勇者再起
森から現れた魔モノは男の子の足元を指差す。
「森に入ったな?」
足元を見ると男の子の爪先が微かに平地と森の境界を越えていた。
「魔王様の命でな、女神派の人間が森に侵入したら見つけ次第、捕らえろとの事だ」
「生死は関係なくなぁ…」
魔モノが腕を振り上げる、手にはまるでウル〇ァリンのような鉤爪が装着されてる。こんな武器で子供が斬られたら重症所では済まないだろう…
「や、やめろぉ!!」
鉤爪が男の子の身体を斬り裂く寸前で俺は間に入り込み強化した片手で受け止めた
「逃げて!はやく!!」
「でも…兄ちゃんが…」
「いいから!!!」
くっっそう!!!何カッコつけてんだ俺〜!!!!こんな強そうな敵と戦ったら痛い目どころじゃ済まないのはわかりきってた事でしょうが!! あぁ…!この子と一緒に逃げたい…!でも!一緒に行ったらこの子も狙われちまうし…!あー!!なんで助けてしまったんだー!!!
「勇敢な事だな、お前。そのまま無視してれば良かった物を…」
「え?」
瞬間俺の腹に何が強い衝撃が走った。恐る恐る下を向くと魔モノの左腕の鉤爪が俺の腹に刺さっていた…!
魔物が刺した鉤爪を引き抜いた。
「グハッ…!」
俺は血を吐き両膝を地面に着いた。そのまま地面に倒れる・・・・・・・
「ガキより大人に近いお前の方が魔霧を多く持ってそうだし、お前を殺して持ち帰るとしようか・・・ お?」
・・・寸前のところで俺は気合いを振り絞って消え掛けの意識を繋ぎ止め、片足を前に出し、踏ん張ってみせた。
そのまま大剣を素早く抜き、勢い任せて魔者に一閃を食らわせた!
魔モノの足から胴体が切り離され地面にドサッと落ちる。
俺は消えかけの意識をなんとか大剣を振るために
振り絞った気合いで繋ぎ止めながら
ポシェットのポッケにある”傷ふさぎのポーション”を取り出し、傷口に直接ぶっ掛けた。
これは回復ポーションではなく、根本的な治癒には至らないが、傷口を瞬時に塞げる為、即効出血は抑えられる。
しかし、内臓の損傷までは治癒出来ないから、なるべく早めに回復魔法か回復ポーションで治さなければ
このままじゃ俺は内臓から出血し続けて死ぬだろう。
「戻って回復ポーションを・・・・・・
・・・・・・・!?
ははっ……なーんて……これで終わってはくれないかぁ・・・はぁ〜↓・・・・・・そりゃそうかぁ〜・・・・・・・・・ 」
さすがに裏世界の"魔者"だけあるから
自己再生能技ぐらい持ってるだろうと思っていたが・・・畜生、本当に持ってんのかよ・・・!
直立したままの魔モノの足からボコボコと胴体が生えて続けて腕も首もポコボコ再生が進んでゆき、10秒未満で完全に復活した。
「あぁ、だが、驚いたぞ。腹を貫かれても反撃行動に出るとは」
……い、いや……いくらなんでも治りきるの早すぎだろ……この再生スピード……表世界だと幹部クラスの芸当だぞ・・・。
「お前、あっちの魔王様を倒してやってきた転移者だろう?」
「なんでわかる?」
「わかるさ、何故って俺に一撃を入れられたのが何よりもの証拠だ」
「わけわかんねーよ」
「ああ、殺す相手に何教えても何にもならんし…な!」
魔モノが俺の胴体目掛けて鉤爪で斬り裂く、その直前の予備動作に気づいた俺は咄嗟に大剣を構えて鉤爪を受け止めた
「油断すんなよ」
続けて魔モノが連続切り裂き攻撃を繰り出すと俺は大剣を使って捌いたが何発かの切り裂きは防げずに食らってしまった 切られた箇所から血が出る 傷口が痛むが狼狽えて至ら確実に殺されるから、なんとか堪えている。
「ヒアッ…!」
連続攻撃最後の一撃を出そうと魔モノが鉤爪を振り上げた瞬間俺は大剣で一突きした 突き攻撃はドスッ!と魔モノの左胸を貫通した
「お?」
一瞬、魔モノの動きが止まったが俺は反撃を警戒して瞬時に刺した剣を引き抜き魔モノと距離を取った。
「ククッ…お前、目が良いんだなぁ…」
左胸に空いた穴がギュルギュルと塞がってゆく…。
「たっく、治りきるの早すぎなんだよ…」
「この速度の自己再生なら、見たことくらいあるだろう?」
