第二話 繋がりの代償
第二話 繋がりの代償
「あれ、あなた女性だったの……?」少女は彼女の魔法帽を手に持ち、じっと見つめた。
「それに、年も私と変わらないくらい?」
「くそっ、帽子を返せ!」その帽子には認知障害の魔法がかかっていた。
魔法帽はふわりと浮かび上がり、彼女の頭に戻る。すると彼女の体は瞬く間に男性の姿に変わった。
「魔法使いなら、最初から男性の姿に変身すればいいじゃないですか」
帽子を外すたびに元に戻るなんて不便じゃない?
「毎日姿を変えていたら、だんだん本当の自分がわからなくなってしまうわ!」彼女は真面目な顔で言った。
「それに、師匠は男が嫌いで……」帽子を引き下げ、小声で呟く。
「違う!今の問題はそこじゃない!」
「お前、いったい何をしたんだ!」激しく詰め寄った。
少女は無邪気に彼女を見上げた。
「私もよくわからないんです」
彼女を操れる感覚はないが、確かに何かが起こった。
魔法使いを見つめながら、どこか奇妙な感覚が胸をよぎる。
「ちくしょう、師匠が『絶対に他人と関わるな』と言った意味がわかったよ」
彼女は憤慨しながら立ち上がり、服の埃を払った。
「ろくなことがない……こんな厄介ごとになぜ巻き込まれるんだ!」
別人のようにぶつぶつと文句を言い始めた。
「ねえ」少女はいつの間にか彼女のそばに寄っていた。
「さっき、いったい何が起きたんですか?」
急に縮まった距離に驚き、彼女は瞬時に離れた。
「何が起こったのか知りたいんです」少女は遠くから叫んだ。
彼女は自分と少女の魂が一本の糸で繋がれているのを見た。無数の小さな手が強引に架けた橋だ。
(魂が繋がってしまった。操られることはないが……)考え込む。
遠くの少女を見つめる。
(でも、もし彼女が死んだら、私も一緒に死ぬ……)
この事実は絶対に彼女に教えてはいけない。
(そうしたら、きっと脅しに利用されるに決まってる!)
解決策を考えながら頭を抱えた。
少女は遠くから彼女を見つめた。
(すぐに逃げなかったってことは、やっぱり何かあったんだよね……)
「ライラ様、さっきお使いになった代償は……」メイドが震える声で尋ねた。
「私の子孫よ。もう子供は産めないみたい」少女は平静に答えた。
王女としての価値はなくなっただろう。子孫を残せない王女を欲しがる王国などあるだろうか。
「それに来世、その次の世も……」小さな声で付け加えた。
「でも大丈夫!」彼女は気持ちを切り替えた。
「元々子供なんて欲しくなかったの!」少女は強い眼差しで宣言した。
「陛下にその言葉を聞かれたら、またお怒りになりますよ……」メイドは呆れ顔で呟く。
(それと、あの魔法使いの言った呪いの件……私も長くはないみたい。それでもいい……)少女は思った。
この王国さえ救ってもらえれば。
彼女は遠くの魔法使いを見た。
魔法使いとして最も重要なのは契約を守ること。それが魔法を使う代償だ。
だが代償は千差万別。中でも人間の魂は最も重い代償だ。
(本来なら、こんな無理やり繋がれた魂の橋は、時間と共に消えていくはずなのに……)
しかし殺された亡霊の場合、相手を死ぬまで苦しめるまで執着し続けるかもしれない。
(魂は気まぐれで、要するに一番面倒な存在なんだ……)世の中の人間と同じように。
彼女は考え込んだ。
(一つ一つ魂の条件を満たして解放するなんて、あまりに面倒すぎる……)
特にまだ転生していない魂は、この世への未練がない。
(諦めさせることなど不可能だ……)
自分を召喚した少女を遠くから見つめる。
(自分の来世を代償に捧げるなんて……)
信じられない。だから人間は面倒なんだ!(備考:自分も人間だが。)
「はぁ……師匠に相談するか?」
彼女は手を振り、転送陣を開いた。
「待って!」少女が叫ぶと、彼女の胸は突然強く引き締められるような感覚に襲われた。
「な……何だ……」平静を装って答えた。
「お願いが……」
少女の一言一言が、彼女の心臓を強く揺さぶる。
(単に命が繋がってるだけじゃないのか……?)胸に手を当てた。
彼女は体を横に向け、手を上げて少女の言葉を遮った。
「今は用事があって帰らないと……」顔を背け、明らかに苦しそうな声で言った。
少女は彼女の奇妙な挙動を見て首を傾げた。
「では、いつまた来てくださいますか?」少女は可憐な表情で尋ねた。
その姿を見て、彼女の胸はなぜかざわめいた。
(どこが可憐だよ、100人も殺したんだぞ!)
それに周りには殺気立った亡霊がまとわりついているというのに。
彼女は気持ちを落ち着かせた。
「うっ……魔獣はいつ来る?」
「五日後くらいです」少女が答えた。
「わかった。何とかする」実際にはこの糸を解く方法を考えるつもりだった。
彼女は転送陣に歩み入った。
「待っています」少女が言った。
「魔法使い様」と微笑みかける。
彼女は一瞥し、振り返ることなく転送陣に消えた。
「彼女……行ってしまいました……」傍らのメイドが呟いた。
「これで大丈夫ですか!?」戻って来ないかもしれない。
メイドは心配そうに言った。
「大丈夫」少女は答えた。
「魔法使いは嘘をつきません」
そう言い終えると、少女はその場に倒れ込んだ。
「ライラ様!」
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とある辺境の小屋には、二人の魔法使いが住んでいた。師匠である『辺境の魔女』エイブリンと、弟子の『孤僻な魔女』ラン――
つまり私だ。
私は師匠との住まいに戻った。
「師匠がいないうちに、早くこの繋がりを解く方法を調べないと……」小声で呟く。
「ラン、どこへ行っていた?」エイブリンが背後に現れた。
「し……師匠!?」恐る恐る振り向いた。
エイブリンは魔法で姿を変えた私を見下ろす。
さっと帽子を奪い取ると、たちまち長髪の少女の姿に戻った。
「家の中では帽子をかけるなと言ったはずだ」
「それに、この様子……転送を直接家に設定したな」エイブリンの目が鋭くなる。
「家の中に転送門を開けるなとも言っておいた」彼女は棍棒で私の頭を叩いた。しかも二回も。
家の物が転送されてしまったらどうするつもりだ?
「うっ……」私は頭を押さえて縮こまった。
「この樣子では、他にも隠し事がありそうだな……」エイブリンは私の隠し立てする顔を見てそう言った。
(一日三回溜まったら罰を受けるんだった!)私はハッと気付いた。
「ないです!部屋に戻ります!」
慌ててそう言うと、
エイブリンが棍棒を振ると、私の足が地面から浮き始めた。
「浮遊魔法ずるい!ずるい!」空中でもがく私。
「魔獣を密かに連れ込んだわけでもなさそうだ」彼女は私の服を見た。
「言いなさい、何を隠している?」
「な……何も……」嘘をつく。
「私に嘘をつくとは……」エイブリンの目が険しくなった。
私は恐怖で凍りついた。
師匠には嘘を見破る魔法があったのだ。