第六十四話 師弟の時間
第六十四話 師弟の時間
オレンジ色の長い髪をした少女が、会場外のベンチで疲れ果てた様子で座り、うつろな瞳で虚空を見つめていた。
力なく隣の柱に身を預けるその姿は、まるで精神を削り取るような「厳しい尋問」を終えたばかりのようだった。
「師匠!?」黒髪の「少年」ランは、ようやくシンポジウム会場の人混みから抜け出した。
もともと厭世的な色が濃いその顔は、オレンジ色の髪の少女を見つけた瞬間、陽の光を浴びたかのようにパッと輝いた。
それは男女の恋慕ではなく、純粋な依存と幸福感に満ちた輝きだった。
「ラン……」一方のエイブリンは、疲れ果てて喜ぶ気力すら残っていなかった。
わざわざランに会うためにやってきたというのに、数人の七賢者に小部屋へ連れ込まれ、長々と「心配」という名の追及を受けてしまったのだ。
「師匠、なんだかすごく疲れてるみたい?」ランは不思議そうに尋ねながら、退屈しのぎにエイブリンの頬をそっと指でつついてみた。少女の姿になった後の肌は、驚くほど柔らかい。
変身魔法というのは実に便利なものだ、肌の状態まで若い頃に戻せるのだから。
「これはね……」エイブリンは先ほどの情景を思い出し、さらに深く壁に寄りかかった。
(この姿のせいで、あいつらに子供扱いされて頭を撫でられ、頬をつままれ……)彼女は若返り、白く繊細になった自分の手を見つめた。
「次は、絶対にこんなに若く変身しない……」エイブリンは拳を握りしめ、決意を込めて言った。完全に子供扱いではないか。
ランは横を通りかかる人がいるのに気づくと、小動物のような敏捷さでベンチの後ろに隠れた。
去りゆく背中を警戒心に満ちた瞳で睨みつける。エイブリンは俯いて彼女を見た。
「他の人と、ちゃんと話せたの? ラン」エイブリンは手を伸ばし、優しく彼女の頭を撫でた。
すると、黒髪の「少年」は悪いことをした子供のように顔を背け、エイブリンと目を合わせようとしない。
「は、はい……」ランは緊張した面持ちで囁いた。
「嘘ね」エイブリンは呆れたように嘆息した。
自分の弟子が、これほどまでの人見知りで偏屈な性格であることは百も承知だ。
「嘘をつくときに視線が泳ぐ癖、まだ直ってないわね……」ベンチに座っていた少女は、ゆっくりと立ち上がった。
「だ、だって、あいつら寄ってたかってあれこれ聞いてくるんだもん!」ランはここぞとばかりに愚痴をこぼし、話題を逸らそうとした。
「透明化の魔法だって、奴らに邪魔されて解除されちゃったし!」彼女は、自分の魔法を妨害し続けた魔女たちにすべての責任を転嫁した。そうでなければ、もっと早く逃げ出せたはずなのだ。
「そもそも今日は、魔法で小石の人形をどう解決するか実演するだけだったんだから、議論なんて必要なかったのに……」
黒髪の「少年」は口を尖らせて不満げに呟いた。
もともとこうした場に参加するのは気が進まなかったが、あの魔法を完璧に再現できるのは、この世で彼女しかいない。
「それに、私が嘘をついても魔法の代償反動は受けないから、大丈夫!」ランは急に自信を取り戻したように胸を張った。
相手が「嘘を見破る魔法」を使わない限り、どんな嘘だってつける。
「それより師匠、どうしてずっと嘘をつかないなんて貫いてるの?」ランは不思議そうに首をかしげ、目の前の少女を見つめた。
(また風邪をひかないか心配なんだよ)ランは内心で思った。師匠が風邪をひけば、看病するのは自分なのだ。
「私は普段から嘘はつかないわ」エイブリンは平静に言った。その瞳には、一瞬だけ淡い感傷が宿った。
「そうすれば……他人が私に嘘をついているかどうかも、簡単に見分けられるようになるから」
エイブリンの視線は遠くを彷徨い、まるで今は亡き故人を懐かしんでいるかのようだった。
「嘘は人間の天性だって、聞いたことがあるけど……」ランは「人間が嘘をつくのは当然のことだ」と独り言を言いながら、師匠の手をそっと握った。
「じゃあ、街に行こう!」ランは瞬時に興奮を取り戻した。
ようやく会場の魔女たちから解放され、師匠と二人きりになれたのだ。
エイブリンは複雑な表情で、男装したランの姿を見つめた。