「まあね!」
だが、それほどの自己再生力を持っていた魔モノはあっちで会ったのは幹部クラスからだけどな!でも、そりゃそうか…ここに来れるのはその幹部たちを倒した強者である事が当たり前なのだから。その幹部達と互角、それ以上の敵が最初の街の近くに出てくるのは必然である。
「こっちにやって来た冒険者達ってのは、分身とは言え、あの魔王様を倒した強者達だ…だが、その強みには冒険者によって個人差がある…お前は目と反応速度…つまり「敏捷」と「察知」が強みなんだろう…魔王様もその強みを活かして倒したんだろう?」
いや、すみません。魔王様はGXモード状態で倒しました…。というか、そもそも俺はまだレベル55なのに反応速度に驚かれるのか…。この人化け物級に強そうなオーラ纏ってるけど…
「だが、強みがあれば弱みもある」
「お前の弱みは…」
「!?」
瞬間、目の前の魔モノが両手の鉤爪を振りかざした!それに気づいた俺は両腕を硬化させて攻撃から
「防御!!!」
言い放った直後魔モノが連続で空を鉤爪で切ったかと思えば複数の三日月型の衝撃波がビュンビュンと俺に向かって発射された! 俺は腕で受けるが、その衝撃波の威力は切り裂き攻撃とはくらぺものにならない威力で力に押されて後方へと吹き飛ばされ、木に背中を叩きつけられた!
「ガアッ!!」
そのまま根元に持たれるようにずるずると腰を地面に着く俺。だが、腰なんて着いてる暇は無い…ここでじっとしてたら俺はこの魔モノに殺される…!
魔モノが俺に歩み、近づいてくる。
「クククッちょっと力入れただけだが、やはり防御は薄いようだな」
俺は自分の腕を見るそこには硬化した肌を貫通した深い切り傷がありダラダラと出血していた。
「もう一度防御してみるか?だが、次は俺も今以上の威力を出す。察するに、今のがお前にとって最大の防御技だろう?」
「ぐっ…!」
あぁ、その通りだよ!畜生……!何とが次の攻撃に備えないと……
けど、また痛みを我慢して動かなくちゃなんないのが嫌なんだよな〜!!さっきのは火事場の馬鹿力、ないしは、死相への反発心で勢い任せで出せたけど……
今の俺は痛みを強く自覚しまってるから、力を出そうにも痛みの苦痛が勝り意識が削がれてしまう。
「ゴフッ…ゴホッ…」
胃から這い上がってきた血が口から吹きこぼれる
腹の中の傷も治ってないから動く度に激痛が走り損傷した所から血が逆流して来ている様だ。
魔モノが俺に近づいて来ている………
このまま俺は殺されるのか…チクショー…なんで俺はさっき男の子を助けてしまったんだろ?いくら少しは修行”させられた”とはいえ、俺の能力じゃこの世界の強敵に太刀打ち出来る筈がない、だから、俺はアイツらと別れてのんびりマイペースな冒険者人生を歩むと決めてたんだろうが…それなのに、なんで立ち向かってしまったんだろう・・・。
――――――――瞬間、俺は表世界でデモピド族の子供がたまたま飛来してきた”暴れ龍ニーズ・スティーラー”に襲われてる所を発見した時を思い出した。
あの頃は俺はGXモードを発動していたから助けるのは簡単だった。けれど問題がひとつあり、俺はアニーやセフィーにも含め人前でGXモードの力の少ししか 発揮する事が出来ない。
あまりにも逸脱した力を発揮するとGXウェポンのGXモードの使用を気づかれる危険性があるからだ。
けれど俺は、龍の前足に潰されて泣きながら苦しんでる子供を見て、そんなことは考慮しきれなかった。
「俺!あの子を助けたい!!」
俺は剣を抜き、アニーとセフィーに伝える。
アニー「そりゃあ、そうこなくっちゃなあ!!」
セフィー「私が魔弾で奴を射抜くから、命中した瞬間に…」
「それじゃ遅い!」
「うわあああああん!!痛いよおおおおお姉ちゃああああああん!!!!!」
瞬間、俺は踏み潰されて内蔵をぶちまけてペチャンコになる寸前になっていた子供デモビッドを助け出しふたたびセフィーとアニーの元へと戻って抱き抱えた子供を地そっと面に下ろした。
