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代償魔法  作者: 若君
第1章は44話まで更新、9/1で停止します。第二章は年内に公開できると思います。
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第四話 呪いの代償

第四話 呪いの代償


全ての魔法には代償が必要で、より強い代償を払えば、より強力な魔法を得られる。

中でも人間の魂は最強の代償だ。


私はラン。十六歳になったばかりの見習い魔女で、称号は『孤僻な魔女』。

これは師匠である『辺境の魔女』エイブリンに似せたものだ。

当時こそ強く反対されたが、結局この名前にした。


師匠は魔法契約の関係上、弟子を一人しか取れない代償を背負っている。

今、唯一の弟子である私は重大な危機に直面していた。


---

師匠を連れて、地面に赤い線が乱雑に描かれた場所へ来た。

「随分と厄介なことに巻き込まれたな」師匠は周囲にびっしりと引かれた赤い線を見渡す。

「これが元々の魔法陣だったのか……」地面に赤い線で編まれた巨大な魔法陣を見る。

「この時代にまだ魔法陣を使うやつがいるなんて……」退屈そうに呟く。

時代遅れも甚だしい。


「魔法陣を描かなければ使えない魔法もある」師匠が言った。

この世界の魔法には様々な形式や儀式が存在する。

「奴隷魔法もその一つだ」

召喚した者に魔法陣を刻み、奴隷の印とする。

「あの王女が罪人を生贄にしなかったら、お前は全身全霊で彼女に仕える羽目になっていた」


「そんなの嫌だ!」叫ぶ。

「くそっ!なんで私が召喚されなきゃいけないんだ」

「それに『最強の魔法使い様』だなんて、誰がやりたいか!」

ぶつぶつ文句を言っていると、


師匠の棍棒が頭を叩いた。

「で、本人はどこだ?」ここには誰もいない。

「王女なら王宮に戻ってるでしょう……」何気なく答える。


「最初から彼女の元に転送すれば良かっただろうが」

棍棒──棍棒──次々と頭を叩かれる。

「なんでこんな所に来た!気持ち悪いものを見せやがって」

「前説が必要かと思って……」殴らないでよ。


---

王女の寝室に、突然魔法陣が現れた。

「ライラ様、これは……」メイドが現れた転送陣を緊張して見つめる。

少女も転送陣の方を見た。

「そういえば、転送魔法も見た目は魔法陣なんだよね……」今さら気づく。

言いながら中から出てくる。


「睡眠」師匠が杖を振ると、王女に付き添うメイドがばったり倒れた。

ゆっくりと転送陣から出てくる師匠。

「人前で素顔を見せるなと言っただろう」と言う。

「姿を見ただけで召喚や呪いをかける魔法もある」

杖を手にしながら進み出る。


「魔法使い様……」

少女は私たちの到着を見守る。


「変装してるって言ったじゃないですか」偽装魔法のかかった帽子を引っ張る。

「それに性別も変えてる」

「あの姿は気に入らん」師匠は嫌そうに言った。

「だって偽装魔法は自分が見たことのある人の姿しか使えないんだもん……」

私が見たことのある男はあいつだけだ。


「女でも良かっただろう」

「偽装は徹底的にやらないと!」性別まで偽装するのが筋だ。

「変えろ」

「嫌です!師匠だって若返ってるだけじゃないですか!」

「何だと……!」

言い争いが始まる。


「あの……」傍らの王女が私たちを見る。

視線を向ける。


エイブリンは少女の体内に純粋な魂、そして背後に無数の恐怖と憎悪に満ちた悪霊たちを見た。

「助からん」そう宣言した。


---

「名前は?」師匠が目の前の少女に尋ねる。

「ライラ・オーリヴァン・アカンシア……」少女はぼんやりと名乗る。

「私は……アカンシア王国第二王女です、よろしくお願いします、魔法使い様」

丁寧にお辞儀をする。

「それと、再会できて嬉しいです、最強の魔法使い様」私を見ながらそう言う。

私は師匠の背後に隠れ、ちらりと彼女を見る。


「とにかく概要は、この『馬鹿』弟子から聞いた」(馬鹿じゃない!)

エイブリンは私たちの間に立って言った。

「結論から言うと、グレンヴァーク(七大魔獣)には行かせない」


「それは……なぜ……お願いします……王国を救って……あと五日で……」少女は支離滅裂に訴える。

師匠は目の前の少女を見つめる。

「お前はそれまで生きられない」師匠はきっぱりと言った。

「今は呪いで思考がままならないだろうが、これはどんどん酷くなる」

「長くて三日、三日でお前は死ぬ」


「そしてこの『阿呆』弟子もお前と一緒に死ぬ」(阿呆でもない!)

「お前が無理やり魂を繋いだせいだ」

そう言う。

「私は最初……そんなつもりは……」王女が呟く。

「王国を救いたくて……」瞳は既に虚ろになりかけている。

「喋ると呪いが進行する、しばらく黙っていろ」師匠が命じる。

「どうか……救って……」彼女は口を閉じ、魂が抜けたように虚ろな表情になる。


彼女を見て、なぜか胸がざわつく。

(魂が繋がってるせいか……)考える。

「馬鹿な子だ、殺人犯の魂ばかり使うなんて」

他の方法ならここまで早くは進行しない。

「殺人犯に殺された魂も含め、彼女の呪いは通常の三倍から四倍だ」

「三日持つかどうかも怪しい」


「私はどうすればいいですか?」尋ね、師匠を見上げる。

(これじゃ私の命もあと三日か……)

そう思うのに、なぜか焦る気持ちがない。

(これも魂が繋がってるせいか、彼女と一緒に……なんて)

彼女を見つめる。


「彼女に自ら繋がりを断たせる」


「そう言いたいところだが……」言い直す。

「理性を失えば自然と切れるはずだ」

だが今のところ影響がない。

(王国を救うという執念か……)


「さっきの場所に戻る」師匠が転送門を開く。


ちなみに師匠の転送魔法はドア型で、特定の者だけを通す高等なものだ。

「はい……」動かなくなった少女を一瞥し、転送門へ入る。


---

赤い血で描かれた魔法陣の場所に戻る。

「ここに戻ってどうするんですか?」聞く。

師匠は動作を止め、じっと私を見る。

「どうかしました?」私の目つきも声の調子も、この状況にしては異常に平然としている。

「やはり少し影響を受けている」小声で呟く。

「早く解除しないと……」


魔法陣の中央にある巨大な穴へ向かう。中には無数の死体が詰まっている。

「あの罪人たちの死体ですね……」皆同じ白黒縞の服を着ている。

師匠は死体に向かって杖を掲げた。

「我は『辺境の魔女』エイブリン・フォードの名において、これらの死体を代償に……」

魔法が発動し、穴は眩い光を放つ。

「魂の安息を願う」


穴の中の死体は光の粒となり、空気中に漂った後、次第に消えていった。

深淵のような穴だけが残る。


「石を探して、墓標を作れ」師匠は踵を返す。

「は、はい!」私は後を追った。


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