裏世界の魔王幹部
「宿にいた?」
「いいや、戻ってない」
「リクどこに行っちゃったんだろう…シーラさんは私たちがギルドを出たすぐ後に外に出たって言ってたけどど…」
セフィーとアニーは姿を消したリクを探すべく街中を探し歩いてみたものの何処にもリクの姿は見つからなかった。
「ギルドの空き部屋には?」
「居なかった。ルドちゃんにも聞いたけど見てないって」
「そうか…」
セフィーとアニーはリクが行きそうな場所を考える。
「あの原っぱは?」
「原っぱ?」
「俺達が最初に"この世界"の地面を踏んだ場所だよ」
「あー!あそこね!・・・でもなんで?」
「いやな?アイツ何故かフラッと広い原っぱの中たまに歩いてたと思ってよ、ちょうど「あれ」ぐらいの広さの」
「確かに……!!」
セフィーは口元でパンっと指の腹と腹を叩いた。
「まぁ・・・でもよ・・・?平原の上って魔王の仲間が居るんだろ?リクが近づくかあ…?」
「それも・・・そうね……」
セフィーとアニーは今一度、リクの行先を考察する。
「リバーマンが住んでる森に行ってるんじゃない?レベル上げる為に 」
「レベル上げか…俺らと「魔王討伐」の任務を受けないにしても他の任務を受けるにゃあレベル上げは必要だろうし、有り得るな。」
「よっっし決まりね!」
セフィーは両手をパーンと叩くとアニーに…
「私はリバーマンが住んでる森を見に行くから、アニーは平原をお願い」
「わかった見つけたらどうする?」
「【フォンシー】で連絡して、私も見つけたら掛ける」
※・・・・・・・【フォンシー】とは、小型の通信装置で空中の魔霧を利用して魔話という読者の世界で言う所の電話が出来る。
「そうか【フォンシー】で…待てよ?ならそもそもリクに【フォンシー】掛けりゃ良かったんじゃ…?」
「勿論、それは探してる時に私も試したよ、でも掛からなかった。多分アイツ、魔力切って宿に置きっぱなしなんだよ。フォンシーを 」
「あー!そういやぁ・・・宿にリクが戻ってないか見に行った時、俺のは鳴ってねえのにフォンシーの着信音やたらするな〜って思ってたんだが、リクが置きっぱなしにしてたフォンシーから鳴ってたのか!」
「・・・・・・・・・。」
「どうした?セフィー?何かいいたげだが」
「いや、なんでも……」
2人は二手に別れて再びリク捜索へと向かった。
―――――――――――――――――――――――――――
魔モノは俺に向かって飛び掛ると鉤爪から三日月形の衝撃波を乱射した!
俺は大剣を振るってその乱射攻撃を弾き飛ばした
「お前さん」
「なんだ?」
「息抜く暇なんてないだろ?」
「ッッ!?」
魔モノは一瞬にして俺へ0距離まで接近すると、心臓目掛けて一突きした。俺は咄嗟に横に避けて命中を免れた
「またか……」
「お返しだあああ!!」
俺は大剣を横に構えて魔モノの胴体に横一文字斬りを放った!
…だが、鉤爪で止められた。
「やはり、力も大した事ないようだな。」
「ぐっ…クソぅ…」
「じゃあな。」
「お、押し斬れえええええ!!!」
「なっ!?」
俺は腹の痛みを忘れて大剣に込める力を強めた!
もっとだ!もっと強く!もっともっと強く!!!
「お、押される…?」
ギチギチと鉤爪と大剣の刃が押し合う音「(こいつ…!なら持つ手を刺せぱ…!)」
刹那、魔モノが空いてる片腕を構え俺の腕に一撃を入れる寸前だと気がついた俺は攻撃を躱し・・・
・・・とはなら無かった。俺自身もわからないけど、「今」押し斬らないと俺は死ぬと直感した俺は腕に向かってくる魔モノの攻撃を構う事無く大剣に力を込め続けた…!
「か、片腕で足りな…ッ!?」
「うらあああああああ!!!!」
ギシギシッミシッミキミキッ
「…いだとォ!?!?」
パリーンッッッ!!
魔モノの鉤爪が割れて、その直後大剣の一閃は魔モノを横真っ二つに切断した。
「ガハッ…」
・・・だが、こいつは自己再生する!!身体の修復が実行される前に阻止するにはコイツの意識を削ぐか絶命させる必要がある!俺は大剣を頭上に掲げ深呼吸をし、集中力を高める。
胴体だけになった魔モノが地面に落ちて仰向けのまま俺に割れてない方の鉤爪で反撃しようとした瞬間。
俺は大剣を高速で振り魔モノの胴体に無数の連撃を喰らわせた!!魔モノの胴体がバラバラの肉片になるまで、きっと数分も掛からなかった事だろう。
「ゼェ…ハァ…ゼェ…ハァ…」
俺は息を切らしながら、大剣を地面に刺し膝を地面に着いた。あんな高速攻撃をしたのは久しぶりで本当に疲れた…というか…”なんで俺は大剣で高速攻撃が出来た?”
