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代償魔法  作者: 若君
第一章は44話まで、第二章毎週月曜日に更新
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第三十一話 再会

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第三十一話 再会さいかい


彼らは基礎学院の壮大な建物の頂上、万里の長城のように延びる高い壁の上に集まった。

「彼女…あの子が!」エルリスはエイブリンの腕を掴み、命綱のようにしがみつき、口走りそうになるほど興奮していた。

昨夜遭遇した、説明のつかない一連の奇怪な出来事は、彼女を一晩中寝返り打たせ、気もそぞろだった。

続けて、エイブリンと共に現れたランに気づき、瞬時に手を伸ばし、電光石火の速さでランを宙に持ち上げた!

「なにするの!下ろして!下ろして!」ランは慌てふためき、空中で必死にもがいた。


「じたばたするなよ」エルリスはランの抗議を無視し、ランの中の魂の状態を凝視したが、顔の険しい表情は全く緩まなかった。

「はあ、わからん…」彼女は諦めのため息をつき、ついにランを下ろした。

地面に足をつけるやいなや、ランは驚いた小獣のように、素早くエイブリンのそばに飛び込み、両手で彼女の腕を死に物狂いで掴んだ。その力は、今度こそ離されないと宣言しているかのようだった。


「彼女は今どこにいるの?」エイブリンは優しく尋ねた。同時に、ランが自分を掴む力がどんどん強くなっているのを感じた。

「学院の入学試験を受けているところよ」エルリスが答えた。

昨夜のあの一件があったにもかかわらず、ライラを入学させる決定は変わらなかった。


「朝起きた時は、ずいぶん普通に見えたけどね…」エルリスは朝のライラを思い返した。立ち振る舞いはまたあのきちんとした、しかし意図的な距離感を帯びた様子に戻り、嘘をつく悪い癖も一緒に戻っていた。

「おかげで私は彼女と一晩中一緒に寝なきゃいけなかった…」エルリスの口調には諦めと疲労が満ちていた。

普段弟子と同室で寝ない彼女が、入門したばかりで、しかもセンシティブな身分の**黒の魔法使い**と一夜を共にすることを強要されたのだ。

特に一晩中高い警戒状態で、ほとんど一睡もできず、今の彼女の目の下の明らかなクマと憔悴した様子が、それを物語っていた。


「ごめんね、エルリス…」エイブリンは心から謝った。ライラを彼女に託したためにここまで疲弊させてしまったことに、深く申し訳なく思っていた。

「それとも他の誰かを探そうか?」エイブリンは頭の中に頼める人物がいないか考えた。

「思うに…他の人は彼女を受け入れたくないだろうね…」エルリスは苦い笑みを浮かべた。特に彼女が**黒の魔法使い**であることを知った後では。

(おそらく彼女を永遠に眠らせようとするだろう…もし私に手を下せるなら、多分そうしたい…)彼女はエイブリンを見つめ、この極端な方法に対する態度を心の中に留めていた。何しろこれがエイブリンの安全を脅かさないとは保証できないからだ。


「彼女自身も制御できないと言っていた…」エルリスは考え込んだ。昨夜の恐ろしい光景を思い返しながら。

あの奇妙で歪んだ、生き物のような真っ黒な腕がライラの全身に絡みつき覆った時に放たれた気配は、既存の「魔法」理論では全く説明がつかず、彼女たち正統派魔術師にとってはまさに解けない謎だった。

しかし、彼女に操られたことのあるエイブリンなら、その異変を感じ取れるかもしれない。

「エイブリン、昨夜何か異常を感じたかい?」エルリスは心配そうにエイブリンを見つめた。ライラの異変がその神秘的な繋がりを通じてエイブリンに影響を与えるのではないか、と心配せずにはいられなかった。


エイブリンはすぐには答えず、そばで自分をしっかり掴んでいるランを見た。

彼女の腕に食い込むほどの力は確かに不快だったが、彼女は決してそのことで無理にランに手を離させようとはしない。

「ラン、ジンがまだ店であなたを待っているよ、早く行っておいで」エイブリンは声を柔らげ、ランに自発的に離れるように促した。

「私とエルリスは少し二人で話さなければならないことがあるの」彼女はわざと、ランが昔から嫌っている「お茶の時間」であることを指摘した。これまでなら、ランは避けて通りたがるはずだった。


