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代償魔法  作者: 若君
第二章 魔法学院
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第四十五話 嘘の代償


第四十五話 嘘の代償


小屋の外では、陽光が幾重にも重なる木々の葉を透かし、細かな光の斑を落としていた。

セレンは子供の姿のまま、両手を腰に当て、ドアの外で威勢よくマリアに警告を発していた。

「いいわね!もしエイブリンにほんの少しでも傷を負わせようものなら、絶対に、絶対に許さないからね!」彼女の幼い顔には、外見にそぐわない鋭い眼差しがあった。


「承知いたしました、セレン様」マリアは扉口に立ち、恭順の姿勢で軽く会釈した。

「どうかご安心してエイブリン様をお任せください。心を込めてお世話いたします」マリアは平静に、眼前の子供体型の賢者を見つめて言った。

「お前だからこそ一番不安なんだよ!」セレンはむくれながら反論した。明らかにこの元メイドに対して不信感でいっぱいだった。


「まあ、でもとにかく私はお前の『真名』を手に入れたからね」セレンの口調には少し狡さが混じっていた。彼女はマリアの師弟契約書から、彼女が隠した真の姓名を覗き見ていたのだ。

真名を掌握することは、ある種の鍵を握ることに等しく、監視すら可能になる……

「もし悪巧みでもしようものなら、すぐにでもお前の前に突入してやる!」セレンは外で小さな拳を振りかざし、声を荒げて再び警告した。


「師匠!ついに俺たちと帰ってくれるんですね!」屋外の白ローブの弟子たちはそれを見ると、瞬時に興奮した。

「帰ったら打ち上げしよう!」後ろの弟子たちは泣きそうになりながら、長年の待ち侘びがようやく実を結んだかのようだった(※実際には数日しか経っていないが……)。

「打ち上げなんてとんでもない!」セレンは振り返り、眼を据えて彼らを睨みつけた。

「帰ったらすぐに全員の魔法の進捗を検査する!不合格者には——」彼女は声を潜め、悪辣に宣告した。

「全員最初からやり直しだ!」


「ええーっ……?」弟子たちは瞬時に悲鳴を上げた。

「ここ数日、師匠を探すので精一杯で、練習する時間なんてなかったんですよ!」彼らの日課は、魔法都市からはるばるこの森まで飛んで来てセレンを探すことだった。

「知るか!ほっといてくれって言っただろう!」と、セレンは心の中で思った。


その時、エイブリンがゆっくりと戸外へ出てきた。

「エイブリン!」セレンはそれを見ると、すぐに駆け寄り、彼女に抱きついた。

「エイブリン、体を大事にしてね。何かあったら、いつでも私に言うんだよ、わかった?」セレンは小さな顔を上げ、心配そうに言い聞かせた。

エイブリンは胸の中の小さな姿を見下ろし、優しく微笑んだ。

「うん、わかった」彼女は手を伸ばし、セレンの髪をそっと撫でた。かつてよくそうしていたように。

ただ今回は、その笑顔に少しばかり心からの温もりが宿っているようだった。


セレンは弟子の杖の後部座席に座り、ゆっくりと浮上した。

「じゃあ、我先に行くね!薬草が足りなくなったら、すぐに人をよこすから!」セレンは空中で手を振りながら叫んだ。

続けて、彼女は周囲の弟子たちを見つめ、口元に意地悪な笑みを浮かべた。

「ここ数日、毎日私を探しに飛んで来てたんだから、飛行技術はかなり上達したんだろうな?」

「帰ったら最初に、飛行技術の検査だ!」彼女は宣告した。顔には小悪魔的な悪笑が浮かんでいた。


「やめてええええ——!!」弟子たちの絶叫が森に響き渡った。


---

小屋の入口では、やかましい一行を見送り、周囲は瞬く間に森本来の静寂を取り戻した。残されたのはエイブリンとマリアだけだった。

「ところで、あなたのことをどう呼べばいいのかまだわからなくて」エイブリンはマリアを見た。もちろん直接相手の真名を呼ぶわけにはいかない。

「マリアとお呼びくださいませ、エイブリン様」マリアは静かにドアを閉め、恭しく答えた。

「マリア、か……」エイブリンは思案気に繰り返した。


「ブルーベリーケーキ以外に、どんなお菓子が作れるの?」


---

「お二人は本日から編入される……」広々とした明るい教室の教壇で、教師が突然現れた金髪と黒髪の少年をクラス全員に紹介していた。

「自己紹介をお願いします」教師の言葉が終わるか終わらないかで、全ての好奇の視線が二人に集中した。

「レイと申します。どうぞよろしく」サングラスをかけた金髪の少年は優雅な微笑みを見せた。

「ランオン」傍らの黒髪の少年は冷たい口調で、名前だけを吐き出した。


「あの二人だ!昨日見かけた!」教室中に興奮した囁き声が一気に広がった。

「二人ってどんな関係なの?」ある生徒が好奇心を抑えきれず、興奮して直接聞いた——特に昨日のあの「注目すべき」飛行姿勢(ランがライラが落ちないように抱きかかえ、ラン本人は何の気もなしだったが、ライラは明らかにそうは思っていなかった)について。