「イチゴケーキも食べられるし!」ランは瞳を輝かせて付け加えた。
会場では巨大なイチゴケーキを一皿食べただけだ。彼女にとっては、食べたうちに入らない。
「どうしたの、師匠?」ランはエイブリンの沈黙と微妙な表情に気づいた。
「もう……別の姿に変えられない?」エイブリンは少し顔を背け、言いにくそうに切り出した。
(男の姿でさえなければいいのに……)彼女は男性の姿に極端に弱い。
せっかくシンポジウムも終わったのだ、もっと見慣れた姿に戻ってもいいのではないか。
前回、ランが中年男性に変装した時のことを思い出し、エイブリンの心は再び複雑になった。
「師匠、やっぱり男が怖いの……?」ランは首をかしげた。昨日やっと魔法帽の中の変装魔法陣を苦労して改良したばかりなのに、今また変えるというのか。
「でも、私の中身は女の子だよ!」ランは少年の姿のまま、理不尽に強気な宣言をした。
「見た目の問題よ……」エイブリンは視線を逸らした。男性の外見に触れるだけで、生理的な拒絶反応が出てしまうのだ。
「さっきはシンポジウムで変装が必要だったから我慢していただけ。もう終わったんだから……」実際、二人は今「こっそり抜け出してきた」身分なのだ。
「今なら女性の姿になれるでしょう……」エイブリンは呆れたように言った。ランの前では気にしないふりをしているが。
(ランは本当に、私の言うことをこれっぽっちも聞いていない!)エイブリンは横目でランをうかがい、少しばかり腹が立った。
「私はもう何度も男に変装してるんだから、師匠もそろそろ慣れてよ……」ランは不機嫌そうに口を尖らせた。
「私の方こそ聞きたいわ。どうしてあなたは、毎回わざわざ男の姿に変装するの?」エイブリンは理解できずに尋ねた。外見を変える魔法などいくらでもある。
視覚認知歪曲、変身術、性別変換、完全変形術……それなのに、ランは結局いつも男の姿を選ぶ。
「もちろん、師匠が喜ぶと思ったからだよ」ランは、自分こそが最高に正しい決断を下したのだと信じて疑わない。
「私が男を怖がっていると知っているなら、私の前で男に変装すべきじゃないでしょう……」エイブリンはさらに困惑した。
何度も「私の前で男に変装しないで」と言ってきたはずなのに。
黒髪の少年は魔法帽のつばを深く引き下げ、俯いて小さな声で言った。
「だって、家のアルバムにある写真……全部、師匠と二人の男が写ってる写真ばっかりだし……」ランは声を落とし、ぷいと顔を逸らした。
エイブリンは驚愕に目を見開き、目の前の彼女を見つめた。思考は瞬時に、あの二人と共同生活を送っていた遥かなる時空へと引き戻された。
「だから私は、師匠って……」ランはさらに声を低くして続けた。
「本当は、心の底では男を求めてるんじゃないかって思ったんだよ!」ランは突然顔を上げ、自信満々に自分の結論をぶちまけた。
その瞬間、空中に現れた魔法の杖が、彼女の頭を「ポコッ」と叩いた。
「痛い! 私、間違ったこと言った!?」ランは頭を押さえ、納得がいかない様子で考え込んだ。隣には怒りで頬を膨らませたオレンジ色の髪の少女がいる。
「男が怖いのは、周りに男が足りないからじゃないの? 師匠をもっと男に接触させれば、きっと克服できるはずでしょ……」
(私はそう思ってたんだけど……違うのかな?)師匠が自分で認めたくないだけじゃないのか。私は間違っていないはずだ。
「せっかく毎日こっそり師匠のために『接触特訓』してたのに!」まさか、苦労がすべて無駄だったというのか。
今回の変装魔法は完璧で、誰にも本当の性別は見破られない自信があったのに。
(本当はたまには人間以外の姿も試してみたいけど……)チャンスがなかなかない。
「はあ……」エイブリンは呆れ果て、杖を手にして深くため息をついた。
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「ジャジャーン!」一人の黒髪の少女が、見慣れた白い猫のマントを羽織って、雀躍するように彼女の前に現れた。
「前に一緒に買ったやつだよ! 師匠、私がこれ着てるの見るの初めてでしょ!」