「嫌だ…」ランは手を離すどころか、さらに強く掴み、顔には不安と頑なさが満ちていた。今の彼女はエイブリンから一歩も離れたくなく、たとえ最も退屈なお茶会でも付いていくつもりだった。

「話が終わったら、すぐにあなたのところに行くから」エイブリンは優しく約束した。

しかし返ってきたのは、ランによるさらに強い握り締めだった。

「どうしたらいいんだろう…」エイブリンは気まずそうに呟いた。彼女はランが感情的にここまで張り詰め、ライラに対して敵意を抱いているまさに今、関連する話題を話すのは全く望んでいなかったが、今はランと距離を置くこともできない。


突然、一陣の清風が通り過ぎ、一つの影が杖に乗って優雅に壁の上に降り立った。

来た者は柔らかなブルーの長い髪を風になびかせていた。

「エルリス様、お呼びでしょうか?」ジン――エルリスの弟子が、時を逃さずここに現れた。

卒業した弟子として、呼べばすぐに来るのは彼女の本分だった。


---

「これで二人きりでゆっくり話せるね」エルリスは満足そうに言いながら、優雅に手を振った。

すでに用意され、エイブリンの到着を待っていたティーポットが自動的に傾き、温かいお茶が揺るぎなくカップに注がれ、ゆらゆらと白い湯気が立ち上った。

「よくそんな方法を思いついたね…」エイブリンは感嘆し、優しい眼差しを遠くに向けた。

今のランは、ついに彼女を掴み続けることをやめた。


遠くで、ジンは巧みに昨日ランが店に残した水トカゲの素材を取り出し、ランと熱心に議論していた。

魔獣の話になると、ランの興奮は自然と引き出された。

彼女の注意は時々エイブリンの方へと流れたが、ジンは巧みに魔獣の話題へと引き戻した。


「何しろ私も数えきれない弟子を育ててきた身だからね」エルリスは自信たっぷりに熱いお茶を一口すすった。

「どう『対処』するかは、私にも方法があるんだ」もちろんランも例外ではない。

「それに私が育てた弟子は、皆呼べばすぐに来るんだよ」彼女は付け加え、口調に一抹の誇りを込めた。

基本的に、エルリスが一報を送れば、弟子たちはすぐに姿を現す。


「私はランという弟子一人しかいないから、どうやって彼女に同世代と交流させればいいのか、本当にわからないんだ」エイブリンはカップの中の琥珀色の茶湯をじっと見つめ、口調には困惑がにじんでいた。

ランの人付き合いを避け、同世代を拒絶する性格は、以前から彼女を悩ませていた。特に彼女があんな称号を名乗った後は。


「さっきの質問に戻るけど、昨日私に影響があったかどうかについて…」エイブリンは話を核心に戻し、彼女の答えもまたランと深く関わっていた。

「私の頭の中にはずっと一つの考えがこだましていた――彼女たち(ランとライラ)を仲良くさせなければならない、というもの」エイブリンは認めた。

ランが昨日あんなに激しい反応を示したのを見て初めて、彼女はなぜ自分がそんなにも頑なにそう考えてしまうのかを振り返り始めたのだ。ランがこれほど拒絶を示しているのに。


「それは…彼女に操られているってこと?」エルリスはすぐに警戒し、心配そうにエイブリンを見た。

「わからない…」エイブリンはティーカップを取り上げ、眉間に困惑の色を浮かべた。

「これが私の心からの本当の考えなのか、それとも彼女ライラが私に押し付けたものなのか…」彼女は一口お茶をすすり、思わず視線をランの方へと流した。

「まるでどちらも手放せないような気がする…」彼女は呟いた。まるで見えない葛藤の中にいるかのように、どちらに従うべきかわからなかった。


エルリスは沈黙して彼女を見つめ、言葉を返さず、ただ三人の間に絡み合った関係を考え続けた。

彼女ライラの魂はランと繋がり、同時にエイブリンを操れる…)

(理論上、全ては彼女の掌握下にあるはずで、私たちは皆彼女の意のままに動くべきだ。)

