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代償魔法  作者: 若君
第1章は44話まで更新、9/1で停止します。第二章は年内に公開できると思います。
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第六話 魔法発動

第六話 魔法発動


少女はその場に立ち、傍らでメイドと国王が彼女を見つめていた。


「王国を……救う……」

少女の虚ろな瞳に、国王の言葉が反響する。

王族特有の魔法を使えば、国民の意思に関わらず、彼らを代償として魔法使いを召喚し奴隷とすることができる。

魔導書にはこう記されていた──

一人の勇敢な王族が、『自発的に犠牲になる平民』を率い、魔法使いを召喚して王国を救う。


(正直言って、本当に自発的に犠牲になる国民なんているのか……)

国王は内心で考えた。

(彼女は死刑囚を使っただけで失敗したというのに……)

こんな代償まで背負って。

(もしかしたら最初から『自発的に犠牲になる平民』など存在しなかったのかもしれない……)


彼は目の前の実の娘を見た。

(ひょっとすると、この文章の鍵は『自発的に犠牲になる王族』なのか……)

平民の同意など関係なく。


「ライラ、この魔法は『死ぬ覚悟』がなければ発動しない」

国王は低い声で言った。


「一人の『勇敢な』王族が、自発的に犠牲になる平民を率いて……」

その声が少女の耳元で旋回する。

「魔法使いを召喚……王国を救う……」

少女の足元に魔法陣が浮かび上がった。


「ライラ様!」メイドが叫んだが、魔法陣の中心に立つ少女には反応がない。


「救う……王国を……」少女はかすかに呟く。

どんな代償を払おうと、王国さえ救えればそれでいい。


白い光が次第に彼女の姿を飲み込んでいく。

(成功するのか……)国王は期待に胸を膨らませて見つめた。

(我がものとなる魔法使いを!)

彼は興奮を抑えきれなかった。


グレンヴァークを倒せる魔法使い、これほどの代償を払って召喚した魔法使い──

それはまさしく「最強の魔法使い」と呼ぶにふさわしい!


彼らは部屋の中央で広がる白光を見つめた。


---

突然、白光は墨で汚されたように黒く染まり、無数の悪霊が魔法陣を食い破った。

砕ける──魔法陣は崩壊し、少女は地面に倒れた。

「ライラ様!」メイドは慌てて駆け寄った。

「失敗したのか?」国王は恐怖に震えながら呟く。

(いや、魔法は代償を払えば必ず発動するはず……)

「失敗」などということはあり得ない。


「明明魔法陣已經出現……」どうして途中で崩壊する?