すると金髪の少年レイが自然に傍らの黒髪の少年の手を取った。

「恋人ですよ」彼は微笑みながら宣言した。

ランはただ呆れたように彼女を一瞥しただけで、反論しなかった。周囲に人が多ければ多いほど、彼女の言語能力は自動的に低下するようだ。

「きゃあああ——!」教室は瞬時に沸騰した。


「さあさあ、皆さん落ち着いて」傍らにいた女性教授は呆れながら秩序を維持した。

(確かに男性魔法使いは少ないが、性別を変える魔法がないわけでもない……)女性教授は内心ぼんやり考えた。

(ただし代償として、通常はある身体部位が縮小する後遺症が伴う)


---

休憩時間が始まると、彼ら二人は案の定クラスメートにぐるりと囲まれた。

「師匠はエルリス様ですよね?エルリス様の弟子ってどんな感じ?」

「どこから来たの?基礎学院では一度も見かけなかったけど」質問が機関銃のように襲いかかる。


ランは人群の中心に無言で立ち、無表情だった。

(人が多いところは嫌、嫌、嫌……)彼女の内心は繰り返し、顔色もますます優れなくなっていく。

ライラは彼女の不快感に気づき、ひらめいた。


「私たち、魔法のない国から来ました」金髪の少年はサングラスを押し上げながら、微笑んで率直に言った。

この言葉は沈黙の呪文をかけたようで、さっきまでの騒々しさが一転して静寂に包まれた。空気が凝固したかのようだ。


---

「この方法、やはり結構効果的ね」金髪の少年ライラが呟きながら、自然に黒髪の少年ランオンの手を握り、学院の壮大で輝く廊下を歩いていた。

周囲から様々な視線が注がれるが、もはや話しかけてくる者はいない。

「学校って、しばしば差別が最も根深い場所の一つだから」ライラの長年の観察と研究によって導き出された結論だ。

こういうことは、どの世界でも同じようだ。彼女はちょうどこれを利用した。以前の彼女なら、決してこの方法は取らなかっただろう。貴族としての礼儀を守るのが重要だったからだ。


だがライラは傍らのランを見た。

(しかし、ランがどうやら人の多い環境を非常に好まないようだから……)

こうすれば彼女を助けつつ、彼女と共に過ごす時間を独り占めできる。まさに一石二鳥だ。

周囲の人々は彼らに複雑な視線を向け、好奇、探求、さらには軽蔑さえ混じっていたが、結局誰も話しかけてはこなかった。


ランは無表情で傍らを自動浮遊する魔法のページをめくり、周囲の変化には全く気づいていないようだった。

「ランはこういうの嫌い?」ライラが優しく尋ねた。

周囲から明らかに排斥されるのは、完全に無視されるより幾分か辛い。

「別に」ランは冷たく答えた。どうせ普段も一人だから。


「私はずっと傍にいるからね」ライラは彼女の手を握りしめ、優しい口調で言った。

ランは魔法書に集中して彼女を相手にしなかった。

(こうすれば……私だけのものにできる……)ライラは心の中で呟き、さらに奥深くで別の声が響いた。

(誰にも傍から奪わせたりしない……)


「あら、シャオ先輩だ」ライラの視線が前方廊下の突き当たりで、こっそり逃げ出そうとしているシャオを捉えた。

シャオは彼らを見るなり、驚いたウサギのように、素早く柱の陰に隠れ、自分が存在しないふりをしていた。

「まあ、どうやら私たちの『噂』は完全に広まってしまったようね」距離を置くのは賢明な判断だ。

「何と言ってもあの人、昔から風見鶏が一番得意だから」彼らは何事もなかったようにシャオが隠れる柱の傍を通り過ぎた。まるで彼女を見ていないかのように。


「ランオン、さっきから何を見てるの?そんなに集中して」ライラは注意をランに戻した。

「面白い授業」ランは簡潔に答え、視線は依然として魔法書に留まっていた。


---

「は、危なかった……」彼らが遠ざかったのを確認して、シャオはようやく柱の陰から顔を出し、安堵の息をついた。

「見られてないよな……」

しかし、彼女がまだ完全に息をつく間もなく、東方の魔女を象徴する青い魔法ローブを着た女生徒の一団が突然現れ、瞬く間に彼女を取り囲んだ。


「シャオ!お前このやろう、昨日『破魔者』とつるんでたんだってな」先頭の女生徒が嘲るように口を開いた。

「ち、違うんだ……」シャオは瞬時に緊張してどう説明すればいいかわからなくなった。

彼女は万にも思わなかった。あの二人が自ら進んで自分が「破魔者」である身分を公開するなんて、それも入学初日に!

(これじゃあ私にまで迷惑がかかるじゃないか!)同じエルリス師匠門下の弟子として、これはまさに災難だ!