「でも昨夜のあの奇怪な黒い霧は一体何だったんだ…」エルリスはいくら考えてもわからなかった。

(なぜ彼女は当時、完全に自分を制御できないように見えたのか?)これが彼女の心の中の最大の疑問だった。


エイブリンは彼女を見上げた。

「まるで無数の真っ黒な、実体化した手が彼女をしっかり絡みつき、掴みしめているように感じた」エルリスは昨夜目撃した恐ろしい光景を描写した。それは既存の魔法体系では全く説明できない現象だった。

「これが彼女が人を殺したことと…何か関係があるのか?」もし**黒の魔法使い**の未知の領域なら、彼女に理解できないのも納得がいく。

エルリスは深い思考に沈んだ。エイブリンも同様に沈黙して考え、視線を再びランに向けた。

「あの時、ランは彼女と約束をした」エイブリンはゆっくりと口を開き、ランの視点から理解しようと試みた。


【もう一人でいたくない】

「その時ランはそう言ったんだよね…」エルリスはエイブリンがかつて語った、彼女たちの魂が繋がったキーポイントを思い返した。

「でもランは今、人を遠ざけているよ」エルリスは皮肉を込めた口調で、この対立しつつも繋がった矛盾した関係に非常に手を焼いている様子だった。

しかし、もし自分なら、エイブリンが操られたら、おそらくランよりも激しく反応するだろう。


「それに彼女ライラは私の命令を無視し、勝手に魔法を使ってランが何をしているのか覗こうとした…」エルリスは昨夜ライラが禁止を突破しようと魔法を発動させた連続を思い出した。

(本当に疲れる…)彼女は心の中でため息をついた。

二度と経験したくないし、心に誓った。この人生で二度と**黒の魔法使い**を弟子に取るものかと。


「私がその場で見たのは、確かに二人の魂が互いに密接に繋がっていた光景だった…」エイブリンの視線は相変わらずランに釘付けだった。

彼女は当時グレンヴァルクを倒した後、彼女たち二人を見た情景を遡った。

彼女ライラは殺人犯の魂を代償として使ったせいで、すでに死の淵に立っていた」

その時は、ランも彼女と共に滅びに向かうはずだった。


「しかしその時、あの悪霊たちは突然消えてしまった」そしてライラは、今も元気に生きている。


(彼女が私を操れるようになったのは、この後のことだ)エイブリンは頭の中でタイムラインを整理した。

(私は現場にいなかったから、彼女たちの間で具体的に何が起きたのか全くわからない)

特に、ランが一体何をしたのかがわからない。

(そして今、エルリスからあの悪霊たちが本当には消えていなかったらしいと聞いて…)


「私はやはり自分の目で彼女の今の状態を見たほうがいい」エイブリンは決断した。

状況を早急に明確にしなければならない。彼女の制御不能な状態は、再び自分自身や、ひいてはランにまで波及する可能性が高い。

(それに、彼女をランから遠ざけすぎると、私の胸のこの理由のわからない圧迫感が…)

この重苦しさは、今も増し続けており、息苦しいほどだった。


「エルリス様」温かく礼儀正しい声が響いた。

金髪の少年ライラがいつしか静かに入り口に立ち、室内でお茶を飲んでいる数人を静かに見つめていた。

「レイ?試験中じゃなかったのか?」エルリスはすぐに警戒して立ち上がり、鋭い目つきで彼女を見つめると同時に、思わずそばのランをちらりと見た。

ランも来た者――金髪の少年の偽装の下の正体にすぐに気づき、振り返って見つめた。その目には警戒心が満ちていた。

「まさかランが近くにいるのを感じて…」エルリスの口調は冷たくなり、詰問する態勢に入った。


「いえ、書き終えたので早めに提出しました」入り口の金髪の少年は落ち着いて微笑み、礼儀正しく説明した。

しかし、彼女の目は磁石に引き寄せられたかのように、ランの方向をしっかりと捉え、離れようとしなかった。

(それに…ランが近くにいるのを感じて、つい早く書いてしまった…)ライラの脳裏にさっき試験会場での光景が浮かんだ。あの慣れ親しんだ気配が近づいた時、彼女はペンを走らせるスピードを制御できなくなったのだ。

(ランを見さえすれば、心が落ち着くような気がして…)