「上にあの変形を引き起こす魔法陣があったから、特殊な塗料で禁止線を引いたんだ。ほら、この『禁止』ってマーク。これで一時的に魔法陣を無効化できる。もちろん、これは描いた本人だから有効なんであって、他の人が勝手に塗ったら魔法の反動を食らうけどね」
「結構いいでしょ……」
オレンジ色の髪の少女は彼女を見つめた。表情に大きな変化はなかったが、その瞳は柔らかく緩んでいた。
(男の姿でさえなければ……)エイブリンは内心で密かに安堵した。
「それから、師匠の分もあるよ!」ランは興奮した様子でもう一着のマントを取り出した。
「黒猫のコスチュームだよ!」つまり、エイブリンにもこれを着てほしいのだ。お揃いの「猫師弟コーデ」にしようというわけだ。
「私は着ないわ……」エイブリンは不本意そうな顔で即座に拒否した。
自分がいったい何歳だと思っているのか。
エルリスやセレンよりも遥かに古参の存在であり、魔法界の生ける化石、前任の……。
「もう子供ではないのよ」しかし、少女の姿でそんなことを言っても、まったく説得力がない。
「師匠の今の姿、子供だよ! 絶対、超似合うって!」ランは黒猫のマントを高く掲げ、諦めずに食い下がった。
「着て! 着てよ!」ランはまるで雀躍する小鳥のように、エイブリンの周りを飛び回りながら騒ぎ立てた。
「嫌よ」エイブリンは顔を背けて頑なに拒んだ。
「それとも、白い方がよかった?」
「色の問題じゃないわ……」
「だって、師匠が自分でこんなに若い姿にしたんだから!」ランにとっては絶好の機会だった。師匠自らが少女の姿を選んだのだ。何百……いや、何歳だろうと、今こそこんなに可愛いコスチュームを試すべき時なのだ。
エイブリンは不機嫌そうなランを見て、今日一日は彼女に付き合うと約束したことを思い出した。師匠として……。
(これからは、絶対にこの姿で出かけたりしない……)エイブリンは心の中で固く誓った。
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結局、彼女は着ることになった。
オレンジ色の髪の少女は、決まり悪そうに黒猫のマントを羽織って魔法都市の街を歩いていた。
頭についている一対の大きな黒い猫耳が、彼女の心情に合わせて時折ピクピクと震える。
「目立ちすぎるわ……」エイブリンは恥ずかしさにうつむきながら、フードを深く被り直した。
この年齢でこんな服を着て、もし他の七賢者に見つかったらどうすればいいのか。考えるだけで気が遠くなる。
隣では、白いマントを羽織ったランが堂々と街を闊歩していた。
顔にはクールなサングラスをかけている。彼女は振り返り、落ち着かない様子のエイブリンを見た。
「この服が可愛すぎるから、みんな見てるんだよ〜」ランは嬉しそうに言い、頭の上の白い猫耳をパタパタと震わせた。久しぶりに師匠と二人きりになれた今日を、彼女は存分に楽しむつもりだった。
「前にあの奴とこの格好で街を歩いた時も、たくさんの人に見られたんだ……」ランはライラと一緒に猫のコスチュームで手土産を買いに行った時のことを思い出した。あの時は二人とも男装していたのだが。
「このタイプの服を商品として売り出してみようかな……みんな、この猫マントが好きみたいだし」
ランは真面目に商機を考え始めた。自分とライラの外見が目立ちすぎているせいだとは微塵も思っていない。
(着ると猫にも変身できるなんて、きっと面白い!)その時は、街中に猫が溢れるに違いない。想像するだけで賑やかそうだ。
(それに、人口密度も減らせる……)いや、人混みの環境を改善できるはずだ。
エイブリンは、隣で静かに思考に沈むランを見つめた。
(どうやら、彼女もだんだんこちらの生活に馴染んできたようね……)ふと安心感を覚え、軽く息を吐いた。頭の上の黒い猫耳も従順に垂れ下がる。
「ケーキ食べに行こう! イチゴケーキ!」ランは突然思考から引き戻され、興奮気味に提案した。
シンポジウムではほとんどケーキを食べられなかった。自分の背丈ほどもある巨大なケーキを、たった一個食べただけなのだ。全然足りない。
