した
「あ?」
「仲間が瀕死なの、すぐ終わらせて貰うぞ」
「な…?」
「(こいつ、さっきより速く動けている………!?)」
セフィーはディエイデンの腕を切断した剣を頭上へと振り上げると剣の周りに青い光が生成された。
その青い光は、アニーが剣を振り下ろした瞬間、前方に放たれた障害物を全て光で覆い潰した!!!!
放たれた光は遠方に聳える山脈の一角を消し飛ばした。
セフィーから見て前方の木々は跡形もなく消え去り、地面が抉られ、巨大な破壊痕が生まれていた。
「な〜んだ、アニーが苦戦した割には、あっけなかったな」
「気をつけろ!セフィー!!そいつは身体の1部でも残っていりゃ生き返れる!!!」
「大丈夫だよ、今のじゃ塵すら残ってないでしょ」
「そりゃ、全部当たってればな」
「あの至近距離の最大出力で撃ったから大丈夫でしょ」
「だ…だと良いが………」
倒れているリクの傍で膝を着くとセフィーはリクの負傷している箇所に触れて治癒魔法を施した。
「これで、良しと…さあ、起きなさいっと!」
セフィーはリクの負傷してない箇所を叩いた。リクは「いでぇ!!!」と叫ぶと飛び起きて、叩かれた箇所を擦った。
「し、死んでるのに痛ぇ……」
「死んでないわよ」
「え、えぇええっ!?セフィー!?まさかお前も死んだのか!?」
「だーかーらー!ここはあの世じゃないって!!」
起きたてでボケているリクの頬をセフィーが抓った。
「いでででで!!!わっ、わかったわかった!死んでないのはわかったからー!!」
セフィーはリクの頬を抓る手を離した。
「ふぅ・・・あいててて……じゃあ、アニーは?」
「そこにいるわ」
セフィーが指を差した先には木に寄り掛かるようにして地面に座っているアニーが居た。
「ほっ………なぁ、セフィー…やっぱ俺……」
「うん、アンタ、やっぱり勇者だよ」
「え!?えーーと…今、真逆のこと言おうとしたんだけど?」
「自分は勇者じゃないって?」
「向いてないっつーか…俺、アニーとセフィーが居なけりゃ確実に…死んでたし……」
「でも、助ける為に戦ったんでしょ?あの子を」
セフィーが視線を動かすと、その視線の先にはリクが助けた子供が木に隠れながらこっちを見ている。
「それが出来るってことは、アンタの根本は【勇者】なんだと、私は思う、だから、また勇者リクとして私達と一緒に行かない?」
「いや……んなこと言ったって、痛いのはやっぱ嫌だし、怖いし……いつ死ぬかわからんし……」
「まだそんなこと言う、もうアンタが弱いのはわかってるんだから、その分はアニーと私でフォローするわ」
「でも、それってお荷物じゃ?」
「お荷物なんかじゃない!」
「えっ…」
少し語気が強くなったセフィーに驚きリクは目を見開いた。そんなリクに向けてセフィーは話を続ける。
「私は…いいえ…私達はアナタと共に魔王を倒しに行きたいの!」
「・・・」
「そして、その思いは、リクがなんだかんだで根本は【勇者】なんだなって、わかって、より強くなった」
「で…でも……」
「今すぐじゃなくていい、あと、3日間この街で待つから…それまで」
「お…ぉおい!!お前らぁ!!う…上ぇ!!!!!!」
「…ッ!!!???」
2人が空を見上げると視線の先には消し飛ばした筈のディエイデンの姿が…!
ディエイデンの頭上に、巨大な"黒い手"が君臨している
巨大な手の下でディエイデンが両手を挙げ、五本の鉤爪から生成されている黒い光が集まり
巨大な【魔力球】を作り上げている。
「貴様ら!!褒めてやる!!この俺に4度も魔霧渡りを使わせるとはなあ!!!
「させない!!!」
セフィーは地を蹴りディエイデンの元まで飛び、挙げている両手を斬ろうと剣を振ったが一瞬にして躱されセフィーの刃は空の雲を斬っていた。
「は…速い!!!」
「気づかれたら防がれるだろうと思って俊敏値を少し魔力を使ってブーストしているのだ。もうお前のスピードでは俺は防げんよ」
「舐めてもらっちゃ困るわ!まだ私もブーストすれば速く…!!!!」
「防がれる前に貴様らを後ろの街諸共消し去ってやるよ!!!!」
黒い光の手の平に巨大な光の玉が生まれた
「大魔黒球!!!!」
全てを破壊する黒き光の玉が巨大な黒い手から放たれようとしている寸前………!
「ひさしぶりだな、ディエイデン」
空に浮かぶ魔者を地上から呼ぶ声が聞こえた。
「し…シーラ!!?な、何故ここに…!?」
「何故って、この街で冒険者ギルドを営んでいるんでね」
「ちっ……貴様か縛られている街とやらが”この街”だったとは…!」
「さあ、放ちなよ、その技を……」
「ケッ…!」
ふっ…と黒い巨大な光の玉も大きな手も消え去ったと思えばディエイデンも姿を消した。
「どこ行った!きっとまだ近くに…!」
「いいや、もう大丈夫だよ、セフィー」
「アイツ、遠くまで逃げたみたい、またいずれ現れるかもしれないけど、今はもう戻って来ないでしょう」
「ほ、本当ですか?」
「本当、だから今はまずギルドに戻って休みなさいな3人共…いや、勇者のピンチを知らせた小さな勇者を含めて…4人ともね」
ギルド長シーラは遠くの木に隠れている子供に目を向けると微笑んだ。




