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代償魔法  作者: 若君
第一章は44話まで、第二章毎週月曜日に更新
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第二十話 孤僻な魔女 ラン

**第二十話 孤僻な魔女こひつなまじょラン**


「孤僻な魔女こひつなまじょ」ランが七賢者しちけんじゃの前に立つ。黒のローブが魔法陣の微かな光の中でひらりと揺れた。

数年前のこの儀式が、彼女を魔法使い史上最年少の上級魔女じょうきゅうまじょへと昇格させた。

「お前が魔法使いとなったのは何のためか、孤僻な魔女ランよ?」首席の賢者が重々しく問いかける。

「それはもちろん──」彼女の手に握られた杖が床を力強く叩き、澄んだ音を立てた。

「最強になるためだ!」


---

「それは賢者になりたいという意味か?」別の賢者が眉を上げて問う。

「違う!」ランは即座に首を振り、黒髪がフードから数房こぼれた。

「師匠が賢者になると面倒な仕事ばっかりで、自分はなりたくもないって言ってた」彼女は指を折りながら数え始めた。

「新しい魔法の審査とか、魔法使い同士の揉め事の仲裁とか、年に一度の審査の主催とか……」


「その師匠とは……」

「エイブリンだ」

「エイブリンか……」賢者たちは呆れたような表情を浮かべた。

「いったい弟子に何を教えているんだ……」

あの、これまで弟子を取ろうとしなかった魔女の、唯一の弟子がこんな有様とは。


「私は最強の魔法使いになる!」ランの瞳がきらきらと輝いた。

「一人でどんな魔獣まじゅうでも討伐できる、かっこいい魔法使いに!」

七大魔獣しちだいまじゅうだって敵じゃない!」彼女は誇らしげに胸を張った。


「では、なぜ上級魔女になりたいのか?」一人の女性の賢者が優しく尋ねた。

「これは高位魔女こういまじょとの違いは、弟子を取る資格が加わるだけに過ぎぬ」

ランは突然静かになり、無意識に杖を撫でる指を動かした。

「だって……」彼女は小さな声で言った。

「だって師匠が上級魔女だから」


「私も師匠と同じでなきゃ!」声は突然再び明るくなった。

「まあ、弟子を取るかどうかは別としてね」彼女は笑いながら付け加えた。

賢者たちは顔を見合わせた。

「では、お前は卒業そつぎょうするつもりか?」

「卒業?」ランは首をかしげた。


「卒業とは、一人前の魔女となり、師匠の下を離れ自立することを意味する」彼らが説明した。


ランはうつむき、黒ローブの影が表情を隠した。

「嫌だ……」彼女は呟くように言い、すぐに顔を上げた。

「もちろん嫌だよ! 俺、今何歳だと思ってるんだ? なんで師匠の元を離れなきゃいけないんだよ?」

「この変な制度、直した方がいいんじゃないか!」彼女は賢者たちを直接指さして抗議した。


「ぷっ──」エルリスが突然吹き出した。

「エルリス! これは厳粛な儀式だぞ……」

「失礼、失礼」彼女は目尻の涙を拭いながら言った。

「ただ、この子があまりにもエイブリン譲りでね」彼女は下のランを温かい目で見つめた。


「孤僻な魔女ランよ」別の賢者が改まった口調で言った。

「卒業は大人となる儀式だ。お前が一人前である証となる」

「卒業すれば、師匠はお前の魔法に干渉できなくなる」

「お前は真に独立した魔法使いとなるのだ」


ランはしばらく沈黙した。

「師匠と一緒にいたい……何が悪いの……」彼女は呟くように言った。

「私のそばには……もう誰もいないのに……」


「もういい、上級魔女なんてならなくていい!」彼女は突然振り返り去ろうとした。

「待て! これは好き勝手に退出できる場ではない」賢者たちが慌てて制止した。

「これはお前が上級魔女となれるかを決める正式な儀式だ!」

これから質疑応答、審議、投票が待っている。


ランは耳を貸さず、出口に向かって歩き続けた。