だが考えた瞬間胃から何かがせり上がってきた。
「ゴフッ!ゴホッ!!!」
どうやら腹の内部の傷が更に開いてしまったらしい
戦闘に集中して薄まってた痛覚が蘇ってきてる。つまり死ぬほとお腹が痛い。
「お兄ちゃん!!」
戦士に腕輪を届けようと森の前をウロウロしてた男の子が俺に駆け寄った。
「に、逃げて…なきゃ…ダメ…で…しょ…」
「でも…!でも…!」
男の子は目に涙を溜めながら
「僕のせいで…!お兄ちゃんが死んだら…!」
「ハァ…ハァ…でも、君が残ってくれてたおかげで助かったかも」
「え?」
「兄ちゃん、このままだと本当に死にそうだから…誰か…呼んできてくれないかな?」
「う、うん!す、すぐに呼んでくるね!」
俺は地面を見ている。
俺の耳に男の子の足音と何かに躓き倒れる音がこえた。
「お、おい大丈夫・・・」
てっきり俺は地面の石に躓いた音だと思っていた。
だが実際の所は……
「か・・・?」
顔を上げ目の前を見るとバラバラの肉片にした筈の魔モノが五体満足で男の子の前に立っていた。
いやいやいや!おかしいおかしい!確実にバラバラにしたのに!なんで生きてるんだ?幽霊?いや、幽霊だよね!?そ、そうだよねー!?
「「自己再生が出来ないように脳も心臓もバラバラにしたのに…」なんて思ってるだろ?」
あぁ・・・そうだよ・・・だって、表世界の常識は自己再生能技を持っている魔者でも肉体をバラバラにすれば再生不可能な筈・・・!
「随分と"表世界の俺達"は弱いらしいな 」
「み…みたいだね…あんなにバラバラにして再生した魔モノ…幹部クラスの魔者にも居なかった。」
「じゃあ、まずその認識から改める必要があるな」
「…え?」
「俺は魔モノの中でもトップクラスに魔王様に近い直々に命を受ける機会もある。普段は魔王統治国の王から命を受ける事が多いが…」
「それって…」
「俺はただの魔モノではない!!言うなれば魔王様に魔霧の【性質】が
魔モノの倍近く知能も魔モノの上に至っている
【魔者】という特別種だ !!!」
そ・・・そりゃ勝てるわけねえよ…と言うか・・・戦えてたのが奇跡なんじゃ・・・?
こんなの。瞬殺されてたっておかしくないだろ
表世界の魔王城幹部の魔モノとは遙か格上の””裏世界””の魔王の幹部クラスと戦ってるんだから……
「それともう1つ!俺が再生出来た理由も気分が良いから教えてやるよ」
「そ…そりゃあどうも……」
「簡単、俺が倒れてた所見てみな?」
俺は魔者の肉片が転がっていた筈の地面に目を向ける
だが、そこには切り刻まれた直後の魔者の肉片がそっくりそのまま転がっていた。
「え?…じゃあ、アンタは…?」
「魔霧渡りだよ。まさかコレ使える奴表世界に一人もいなかったのか?」
「何その技?」
「言ってしまえば自身の魔霧に己の魂の因子を混ぜて
自身の身体を移動する技だ。これにより俺は魂を下半身に移動させて脳と心臓がバラバラにされても完全回復に成功できたという訳だ 」
「ち、チートかよ…」
「いや、そうでもないぞ?「魔霧渡り」には体内の魔霧を大量に消費するから魔力量も減少してしまうのだ」
いや。それでも充分チートだろ…本当にバケモンなんだなこっちの世界の幹部は…。
「だが、俺に「魔霧渡り」を使わせたのは実に200年ぶりだぞ?」
「そりゃどうも…ヴッ!?ゴホッ…ガフッ…」
再び俺の腹部の内傷から血が上に逆流し口から血が溢れ出る。
「おいおい、まだ死んでくれるなよ?せっかく久々に手応えのありそうな勇者に出会えたんだ!もっと楽しませてくれよ!なあ!?!?」
膝を着いたままの俺の顔を魔者が覗き込む
「ハァ…ハァ…見ての通り…もう…戦え…ない…」
「戦意喪失か。じゃあ無理やりにでも取り戻させるしかないなあ…?」
魔者はニヤリと笑うと俺の目の前で視線を横にズラした。
ズラした視線の先には男の子が。
「おい…やめ…」
ここであの子が殺されたら、俺がこんなに頑張った意味が…殺すなら俺に…!!
「グッ…!ガッ…くぅ……!!」
腹の痛みが悪化して声が出ない…だけど…止めなければせっかく助けたのに…!
また「勇者」になれるんじゃないかと
少しだけ ほんの少しだけ自信って奴を持ってたのに・・・!
そんな俺の想いは虚しく魔者は逃げる男の子の背後から首元目掛けて鉤爪で突き刺した…!
その瞬間、ガキイイイン!!!!!という甲高い音が響いた。だが、明らかに子供の首の骨を貫通した音には聞こえない。
口から血を垂らしながら、俺は顔を上げ音が鳴った方を見ると…
「ふーーー!間に合った…!」
そこにはバックラーで男の子の首元に迫っていた魔者の鉤爪を防いでいる戦士アニーの姿があった。