その間は3秒にも満たないが子供デモピッドを踏みつけていた黒龍ニーズ・スティーラーは魔王の幹部である”黒龍使いの「二ルズ」”のペットで、その戦闘力は非常に高く、口から放たれた黒炎で、町一つを灰燼に変えてしまう事など容易い、おまけに敵探知範囲を
キレたニーズは飛び上がると口から黒炎の球を生成した
アニー「やばい!ニーズの黒炎が!!このままじゃ…!」
セフィー「この距離で撃たれたら私の魔法壁でも防ぎきれない!早く逃げないと!」
「いや、いい・・・」
俺は目の前の龍に向かって剣を突き出す剣先から魔法陣を展開させながら俺は2人に伝える。
「その子の目、守ってあげて。あと自分達の目も」
俺は剣先に展開した魔法陣から巨大化させ、続けて巨大化した魔法陣から巨大な魔力光線を放つ、同時にニーズも黒炎の球を発射するが、俺が繰り出した光線に飲み込まれて、そのまま龍は爪ひとつ残すことなく光線に直撃した光線により消し飛んだ。
や、ややや…!やってしまったー!! 子供の命が危なかったのと少し子供の前でカッコつけたいという欲から遂今まで見せないようにしてた”本気に近い力”を人前で出してしまったァァァ!!!と、直後の俺は内心思っていた。。。
アニー「た、たまげた、いつの間にこんな技を…」
「い……いやぁ……あはは……セフィーの大技を真似しようと思って、実はコソコソと練習してたんだ」
セフィー「でも、あんな魔力量…一体どこから?」
「そりゃあ…この子を助けたかったから?」
俺は地面に腰を着いた
「やべ…出しすぎて動けねえ…回復魔法も練れんかも…」
勿論、回復魔法を練らなくてもGXモードの常時能技、自然超回復の効果により何もせずとも回復出来るし、魔力も半分未満しか消費してない上に、常時能技、自動魔力貯蔵で即魔力量は元に戻ってしまうのだが、GXモードの事を二人に悟られない為に、常時の効果を極限まで抑えながら演技している。
いやぁ……これがなかなか疲れる……!!
「お、お兄ちゃん…」
「ん?おお!無事で良かった!目痛くないか?ピカッと急に光ったけど…」
「うーうん、へーきだよ!」
「そっか…良かった…」
「おにいちゃん、助けてくれて、ありがとう!!」
デモピド族の女の子は俺に微笑んでくれた。
うわ……俺、完全にヒーローじゃん……我ながら……か……カッコイイ〜・・・
・・・なーんて……表世界の頃はGXモードがあったし、都合良くカッコよく決めれたもんだが・・・今の俺にはGXモードのない。
おまけにGXモードに依存し続けたツケで今のGXウェポンを使えない俺はレベル平均以下の弱弱冒険者である。
痛いのも苦しいのも実際の所今でも嫌だから戦闘なんて仮想戦闘であってもしんどい・・・
だが、苦しさと痛みと怒ったセフィーの恐ろしさを天秤に掛け、苦しさと痛みを選んだ俺は特訓し少しはつよくなった。そして段々と思うようになった…”今の俺でもちゃんと勇者になれるんじゃ?”と・・・
けど、現実はそうは甘くなかった…目の前の敵は俺の想像の遙か上を行っていた。それもその筈、ここはゲームで言う二周目の世界、一周目の序盤の強さの俺には2周目の敵とまともに戦える筈が・・・無い。でも、
「それでも、カッコつけたくなっちゃったんだよなぁ…」
へへ…何やってんだか、痛みと苦痛と自分への羞恥心で笑ってしまう。
だけど、このまま負ける訳にはいかない…あの時の女の子の笑顔が再び頭にフラッシュバックする。
ふと、俺は横を見ると建物の陰からこっちを見てる
助けた男の子の姿を見た。
「余所見してる暇は無いんじゃないかあ!!!???」
「ぐうううおおおおああああ!!!」
再びあの時の勇者に成るべく、俺は全ての力を振り絞り、今の己が勇者で在れる唯一の証となった大剣を構え魔者を迎え討つ!
※デモピド族…一本角を持つ魔族、表世界に置いては人間と友好関係を築いているが、裏世界では・・・?
※暴れ龍 ニーズ・スティーラー…漆黒の龍で魔霧属性は風と炎、気まぐれでヒト族か女神派の魔族が住む街に降り経てば暴れ回り瞬く間に更地に変えてしまうと言い伝えられている。