「私は彼女に上級魔女の称号を与えることに賛成だ」エルリスが突然手を挙げた。

ランを取り囲む魔法の燭台しょくだいの一つが青い炎をともり、ランの注意を引いた。

「エルリス! 投票はまだ早い……」

「彼女を上級魔女にしても何の問題がある? 彼女の実力は本物だ」

「何より彼女はまだ卒業していない。エイブリンはまだ彼女を監督できる」どうせ卒業してなければ弟子も取れない。

「彼女がエイブリンと一緒に暮らしたいというのに、何の関係がある?」

子供として言えば、彼女は十分に自立している。

この世界は彼女に早すぎる自立を求めた。今やっと得た居場所に、もう少し留まっていても構わないだろう。


「何より、私が心配なのはエイブリンが孤独な老人になってしまうことよ……」本音。

「また一人になってしまったら、多分会いに来てくれなくなる……」エルリスは小声で呟いた。

「彼女に弟子ができてから、ようやく弟子の話で盛り上がれるようになったのに……」

「エルリス!」


「私も賛成だ」別の賢者が口を開いた。

「今、魔法使いの数は激減している」

魔法使いの師弟制度は、一般人がこの技に触れることを難しくしている。

「見習い魔女みならいまじょから高位魔女になるまで、平均で五年はかかる」

多くの者は高位魔女を目指すことすらしない。

彼女は下で魔法の炎を興味深そうに観察しているランを見た。


「多くの者は初級魔女しょきゅうまじょの段階で深く学ぶことを諦め、生活に便利な簡単な魔法だけを学ぶ」

あるいは世俗の圧力に屈し、魔法使いとしての身分を捨てる。

「彼女のように精進を続ける若い魔法使いは既に珍しく、他の魔法使いの模範となり得る」

「彼女の性格は……模範となるには少し不向きかもしれないが」本音。


それに召喚魔法の存在により、強力な魔法使いほど召喚される可能性が高い。

「上級魔女の数も減っている」

「おそらくいつか、魔法使いはこの世から消えてしまうだろう」

師弟制度、昇格制度、認定制度……

「真の魔法使いとなるハードルは、高すぎるのだ」


「私も賛成だ」三つ目の魔法の炎が灯った。

「主な理由は彼女の実力だ」

「魔獣を単独で討伐できる魔法使いは、ますます少なくなっている」

「では、あと一票……」


大賢者だいけんじゃよ、あなたの意見は?」一同が中央の玉座に向きを変えた。

ずっと目を閉じていた魔女が、濁った瞳をゆっくりと開けた。すでに失明しているその視線でランを「見つめ」ながら。

「賛成である」簡潔な宣言が響く。

七つの魔法の炎が同時に大きく燃え上がった。

ランが立つ魔法陣が眩い黄金色の光を放ち、彼女の全身を包み込んだ。


---

「おう、帰ったか、ラン」エイブリンは手にしていた針仕事を置いた。

「落ちても落ち込むなよ」

(彼らが卒業前の者を通すはずがない、何せランは……)

言葉が終わらないうちに、ランは得意げに金色の証明書を取り出した。

「俺、上級魔女になったぞ!」


(なに?!)エイブリンは驚いて目を見開いた。


「見ろ! やっぱりこの世に不可能なんてないんだ!」

「だって魔法だって存在するんだからな!」

ランは興奮してくるくると回った。

「師匠は絶対に通らないって言ってたのに~」


(あの連中、本当にランを上級魔女にしたのか!)

(まだ卒業してないのに!)規則は勝手に変えていいのか?

エイブリンは素早く師弟契約を召喚し、内容を仔細に確認した。

「まだ卒業していない……」つまり、彼女はまだランの魔法使用を制限できる。

(彼らもそれは分かっているはずだ……)彼女は考え込んだ。


「俺、師匠の元を離れたりしないから」ランが突然言った。

エイブリンが顔を上げると、ランが満面の笑みを浮かべていた。

「だって師匠には、私が必要だからね!」


---

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