第二十話 孤僻な魔女 ラン
**第二十話 孤僻な魔女ラン**
「孤僻な魔女」ランが七賢者の前に立つ。黒のローブが魔法陣の微かな光の中でひらりと揺れた。
数年前のこの儀式が、彼女を魔法使い史上最年少の上級魔女へと昇格させた。
「お前が魔法使いとなったのは何のためか、孤僻な魔女ランよ?」首席の賢者が重々しく問いかける。
「それはもちろん──」彼女の手に握られた杖が床を力強く叩き、澄んだ音を立てた。
「最強になるためだ!」
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「それは賢者になりたいという意味か?」別の賢者が眉を上げて問う。
「違う!」ランは即座に首を振り、黒髪がフードから数房こぼれた。
「師匠が賢者になると面倒な仕事ばっかりで、自分はなりたくもないって言ってた」彼女は指を折りながら数え始めた。
「新しい魔法の審査とか、魔法使い同士の揉め事の仲裁とか、年に一度の審査の主催とか……」
「その師匠とは……」
「エイブリンだ」
「エイブリンか……」賢者たちは呆れたような表情を浮かべた。
「いったい弟子に何を教えているんだ……」
あの、これまで弟子を取ろうとしなかった魔女の、唯一の弟子がこんな有様とは。
「私は最強の魔法使いになる!」ランの瞳がきらきらと輝いた。
「一人でどんな魔獣でも討伐できる、かっこいい魔法使いに!」
「七大魔獣だって敵じゃない!」彼女は誇らしげに胸を張った。
「では、なぜ上級魔女になりたいのか?」一人の女性の賢者が優しく尋ねた。
「これは高位魔女との違いは、弟子を取る資格が加わるだけに過ぎぬ」
ランは突然静かになり、無意識に杖を撫でる指を動かした。
「だって……」彼女は小さな声で言った。
「だって師匠が上級魔女だから」
「私も師匠と同じでなきゃ!」声は突然再び明るくなった。
「まあ、弟子を取るかどうかは別としてね」彼女は笑いながら付け加えた。
賢者たちは顔を見合わせた。
「では、お前は卒業するつもりか?」
「卒業?」ランは首をかしげた。
「卒業とは、一人前の魔女となり、師匠の下を離れ自立することを意味する」彼らが説明した。
ランはうつむき、黒ローブの影が表情を隠した。
「嫌だ……」彼女は呟くように言い、すぐに顔を上げた。
「もちろん嫌だよ! 俺、今何歳だと思ってるんだ? なんで師匠の元を離れなきゃいけないんだよ?」
「この変な制度、直した方がいいんじゃないか!」彼女は賢者たちを直接指さして抗議した。
「ぷっ──」エルリスが突然吹き出した。
「エルリス! これは厳粛な儀式だぞ……」
「失礼、失礼」彼女は目尻の涙を拭いながら言った。
「ただ、この子があまりにもエイブリン譲りでね」彼女は下のランを温かい目で見つめた。
「孤僻な魔女ランよ」別の賢者が改まった口調で言った。
「卒業は大人となる儀式だ。お前が一人前である証となる」
「卒業すれば、師匠はお前の魔法に干渉できなくなる」
「お前は真に独立した魔法使いとなるのだ」
ランはしばらく沈黙した。
「師匠と一緒にいたい……何が悪いの……」彼女は呟くように言った。
「私のそばには……もう誰もいないのに……」
「もういい、上級魔女なんてならなくていい!」彼女は突然振り返り去ろうとした。
「待て! これは好き勝手に退出できる場ではない」賢者たちが慌てて制止した。
「これはお前が上級魔女となれるかを決める正式な儀式だ!」
これから質疑応答、審議、投票が待っている。
ランは耳を貸さず、出口に向かって歩き続けた。
「私は彼女に上級魔女の称号を与えることに賛成だ」エルリスが突然手を挙げた。
ランを取り囲む魔法の燭台の一つが青い炎をともり、ランの注意を引いた。
「エルリス! 投票はまだ早い……」
「彼女を上級魔女にしても何の問題がある? 彼女の実力は本物だ」
「何より彼女はまだ卒業していない。エイブリンはまだ彼女を監督できる」どうせ卒業してなければ弟子も取れない。
「彼女がエイブリンと一緒に暮らしたいというのに、何の関係がある?」
子供として言えば、彼女は十分に自立している。
この世界は彼女に早すぎる自立を求めた。今やっと得た居場所に、もう少し留まっていても構わないだろう。
「何より、私が心配なのはエイブリンが孤独な老人になってしまうことよ……」本音。
「また一人になってしまったら、多分会いに来てくれなくなる……」エルリスは小声で呟いた。
「彼女に弟子ができてから、ようやく弟子の話で盛り上がれるようになったのに……」
「エルリス!」
「私も賛成だ」別の賢者が口を開いた。
「今、魔法使いの数は激減している」
魔法使いの師弟制度は、一般人がこの技に触れることを難しくしている。
「見習い魔女から高位魔女になるまで、平均で五年はかかる」
多くの者は高位魔女を目指すことすらしない。
彼女は下で魔法の炎を興味深そうに観察しているランを見た。
「多くの者は初級魔女の段階で深く学ぶことを諦め、生活に便利な簡単な魔法だけを学ぶ」
あるいは世俗の圧力に屈し、魔法使いとしての身分を捨てる。
「彼女のように精進を続ける若い魔法使いは既に珍しく、他の魔法使いの模範となり得る」
「彼女の性格は……模範となるには少し不向きかもしれないが」本音。
それに召喚魔法の存在により、強力な魔法使いほど召喚される可能性が高い。
「上級魔女の数も減っている」
「おそらくいつか、魔法使いはこの世から消えてしまうだろう」
師弟制度、昇格制度、認定制度……
「真の魔法使いとなるハードルは、高すぎるのだ」
「私も賛成だ」三つ目の魔法の炎が灯った。
「主な理由は彼女の実力だ」
「魔獣を単独で討伐できる魔法使いは、ますます少なくなっている」
「では、あと一票……」
「大賢者よ、あなたの意見は?」一同が中央の玉座に向きを変えた。
ずっと目を閉じていた魔女が、濁った瞳をゆっくりと開けた。すでに失明しているその視線でランを「見つめ」ながら。
「賛成である」簡潔な宣言が響く。
七つの魔法の炎が同時に大きく燃え上がった。
ランが立つ魔法陣が眩い黄金色の光を放ち、彼女の全身を包み込んだ。
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「おう、帰ったか、ラン」エイブリンは手にしていた針仕事を置いた。
「落ちても落ち込むなよ」
(彼らが卒業前の者を通すはずがない、何せランは……)
言葉が終わらないうちに、ランは得意げに金色の証明書を取り出した。
「俺、上級魔女になったぞ!」
(なに?!)エイブリンは驚いて目を見開いた。
「見ろ! やっぱりこの世に不可能なんてないんだ!」
「だって魔法だって存在するんだからな!」
ランは興奮してくるくると回った。
「師匠は絶対に通らないって言ってたのに~」
(あの連中、本当にランを上級魔女にしたのか!)
(まだ卒業してないのに!)規則は勝手に変えていいのか?
エイブリンは素早く師弟契約を召喚し、内容を仔細に確認した。
「まだ卒業していない……」つまり、彼女はまだランの魔法使用を制限できる。
(彼らもそれは分かっているはずだ……)彼女は考え込んだ。
「俺、師匠の元を離れたりしないから」ランが突然言った。
エイブリンが顔を上げると、ランが満面の笑みを浮かべていた。
「だって師匠には、私が必要だからね!」
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