「昨日、多くの人が見てるんだぜ?お前があの二人の『イケメン』を後ろに従えて歩いてるのを、なかなか威張ってたみたいだな」

「間違いなくあの二人だろ?」別の女生徒が遠く離れていくライラとランの背中を指さした。

「昨日はまだ一緒に歩いてたくせに、今日は急いで離れてるじゃん?」嘲る声が次々と上がる。

「聞くところによると、あの二人エルリス様の弟子なんだって?本当かね?」そのうちの一人が「好奇」にかられて尋ねた。

「でもエルリス様はこれまで二人しか弟子を取らなかったはずだよ」もう一人がすぐに「注意」を促した。


これはつまり……

「お前このやろう、もしかして……エルリス様に見捨てられちまうんじゃないのか!」彼女らの笑い声はますます甲高く、ますます猖獗を極めた。

シャオはその場に凍りつき、一言も発せず、反論もできず、ただ苦さと恥ずかしさに飲み込まれ、耳障りな笑い声に包み込まれるがままだった。


「最高の師匠に見捨てられるなんて……」彼女らの嘲笑はそれでも止まらなかった。

「お前って奴、学業成績はまあまあでも、魔法は滅茶苦茶だろ?」彼女と同じ期の魔女として。

「しかもお前の代わりが、二人の『破魔者』だって?」みんなとっくに初級魔女に昇格しているというのに。


「お前のせいで、俺たち東方魔女の資質まで疑われてんじゃないのか?」そうじゃなきゃエルリス様がわざわざ「破魔者」を弟子に取るなんてありえないだろ?

「お前この前、まだ高慢に『三年以内に必ずエルリス様の元から栄光の卒業を果たす』なんて言ってなかったか?」

「もう三年も経とうってっていうのに、お前はまだ飛ぶのもままならない見習い魔女じゃないか!」

「さっさと自覚して、エルリス様の元から離れろ!」

彼女らの嘲笑は毒棘を持つ蔓のように、シャオの心臓をきつく絡み、締め付けた。

過去の自分自身の豪語、今の行き詰った苦境、そして彼女を取って代わろうとする二人の「破魔者」……全てが彼女を深淵に引きずり込む重い枷となった。


---

まだ遠くに行っていないランが、魔法書の特定のページに視線を釘付けにし、顔色が一変した!

彼女は考えるより先に、さっと傍らのつややかな壁に、奇妙な光を放つ複雑な転送魔法陣を「ざっくり」と描いた!


「まあ!上級魔法だ!」周囲の魔女たちはこの突然の変事と強大な魔法波動に驚き、どよめいた。

「誰が発動したの?!」

瞬間的にこれほど安定した転送陣を構築できる者など、並の者ではない!

ランは我も我もと光り流れる転送陣へ突入しようとした。周囲の全ての視線を完全に無視して。


「待って、ラン!」傍らの金髪の少年ライラが慌てて彼女の腕を掴み止めた。

「エルリス様は他人の前で魔法を使うことを固く禁じてたんじゃないですか?」

「あ、そうだった……」ランはようやく我に返り、この戒めを思い出した。

「どうしよう!どうしよう!師匠が……師匠が……!」ランは瞬時に慌てふためき、焦りが全てを圧倒した。彼女はただ即刻エイブリンの元へ駆けつけたくて、エルリスの命令などほとんど忘れんばかりだった。


「そうだ!人のいないところへ!」彼女はひらめき、さっと壁の魔法陣を消し去ると、ライラを抱き上げた。

衆人驚愕の視線の中、一陣の風のように廊下を駆け抜け、広々とした中庭へ一直線に向かった。

その後、彼女は足先で地面の枯れ枝を軽く蹴ると、全ての人が呆然と見つめる中で、「ひゅーっ」という音と共に、弦を離れた矢のように雲霄へと突き進んだ!


「つ、ついさっきのは何だ……」他の者たちはただ突然の猛烈な気流を感じ取っただけだった。

「あの飛行方法……初めて見た……」誰かが頭を仰ぎ、急速に縮小していく彼らの姿を見つめながら呟いた。

シャオも呆然と空を見つめた。黒髪の少年のあの理解しがたい飛行方法については、彼女ももう初めてではない。


ランはライラを抱えたまま、一気に雲層の上まで飛び、地上から誰にもその姿が見えなくなったのを確認すると、すぐに頭上にもっと巨大な転送魔法陣を開き、そのまま潜り込もうとした。

その時、エルリスの姿が瞬間的に彼女たちの前に現れ、行く手を阻んだ!

ランは慌てて足下の枝を強く踏みしめ、空中でかろうじて停止した。


「他人の前で魔法を使うなと言っただろう?」エルリスの眼差しは霜のように冷たく、公然と彼女の命令に背いた二人を見ていた。

「今は緊急事態なんだ!」ランは激動して叫び、声にはかつてないほどの慌て方が満ちていた。

「師匠が!師匠が……!」ランは焦りのあまり言葉に詰まった。

「知っている、落ち着きなさい……」エルリスは呆れたように額に手を当てた。もちろんエイブリンの状況は知っている。ただランがここまで激しく反応するとは予想しておらず、また頭痛がし始めるのを感じた。


「師匠が!風邪を引いたんだ!」ランはようやく叫び出した。顔には巨大な心配と心痛が書き込まれ、まるでこれが天下の一大事であるかのようだった。

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