「はいはい。でも、私はそんなに食べられないからね……」エイブリンは呆れたように笑って承諾した。シンポジウムですでにブルーベリーのデザートを山ほど食べさせられ、今日のブルーベリー摂取量は完全にオーバーしている。
(でも、いくつか美味しい料理があったわ。帰ったらマリアに試作させてみましょう……)エイブリンは思った。どうやら彼女も、女僕が甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる生活に慣れてきたようだ。
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「火魔法、水魔法、土魔法、風魔法……すべて使えない」
これら四つは、最も基礎的な魔法として知られているものだ。
七賢者の一人、「高冷の魔女」エルリス。数多の弟子を育て上げてきた彼女が、まさかこれほどまで指導の難しい相手に直面するとは。
彼女は信じられないといった面持ちで、目の前の金髪の「少年」——ライラを見た。
「初めてです……基礎魔法の一つも使えない魔法使いに会うなんて」彼女は重苦しい口調で言った。
これはもはや、上級魔女としての彼女のプライドと教育能力に対する巨大な挑戦だった。
(しかも、彼女は黒魔術師だというのに……)エイブリンから託されたこの弟子、ライラ。
幸運と呼ぶべきか、それとも頭痛の種と言うべきか。まさか、どんな基礎魔法も使えないとは。
「前回、私の魔法封鎖を強行解除した時は、魔法を使えていたでしょう?」エルリスは思い出した。ライラがかつて使った魔法——相手の顔さえ知っていれば遠距離から観察できる「覗き見魔法」。
(それに、あの契約即発動の『主従契約』……)彼女は、それらの魔法なら使えるのだ。
「具体的な発動条件と必要な代償さえわかれば、発動できる魔法は当然使えます」
金髪の「少年」は首をかしげ、「当然だろう」という顔をした。
「でも、あの『感覚』や『気配』といった抽象的なものを代償とする魔法は、私には無理なんです」
たとえば、風の流れを感じる、水の気配を感じる、大地の脈動を感じる……。そうした自分の外にある「虚無縹緲」としたもの。
エルリスは静かに彼女を見つめた。
「つまり……すべての初級魔法が使えないということ?」彼女は顔をこわばらせて結論づけた。
すべての初級魔法は、大自然を感じ取り、自然の元素を代償として行使するものだ。いわゆる「身の外にあるもの」。これは最も簡単で基礎的な代償体系なのだが、ライラにはそれがまったく通用しない。
(これは、かつてのシャオよりもずっと深刻だわ……)これはもはや、魔法を「制御」できるかどうかの次元ではない。エルリスは頭を痛めた。
(それにシャオは、私のもとを去った後、あっという間に飛行魔法を覚えた……)
エルリスの表情は思わず暗くなった。自分が三年かけても教えられなかったことを、他の魔女のもとへ行けばすぐに克服してしまったのだ。
(彼女はもう初級魔女に昇格し、中級への突破も近いと聞く……)
(やはり……私の教え方に根本的な欠陥があったのかしら?)エルリスは悩んだ。自分のこれまでの教育パターンに、何か致命的な間違いがあるような気がしてならなかった。
金髪の「少年」は、落ち込む彼女の横顔を静かに観察していた。
(けれど、せめて飛行魔法だけは覚えないと……)ライラは内心で計算していた。
そうでなければ、自分とランの間の距離がどんどん離れていくような気がする。
あの魂が引き裂かれるような焦燥感は、二度と御免だ。
「とにかく、まずは飛行魔法を習得できるよう努力します」ライラは積極的に口を開いた。
「エルリス師匠」金髪の少年は、標準的な微笑みを浮かべた。
もちろん、その笑顔は即座にエルリスの体内の「嘘見破り」魔法に、聞き慣れた警告音を鳴らさせた。
「……他の魔法もしっかり覚えてちょうだい」エルリスは呆れたように額を押さえて言った。
一体どこの世界に、魔法を一種類しか使えない魔法使いがいるというのだ。
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