少女の周りには無数の悪霊がたむろしている。

「この少女の魂は……」そのうちの一匹が口を開いた。

「我々のものだ!」

悪霊たちは残忍な笑みを浮かべ、メイドの方を見た。


メイドは恐怖で地面に座り込み、近づくことができない。

「彼女は代償として使えない」

悪霊たちが囁くように言った。


「魔法は発動した~」

「代償は移転する~」

彼らは背筋が凍るような笑い声を上げた。


突然、国王の足元に魔法陣が現れた。

「いや!やめて!死にたくない!」国王は恐怖に叫んだ。

彼の姿は白光に飲み込まれた。

「一人の国王と五万四百十三人の国民を代償に、召喚!」

「召喚!召喚!」悪霊たちは部屋中で咆哮した。


国王が消えた後、魔法陣の中に人影が現れた。

部屋で唯一意識のあるメイドは、眼前で起こっている全てを見ていた。

「出てきた!」悪霊たちは興奮して叫んだ。

光が散ると、菊色の長い髪をした魔女が魔法陣の中に立っていた。

「まさかこれは……」彼女は低く呟いた。


「召喚されたのは──『辺境の魔女』!」

悪霊たちは興奮して吼えた。

「彼女は……?」メイドは震撼しながら彼女を見た。

「師匠!」私は転送魔法陣で即座に現場に駆けつけた。

「来るな!」彼女は叫んだ。

地面から無数の鎖が現れ、彼女の四肢を縛り上げた。


「うっ……」首輪が首に巻き付こうとした瞬間──

砕ける──首輪は崩れ落ち、四肢を縛る鎖だけが残り、次第に透明で形のないものになっていった。

だがその圧迫感と制限は、依然として明確に感じられた。


「師……師匠……」私は緊張して彼女を見た。

「まったく、どうしてこのバカ弟子と同じ目に遭う羽目に……」

「バカじゃないです!」私は反射的に言い返した。


彼女は鎖の束縛を感じながら手を上げ、首に触れた。

「代償が不完全で、奴隷魔法は完全には発動しなかったようだ」

「だがこれは……」彼女は次第に薄れていく無形の鎖を見た。


少女の体からは無数の悪霊が漂っている。

「王国を救え!グレンヴァークを殺せ!」

「王国を救え!グレンヴァークを殺せ!」

「王国を救え!グレンヴァークを殺せ!」

悪霊たちは呪いのように叫び、最後には少女の体内に戻っていった。


彼女は地面に茫然としているメイドと、意識を失った少女を見た。

「はぁ……」長いため息をついた。


---

ベッドの上の少女がゆっくりと目を開いた。

「私はまたどうしたの……」体を起こしながら。

「今度は無意識に眠ってしまったのか……」

「マリア?」彼女は周囲を不思議そうに見回した。


「私も行く!」

「駄目!」

「王宮で待ってなさい」

若い女の子と成熟した女性の声が、部屋の中で交錯する。


「だから言ったでしょう、魔法使いの戦闘力は強すぎてはいけないと」

彼女は紅茶を一口飲んだ。

「生活に必要な魔法だけ残しておけばよかったのに」

「でも師匠が強いんだから、弟子も弱くては!」

「強いからこそトラブルに巻き込まれるのよ!」

「昔話が始まるんですか!」

私は興奮して言い、その時傍らの少女が目を覚ましたのに気づいた。


「あ!起きた!」


私は瞬時に彼女のベッド前に移動し、押さえつけた。

「この野郎、よくも師匠に……」

私は怒りに震えながら彼女の襟首をつかんだ。

「やめなさい……」師匠が言うと、私の体は浮遊魔法で持ち上げられた。

「くそ、浮遊魔法……くそくそ!」私は空中で拳を振り回した。


「ごめんなさい……」少女はゆっくりと口を開いた。

「私……何をしたのか覚えていません……」

記憶を失う症状はますますひどくなっていた。


---

「五万四百十三人の国民に、国王まで……」少女はテーブルに座り、信じられないというように呟いた。

王族の魔法は、国民を代償として魔法使いを召喚する。

「五万人……私が師匠を召喚した時はたった百人だったから、師匠は私の500倍強いんですか?」

私は真剣に考え込んだ。


「そういう計算じゃない」師匠が言った。

「王国の半分の人口と、王族の命一つだ」

本当に王国を救うなら、国民の半数以上の代償が必要となる。

「一命は一命、そういう換算だ」

王族は魔法を発動させるための起爆剤なのだ。


「とはいえ、どうやら君たちも国民の同意を得ていなかったようだね」

師匠は自分の首に触れながら言った。

「だから奴隷魔法は完全には発動しなかった」彼女は微笑んだ。


少女は緊張して彼女を見た。

「だが少なくとも──『グレンヴァークを倒す』という点は、おそらく実現できるだろう」

「どうやら、これが術者の最初の願いだったようだ」

魔法使いを奴隷にすることではなく、グレンヴァークを倒して王国を救うこと。


彼女はこの若い王女を見た。

(意識が朦朧としている中で、これほど強い信念を持っていたのか……)

「この意志で、体にまとわりつく悪霊を追い払えたらいいのだが」


「さて、今の私はこの王国に縛られた」

無形の鎖が彼女を縛り、王国から出ることを許さない。

「グレンヴァークが来るまで、私は王国から一歩も出られない……」

彼女は立ち上がった。


「王国の中を散歩してこよう」

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