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代償魔法  作者: 若君
第一章は44話まで、第二章毎週月曜日に更新
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第十四話 少女たちのダンス

第十四話 少女たちのダンス


魔法協会――大陸中の魔法使いと魔法活動を管理する組織で、七大賢者によって構成されている。


「つまり、彼女に操られていると?」

「辺境の魔女、エイブリン」

三人の魔法協会のメンバーが食卓に厳粛な面持ちで座り、尋ねた。


「そう言ってもいいだろう」エイブリンは落ち着いた声で、少しも動じていない。


「では今の言葉は、操られた状態で発言したものか?」

「わからない」

「そうでもあり、そうでないでもある」エイブリンは淡々と答える。


「これは緊急事態だ……」

一人が低く呟く。

「早急に隔離し、制御を解除すべきだ」

「だがグレンヴァークの願いが残っている……」

「これは我々の権限を超えている」


「彼女の魂は今、私の弟子と繋がっている」

「もし彼女に危害を加えるなら、私も反撃する」

エイブリンの声には重みがあり、目は鋭く光る。


かつて七大賢者の座を拒んだ――辺境の魔女、エイブリン。

彼女は一人でこの深山に隠遁した。

誰にも知られず、一人の弟子を取った。

それが生涯最後の弟子、孤僻な魔女――ランだ。


---

「では……また来る」

三人の協会メンバーは杖を持ち、家の外に立つ。

「二度と来るな……」エイブリンは眉をひそめる。

(人里離れた山に来たのは何のためだと思ってるんだ……)


「ああ、次来る時は手土産持ってこい」

ドアの隙間から付け加える。

「でないと中に入れないぞ」

「私はブルーベリーケーキ、弟子はイチゴの、残り一つは適当でいい」

そう言い残し、ぱたんとドアを閉める。


(……来るなと言われたはずだが?)

三人は困惑しながら立ち尽くす。


---

「はぁ、まったく……」

窓から三人が転送陣で去るのを見届け、ようやく肩の力を抜く。

「さて次は……」

二階へ続く階段に視線を移す。

「ダメ!」上がろうとする前に、ランの叫び声が聞こえる。


家の二階。

「ここは私の部屋、入るな!」ランはドアの前で両手を広げて立ちふさがる。

「部屋を選ばせてくれるんじゃなかったの?」

金髪の王女は廊下に立ち、当然のように言う。

「ちゃんと選ぶには、全部見て回らないと」微笑む。

「私の部屋だけは例外、選ばせない!」


「二人で一室も悪くないと思うけど」まだ微笑んでいる。

「一緒に住むなんて絶対嫌だ!」ランは激しく言い放つ。

「これから一緒に暮らすんだから、早く慣れた方がいいんじゃない?」


「そうとは限らないよ」ランは悪戯っぽく笑う。

「協会の連中があんたを連れ去るかも!」


金髪の王女は彼女を見る。

「そうなったら、エイブリン様も一緒に行くことになりますよね?」

「師匠を連れ出すな、この野郎!」


「でも……他の部屋は倉庫みたいに物が積まれているし」

考え込む。

「私の部屋もだけど……」ランは自嘲的に小さく呟く。

「とにかく、一度見せてもらってから決める」

「ダメだって言ってるだろうが!」


---

「今度は何を騒いでいるんだ……」

階下のエイブリンは二階の廊下での騒ぎを聞きながら、ため息をつく。


「師匠、協会の連中は?」

「帰った」淡々と言う。

(それに手土産も持ってきてない……)

(帰ってからまた来いと言うつもりだったのに。)


「部屋は決まったか?」エイブリンが尋ねる。


「嵐様と同室希望です」王女は優しい声。

「ああああ嫌だ!嫌嫌嫌!」ランは激しく叫ぶ。


「それはお勧めしない、別の部屋にしろ」エイブリンはため息をつく。

「はぁ~私の言うことを聞いてくれるかと思ったのに」金髪の王女は不気味な声で言う。


「操っても無駄だ、勧めない」

「あの子は変なものを拾ってくる癖があるからな」


「一階に置くのは禁止した」

だから一階だけはきちんとしている。


「別の部屋を選べ、ランが片付けてやれ」

「え!?なぜ私が片付けなきゃいけないの?」

「二階のほとんどがお前の物だろうが」

「これを機にきれいにしろ!」


そう言い残し、キッチンへ戻り夕食の支度を始め、二階で対峙する二人の少女を残す。


---

「師匠はこの価値がわかってないんだよ……」

黒髪の少女は文句を言いながら、念力で荷物を運ぶ。

(それになぜあいつを追い出さないんだ……)

(本当にあいつを魔法使いにする気なのか……!)


「この部屋にはベッドがないですね」

王女はスーツケースを運び入れながら。

(それに私の部屋の真向かいを選んだ……)

(一番距離が近い部屋……)


「床で寝ろ」ランは適当に答える。

「じゃあ夜は嵐様の部屋で一緒に寝ます」

恥ずかしそうに言うふりをする。

「絶対ダメ!!!」即座に拒否。


「私は二人で一つのベッドも構いませんよ」

「……あんたが構わないこと多すぎる!」

(私の意思は聞かないのか!!)


「確かどこかの部屋にベッドが残ってたはず……」ランは小声で言う。

「ど……どれだったかな……」考え込む。


「ねえ、嵐」彼女は澄んだ声で呼びかける。

「私は二人を傷つけない、約束する」

ランは振り向いて彼女を見る。


「政治家の言葉は信用できない」

不信感丸出しの表情。

「まあ……確かに」自分でも認める。

(……否定しないのか!)


「でも私が魔法使いになったら信じてくれる?」顔を近づけて聞く。

「嘘つきは魔法使いになれない」ランはきっぱり言う。

つまり、政治家は魔法使いにはなれない。

(つまりあいつはなれない!)

妙に嬉しい。


金髪の王女はわけもなく喜ぶ黒髪の少女を見て、微笑む。

手を取る。

「おい、何する……?」

ランは驚いて彼女を見る。

手を引かれ、部屋の中で足を絡ませながら動かされる。


階下で料理を作るエイブリンは物音を聞くが、気に留めない。


---

部屋で手をつなぎ、奇妙なダンスをしているようだ。

「あの時……本当に正気を失ってたの?」ランは首を傾げる。

あの時、王宮でも同じことが起きた。

「何の話でしょう?」無邪気な顔。

「でも、暗闇の中で……誰かと踊ってたような記憶がある」


彼女はランの手を引く。

「彼女がとっても寂しそうで……」

一人は本当に寂しい。

「だから傍にいてあげないと、って思った」

もうほとんど何も見えなくなっていたのに。


そう言うと、ランは視線を逸らす。

「ベッドのありか思い出した……」

急に手を離し、ドアへ向かう。

「私が戻るまで、他の物に触るな!」

きつい口調で言い残し、去っていく。


「うん」王女は部屋に立ち、呟く。

「ゆっくりと、受け入れてもらうしかないわね……」


暗闇の中、

目の前には一本の白い糸だけが、かすかな光を放ち、

周囲の闇を照らしていた。

その糸が切れた時、

残されたのは私を包む暗闇だけだった。

――突然、一つの手が私に向けられた。

彼女は誰かに傍にいてほしかった。


そして私は、それに応えた。


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