金髪の少年は温かい微笑みを浮かべ、静かにランを見つめ、近づこうとはしなかった。


ランはそれを見ると、すぐに体をエイブリンにぴったりくっつけ、不満そうな顔でライラを睨みつけた。ライラは相変わらず静かに入り口に佇み、距離を保っていた。

「これから私は何をすればいいでしょうか?エルリス様」金髪の少年はタイミングよく焦点をエルリスに戻し、顔に適切な微笑みを保っていた。

「そばで静かに本を読みなさい」エルリスは諦めたように指示した。師匠として、彼女はこの張り詰めた空気を和らげようとしていた。

「魔法基礎知識の関連書籍を全部読破するんだ」彼女は命令を付け加えた。


「承知しました」金髪の少年は手慣れた様子で自分の魔法書を召喚し、隅の一つの席に向かい、静かにページをめくり始めた。


ランは彼女が静かに読書する後ろ姿をじっと見つめ、張り詰めた神経がようやく少し緩んだ。心の奥底の警戒心は完全には解けていなかったが。

「師匠…」ランは振り返り、心配そうにエイブリンを見つめた。

エイブリンはただ平静にティーカップを持ち、少しずつすすりながら、ライラの出現に特に反応を示さなかった。

(おかしい…あの圧迫感が突然消えた?やはり彼女の状態と関係があるのか…)心の中に突然湧き上がった安堵感に対して、エイブリンは鋭く不気味さを感じ取った。


「はぁ…」エルリスは長いため息をつき、再び席に座った。

「何か手がかりは見えたか?」彼女は向かいのエイブリンに尋ねた。

エイブリンはティーカップを置き、考え深げに隅で少年に変装したあの影を一瞥した。

「ないわ。私がその時見た状態とほとんど同じ」あの彼女に絡みついていた悪霊たちは、今は全く影も形もなかった。

むしろ彼女自身の心の中の異様感の方が、より鮮明になっていた。


「ラン、どうしたの?」ジンが適切にランに近づき、彼女がまだエイブリンを掴み続けているのを見た。

「水トカゲの体の構造について、もっと教えてよ~」ジンは巧みに話題をそらした。

「あ…ああ!」ランは躊躇いながら応じたが、目はまだ不安げに金髪の少年とエイブリンの間を行き来していた。

「私は大丈夫よ、ラン、そちらで続けて話してて」エイブリンは安心させる微笑みを見せた。

「うん…うん」ランはようやく少し不本意ながら手を離し、ジンについて反対側へ行き、再び魔獣素材の議論に没頭した。


「昨夜あの奇怪な黒い手を確かに見たのに、今は全く影もない…」エルリスは困惑した様子で金髪の少年の後ろ姿を見つめた。

「明らかに朝まで、彼女にほのかな黒い霧がまとわりついていたのに…」今は跡形もなく消え失せており、この不気味なギャップに彼女は納得がいかなかった。


エイブリンの視線はライラとランの間を行き来し、ある結論を出したようだった。

彼女はティーカップを取り上げ、静かに最後の一口の温かいお茶を飲み干した。


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ランたちが去った後、部屋にはライラとエルリス二人だけが残された。

臨時で呼ばれたジンも、あの魔獣素材を持って帰っていった。

「君は操られている」エルリスは単刀直入に、ライラに驚くべき言葉を直接ぶつけた。

「それは…どういう意味ですか?」金髪の少年ライラは困惑した表情で、この突然の告発を理解できない様子だった。


「君は特にランのそばにいたいと強く望んでいるだろう?」エルリスは続け、鋭い目つきでライラの反応を観察した。

「その考えそのものが、操られている結果だ」彼女はテーブルの上で冷めたお茶を取り、一口すすり、平静でありながらも疑う余地のない確信を込めた口調で、あたかもエイブリンが最終的に出した結論を述べているかのようだった。

「私が…操られている…?」ライラはただ機械的にその言葉を繰り返し、顔には衝撃と信じられなさが満ちていた。まるでこの認識が彼女の確固たる世界を揺るがしているかのようだった。

(私がランのそばにいたいという願望…それが操られている…?)


「誰が…私を操っているんですか?」ライラの声はわずかに震えた。この認識は彼女の心の奥底の支柱を揺るがし始めているようだった。

彼女の思考は手綱を切った馬のように駆け巡り、混乱の中で合理的な説明を分析しようと試みた。

「これは明らかだろう…」エルリスは空のティーカップを置き、重いため息をついた。

「ランが君を操っているんだ」彼女はライラの目をまっすぐに見つめ、一語一語はっきりと言った。

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